「自分の言葉」の重み。

昨日は長崎に原爆が落ちて、75年目の日だった。

その朝、毎週日曜恒例の「日曜美術館」を観たら、時期的な事も有り、「無言館」(→https://mugonkan.jp/)の特集をやって居た。

無言館」は長野県上田市に在る「戦没画学生慰霊美術館」で、僕も一度は訪れたいと長年持って居ながら未だ叶わずに居るのだが、番組内で観た絵画は謂わば戦場へ行った彼等の「遺書」とも云える物で、改めて「無言の芸術」が饒舌に語る戦争の悲惨さと、散って行った若い才能とアートへの情熱を目の当たりにし、不覚にも涙して仕舞った。

この番組を観た後、これも僕に取ってはもう10年以上この時期の恒例と為って居る、或る本を読んだ…その本とは、「いつまでも、いつまでもお元気でー特攻隊員たちが残した最後の言葉」(知覧特攻平和会館編)。

この本は昭和20年の3〜6月に、鹿児島県知覧から、また他の基地から沖縄のアメリカ艦隊に向けて飛び立ち、爆弾を積んだ飛行機ごと体当たりをした特攻兵の若者たちの遺書・遺詠を集めた本で、毎年、何回読んでも、涙を止められない。

彼らの遺書は当時の「常識」で有った様に、「お国・天皇陛下の為に死ぬ事を誇りに思う」とも書かれて居るが、僕を涙させるのは当然そこでは無く、彼等の家族、特に母親に対する痛切な感謝の言葉で有る。

20歳前後の男子が一様に母に対する感謝を述べ、今迄産み育てて貰った事に対して何の恩返しも出来ずに死んで行く事を詫びる…さぞ悲しく無念だったろうに、その文章は清々しく、品格に溢れて居て其処がまた涙を誘い、今の自分が如何に幸せな境遇に居るかと云う事を、強く再認識させるのだ。

もう一つ自省を込めて強く感じた事は、「無言館」に収蔵される若き作者の絵画や特攻兵の遺書から、今の日本人がどれだけ戦争の悲惨さや命の大切さ、親への感謝の気持ち、芸術や言葉の力を学んで居るだろうか?と云う事だった。

そしてこの事を強く思った大きな理由は、昨日の「長崎原爆の日」の慰霊祭式典での我が国の首相の挨拶が、数日前の「広島」の時と全く同じと言って良い物だったからだ。

こんな重要な日の、新たなる決意表明で有るべき式典挨拶で、我が国のリーダーは誰かが日付と場所だけを取り換えて書いた原稿を、ただ「読んだだけ」だった…国のトップがこの体たらくなのだから、世界唯一の被爆国で有るにもかかわらず、「核兵器禁止条約」も批准出来ないのもさもあらん、で有る。

無言館で展示される絵や知覧特攻兵の遺書は、官僚の誰かが毎年適当に書いた原稿を棒読みする首相の言葉より、遥かに重く、心に響く…何故ならそれは心からの「自分の言葉」だからに他ならない。

その意味で首相は、「自分の言葉」で「不戦の決意」と「核放棄」を被爆者とその御遺族、日本人全員、延いては世界に伝えなければ、この国の指導者で居る権利はないと思う。

悲しみと情けなさを抱えながら、今日はこれ迄。

 

ーお知らせー

*8月13日に、拙著第2弾「美意識の磨き方ーオークション・スペシャリストが教えるアートの見方」が、平凡社新書より発売されます(→https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b512842.html)。諧謔味溢れる推薦帯は、現代美術家杉本博司が書いて下さいました。是非ご一読下さい。

事業構想大学院大学刊「人間会議2020夏号 アート思考とクリエイティビティ」(→https://www.projectdesign.jp/feature/kankyoningen/)に、インタビューが掲載されています。ご一読を。

*「ART HOURS」に嬉しい拙著の書評が掲載されました(→https://arthours.jp/article/biishikinonedan)。是非ご一読ください。

*「NIKKEI STYLE」内「ブックコラム」(→https://style.nikkei.com/article/DGXMZO58642800Q0A430C2000000/)に、拙著に関する僕のインタビューが掲載されています。

*今月発売の神戸新聞総局発行、明石総局編の書籍「明石城 なぜ、天守は建てられなかったのか」(→https://kobe-yomitai.jp/book/1034/)内の第3章「消えた襖絵を追う」で、僕が嘗てオークションで手掛けた長谷川等仁作「旧明石城襖絵」(この襖に関する拙ダイアリーは→https://art-alien.hatenablog.com/entry/20120723/1343050359)が、綿密な調査と共に紹介されて居ます。美術品の「流転の極み」とも言えるこのストーリー、是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*2月28日付朝日新聞デジタル「&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

長男の「日本戦後美術体験」。

物事は一度途切れると、それを復活させるのは誠に難しい…人間関係も、仕事も、そしてこのダイアリーも、だ。気がつけばコロナ禍下で在宅勤務となり、夜の外出もかなり減ったと云うのに、何と丸2ヶ月振りの更新で有る。

さて、この間の政府や都のコロナやその他のふざけた対応に云いたい事は山程有るが、今回の「Go To」キャンペーン、そして直前での東京外しには東京都民の1人として開いた口が塞がらない。それはこの「東京外し」キャンペーンが、都民が国に納めた税金が都民以外にしか使われないと云う、憲法下に於ける国民の平等の精神を平気で踏みにじる政策で、しかも国がキャンセル料にも応じないとこれも平気で云って居る事だ。

もうこう云った行き当たりばったりの政策、痛感しても未来永劫絶対に責任を取らない国と都のリーダーにはウンザリで有る。我が国が滅びない事を祈るしかない。

そんな中仕事の方は少しずつ動き始め、オンライン・オークション全盛の中、久々にパリや香港等ではライヴ・オークションが始まり、先日香港・パリ・ロンドン・ニューヨークを中継して開催された「ONE」セールも4億2094万1042ドル(約452億5千万円)売り上げ、香港の各分野のセールスの結果も大概良く、ホッと一息。

その「ONE」セールでは、ブライス・マーデンやウェイン・ティーボー、ジョージ・コンド等に新記録も出、リキテンスタインやニューマン、ルシェ、ピカソ等も高額落札、然し個人的に一番嬉しかったのは山口長男の「黄色い四角」が良く売れた事だった。

この板絵作品は山口の油の乗り切った1959年の作、70年代にスイスのコレクターに買われ、それ以来日本には戻っていないウブな作品で有る事、大型の山口作品に良く見られる状態の悪さも無く、その大きさもオークションに出た作品では最大の183 x 183cm. …こんな名品が新記録価格を作らない訳が無く、1512万5千香港ドル(約2億860万円)で売却された。

僕は山口長男に昔から思い入れが強く(名前の所為も有るし、僕の叔父の丸顔が在りし日の長男のそれにそっくりなのだ!)、山口以外にも例えば斎藤義重や菅井汲、長谷川三郎や岡田謙三等の作家とその作品に興味が有ったのだが、それには矢張り1994年にクリスティーズ・ニューヨークで開催された、ブランシェット・ロックフェラー(ジョン・D・ロックフェラー 3世の奥様)のエステイト・セールを手伝った事が大きかった。

このセールには上記作家以外にも(菅井や長男作品は無い)、猪熊弦一郎や流政之、菊畑茂久馬やオノサトトシノブ、吉原治良川端実も出て居て、如何にロックフェラー夫妻が日本贔屓とは云え、アメリカ人がこれ程クオリティの高い日本戦後美術コレクションをして居た事に、大いに驚いたものだった。

そして僕の「日本戦後美術体験」でもう一つ忘れてならないのが、そのオークションと同年、グッゲンハイム美術館の別館が未だソーホーに在った頃に観た、後にジャパン・ソサエティー・ギャラリーのディレクターを経て、グッゲンハイムのキュレーターと為ったアレキサンドラ・モンロー女史の展覧会、「Japanese Art after 1945: Scream Agaist the Sky」だ!

この展覧会は、山口や斎藤は勿論、吉原、白髪を始めとする具体メンバー、李禹煥らのもの派、ハイレッドセンター、井上有一、三木富雄、草間、杉本、森村、宮島、柳幸典迄を網羅したもので、アメリカで此処迄日本戦後美術を一度に観せた事は無かったし、その後の具体やもの派の再発見、そして延いては今の日本現代美術の国際マーケットでの足掛かりに為ったとも云っても良い、記念碑的なものだった。

その頃ニューヨークに住んで間もなかった僕は、今ほどは高級化して居なかったソーホーで、それまでポップアートやフォンタナに向いて居た僕の眼を確りとこの分野へと向かわせ、その後日本に赴任した時に、何人かのシリアスなコレクターやディーラーの方々と知り合い、作品を観せて頂き、教えて頂いた。そしていつの日か、山口長男の作品が海外マーケットで燦然と輝く日を待ち望んでいたのだった。

さて約2億円と云う「黄色い四角」の落札価格は、勿論アーティスト・レコードで、ビジネスとしても一ファンとしても非常に嬉しかったのだが、実はもう一つ凄く嬉しかった事が有って、それはこの作品を生み出した作家のご家族にお会いした事だった。

お父様にそっくりなお顔の息子さんにご挨拶した時、長男作品の大ファンで有る僕は柄にも無く興奮して仕舞い、思わず「はじめまして…山口家の長男の山口です」と名乗ったら、息子さんはニッコリとして「こちらこそ!私が山口長男の長男です」とユーモアたっぷりに答えられた。

僕の「日本戦後美術体験」はこれからも続く。

 

ーお知らせー

事業構想大学院大学刊「人間会議2020夏号 アート思考とクリエイティビティ」(→https://www.projectdesign.jp/feature/kankyoningen/)に、インタビューが掲載されています。ご一読を。

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*「NIKKEI STYLE」内「ブックコラム」(→https://style.nikkei.com/article/DGXMZO58642800Q0A430C2000000/)に、拙著に関する僕のインタビューが掲載されています。

*今月発売の神戸新聞総局発行、明石総局編の書籍「明石城 なぜ、天守は建てられなかったのか」(→https://kobe-yomitai.jp/book/1034/)内の第3章「消えた襖絵を追う」で、僕が嘗てオークションで手掛けた長谷川等仁作「旧明石城襖絵」(この襖に関する拙ダイアリーは→https://art-alien.hatenablog.com/entry/20120723/1343050359)が、綿密な調査と共に紹介されて居ます。美術品の「流転の極み」とも言えるこのストーリー、是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

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*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

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藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

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*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

 

 

 

日本版「ルイ14世」への意見書全文。

今日はアート・ダイアリーはお休みして、ポリティック・ダイアリーとなるので悪しからず。

今瀬戸際となっている東京高検の黒川検事長の定年延長問題は、本当に無視してはいけないし、強行採決、法改正など決して許してはいけない。以下は、15日に名だたる検察OBが法務省に提出した、意見書全文である。三権分立を心底守りたい一国民としてここに掲載する。

また、この意見書の宛先は法務大臣だが、当然首相宛と理解して良いと思う。

そして黒川検事長は、この意見書に真っ向から反論するか、反論できなければ即刻辞任すべきだろう。当事者であるにも関わらず、自身はどう思っているのか何も云わないという選択は最も卑怯で、検事にあるまじき態度と思う。

 

1 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年2月8日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の1月31日、その定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止まっている。

検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。一説によると、本年4月20日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。

 いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。

 2 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。これは従来の政府の見解でもあった。例えば昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。

 検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。

 こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。

 3 本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

 時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。

 ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである。

 加えて人事院規則11―8第7条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、①職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、②勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、③業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。

 これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。

 現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出される(会社法違反などの罪で起訴された日産自動車前会長の)ゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い。

 4 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。

 この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。

 難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである。

 注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。

 今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺ぐことを意図していると考えられる。

 5 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

 振り返ると、昭和51年(1976年)2月5日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。

 当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派、苦労して捜査しても(1954年に犬養健法相が指揮権を発動し、与党幹事長だった佐藤栄作氏の逮捕中止を検事総長に指示した)造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた。

 事件の第一報が掲載されてから13日後の2月18日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。

 この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官塩野宜慶氏(後に最高裁判事)、内閣総理大臣三木武夫氏であった。

 特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった。

 国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される。

 しかし検察の歴史には、(大阪地検特捜部の)捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。

 しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

 正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

 黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。

 

 【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。

 

 令和2年5月15日

 元仙台高検検事長・平田胤明

 元法務省官房長・堀田力

 元東京高検検事長・村山弘義

 元大阪高検検事長・杉原弘泰

 元最高検検事・土屋守

 同・清水勇男

 同・久保裕

 同・五十嵐紀男

 元検事総長松尾邦弘

 元最高検公判部長・本江威憙

 元最高検検事・町田幸雄

 同・池田茂穂

 同・加藤康栄

 同・吉田博視

 (本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男

 

 法務大臣 森まさこ殿

 

ーお知らせー

*「目の眼」7月号の浮世絵特集(→https://menomeonline.com/202007/)に、国際浮世絵学会初代会長だった父の思い出を書かせて頂きました。ご一読ください。

事業構想大学院大学刊「人間会議2020夏号 アート思考とクリエイティビティ」(→https://www.projectdesign.jp/feature/kankyoningen/)に、インタビューが掲載されています。ご一読を。

*日本陶磁協会刊「陶説」6月号(806号)内「著者が案内する、やきものブックガイド」に、拙著の紹介文が掲載されております。ご一読下さい。

*「ART HOURS」に嬉しい拙著の書評が掲載されました(→https://arthours.jp/article/biishikinonedan)。是非ご一読ください。

*「NIKKEI STYLE」内「ブックコラム」(→https://style.nikkei.com/article/DGXMZO58642800Q0A430C2000000/)に、拙著に関する僕のインタビューが掲載されています。

*アート・マガジン「ONBEAT」Vol. 12(→https://onbeat.co.jp/onbeat-vol-12/)に、インタビューが掲載されました。

*今月発売の神戸新聞総局発行、明石総局編の書籍「明石城 なぜ、天守は建てられなかったのか」(→https://kobe-yomitai.jp/book/1034/)内の第3章「消えた襖絵を追う」で、僕が嘗てオークションで手掛けた長谷川等仁作「旧明石城襖絵」(この襖に関する拙ダイアリーは→https://art-alien.hatenablog.com/entry/20120723/1343050359)が、綿密な調査と共に紹介されて居ます。美術品の「流転の極み」とも言えるこのストーリー、是非ご一読下さい。

*4月1日発売の「婦人画報」5月号の特集「珠玉の東京50」内、「究極の“東京ギフト”」(→https://www.fujingaho.jp/lifestyle/gift/a32076431/tokyo-gift-snowdome-2004017/)にて、僕のオススメを紹介させて頂きました。また同号内「併読本のススメ」にて、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。是非ご一読下さい。

*3月21日付「文春オンライン」に、インタビュー(→https://bunshun.jp/articles/-/36541)と拙著「美意識の値段」からの「怖い話」の抜粋(→https://bunshun.jp/articles/-/36555)が掲載されました。

*3月17日付「日経産業新聞」内のシリーズ企画「アートはビジネスに役立つか」の第5回(→https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57322410X20C20A3000000/)に寄稿しています。大変内容のある本企画、是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*3月1日付ウェッブ版「美術手帖」にて、インタビューが掲載されました(→https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21362)。

*2月28日付朝日新聞デジタル「&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

*雑誌「Pavone」54号内の特集「ART: Timeless Value 永遠の価値を求めて」(→http://www.pavone-style.com/culture/art_202001_1.php)で、オークションに就いての取材を受けました。是非ご一読下さい。

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

主婦と生活社の書籍「時間を、整える」(→http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-64148-6)に、僕の「インターステラー理論」が取材されて居ます。ご興味のある方は御笑覧下さい。

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。

百聞は「実見」に如かず、或いは初の「ZOOM飲み会」。

外出自粛もいい加減ウンザリしてきたが、パチンコ屋や海、ドライヴなどに行く人たちの気がしれない…全く何を考えているのだろうか⁉︎怒りを通り越して呆れるしかないが、そんな中、我が家にも「アベノマスク」が届いた。

作った人に罪はないかも知れないが、不良品も多く回収されて居ると聞くし(一体誰がどの様に検品しているのだろう?)、見た感じ実際僕には小さ過ぎる(正しい付け方のイラストも、子供じゃ無いか!)。また、マスク自体にウィルスが付いて居るかも知れないとの事だから、付ける前に先ずは手洗いしないといけないのだが、これを洗ったら縮み、より小さく為る事必然。

不衛生な不良品も多い上、当初の予算とは比べものにならない90億円で済むとか、全く以って何一つきちんと出来ない政府…ただパニクって居るだけなのだろうが、大問題はこの様な短絡的アイディアを挙げてくる側近と、それを検証すらできない総理に他ならない。

そこでそんな憂さを晴らすべく、日頃たまに集まって飲んでいる作家H氏、ジャズ評論家で医師のO氏、写真家S氏との人生初の「ZOOM飲み会」に参加。

最初参加方法に戸惑ったが、無事参加出来て慣れてくると、お茶しか飲まない僕でもこれが意外に楽しい。話は勿論コロナウィルスに拠る世界の変化、有名ジャズ・ミュージシャンの死、医療崩壊危機、ウィルスの真実などなど…。

終わってから思ったのは、「ZOOM飲み会」の良さは「家飲み」的な良さで、例えば偶に家族が画面に登場したりする楽しさや、店ではちょっと声を潜めて話すかも知れない本音を堂々と云える事で、次は日本やニューヨークに居る仲の良いアーティストや、友人ともやってみたいと正直思った。

然し、こんな新しい細やかな楽しみは有っても、僕の憂さは完全には晴れず、何か巨大なモヤモヤが心を占める…が、そのモヤモヤが何かなのか、このZOOM飲み会で分かった。

それは「この眼で、実物のアートが見れない」と云う事だ。

クリスティーズでも何処でも、今世界がこういった状況では、アート業界が「オンライン・セール」に傾くのは当然…だが、古いタイプで有る僕は、どうあがいても本物・実物を見ないでは居られない。オンライン・セールを否定はしないが、個人的にはアートは見て触って買いたいし、展覧会に行って、この目で本物を観たい。この欲望は、どんなに高画質の画面で絵画を観ても、3Dで立体物を観ても、満足出来ないのだ!

それと同様の意味で、「ZOOM飲み会」はメールやライン、電話とは違い、またカンファレンス・コールと云ったビジネス・オケージョンでのミーティングと異なり、実際に親しい人の顔や表情が見れる利点が有るし、その意味での臨場感があって楽しいが、残念ながらその人の体温は感じられない。

そう、アートも人も「体温」有ってのモノ…それはアウラと云っても良いし、ある意味同じ場所に居るからこそ感じる「同期性」が命。

アートも人も「百聞は一見、もとい実見に如かず」。

人生初の「ZOOM飲み会」で、改めてその重要さを感じた孫一なのでした。

 

追伸:一度洗ったアベノマスクを付けてみた。一言話す度に鼻が露出して仕舞うし、頬の横に隙間も出来て、余りに小さい。政府は「大は小を兼ねる」って言葉知らんのか…。でもこれが、首相以外の閣僚が誰もアベノマスクを付けていない理由なんだろう。閣僚が誰も付けないマスクを、国民がするんだろうか?

 

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*アート・マガジン「ONBEAT」Vol. 12(→https://onbeat.co.jp/onbeat-vol-12/)に、インタビューが掲載されました。

*今月発売の神戸新聞総局発行、明石総局編の書籍「明石城 なぜ、天守は建てられなかったのか」(→https://kobe-yomitai.jp/book/1034/)内の第3章「消えた襖絵を追う」で、僕が嘗てオークションで手掛けた長谷川等仁作「旧明石城襖絵」(この襖に関する拙ダイアリーは→https://art-alien.hatenablog.com/entry/20120723/1343050359)が、綿密な調査と共に紹介されて居ます。美術品の「流転の極み」とも言えるこのストーリー、是非ご一読下さい。

*4月1日発売の「婦人画報」5月号の特集「珠玉の東京50」内、「究極の“東京ギフト”」(→https://www.fujingaho.jp/lifestyle/gift/a32076431/tokyo-gift-snowdome-2004017/)にて、僕のオススメを紹介させて頂きました。また同号内「併読本のススメ」にて、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。是非ご一読下さい。

*3月21日付「文春オンライン」に、インタビュー(→https://bunshun.jp/articles/-/36541)と拙著「美意識の値段」からの「怖い話」の抜粋(→https://bunshun.jp/articles/-/36555)が掲載されました。

*3月17日付「日経産業新聞」内のシリーズ企画「アートはビジネスに役立つか」の第5回(→https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57322410X20C20A3000000/)に寄稿しています。大変内容のある本企画、是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*3月1日付ウェッブ版「美術手帖」にて、インタビューが掲載されました(→https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21362)。

*2月28日付朝日新聞デジタル「&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

*雑誌「Pavone」54号内の特集「ART: Timeless Value 永遠の価値を求めて」(→http://www.pavone-style.com/culture/art_202001_1.php)で、オークションに就いての取材を受けました。是非ご一読下さい。

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

主婦と生活社の書籍「時間を、整える」(→http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-64148-6)に、僕の「インターステラー理論」が取材されて居ます。ご興味のある方は御笑覧下さい。

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。 

「一国は一人を以て興り、一人を以て亡ぶ」。

外出自粛の日々、僕の会社はシフト出勤制から在宅勤務に変わり、緊急事態宣言が出る前から、顧客に会う回数や会食も極力少なくした為に、僕の生活も一変した。

数ヶ月間の給料カットを受け入れ、外食の回数を圧倒的に減らす事に拠って家ご飯が増え、序でにダイエットを始めて、毎晩ご近所で有る所の皇居一周約6キロの「早歩き」を始めた…やってみると、習慣化するのにそれ程時間は掛からず、少しは体重も減り、気分も宜しい。

が、それでもストレスが溜まるのは必然で、その中で最大且つ最も許し難いストレスとは、相変わらず日本国政府及び我が国の首相に関してで有る。

民主党政権時代の3•11の時には、国会議員の給料を削って支援に回したのに、現政府は休業補償をしない上に、自分達の給料を削って国民と痛みを共にする気もない。2週間の自粛状況を見てから業種を決めて休業要請をする、というアンビリーヴァブルな悠長加減。

忖度で自死した官僚の遺書を読みもしない癖に、「人権」を盾にロックダウンや外出禁止令の特別法案を作る事も出来ない。たったマスク2枚を送りつけると云う超愚策に使う我らの血税数百億円を、医療施設や検査体制に回すアイディアも技術もない。終いには星野源に乗っかって、「セッション」も何もしない「お寛ぎシーン」をSNSに載せる総理…枚挙に暇が無いが、本当に知的レベルが低いとしか言い様が無い。

最後の星野源のケースでも、百歩、いや万歩譲って、休みの日も週末も働いて居る医療従事者の事を考えた上で、自身が自宅で働いて居るシーンや、ウィルス関連の本を読んで勉強して居るシーン、或いは海外メディアを観て対策等を調査勉強してい居るシーン等を載せる位の知恵も無い所が、このミーハー出たがり首相のレヴェルだと思う。こんな人物が我が国の首相で有る事に、僕は正直もう堪えられない。

今日のダイアリー・タイトルは、北宋文人で「唐宋八大家」の一人、かの蘇軾の父蘇洵(老泉)の「管仲論」中の言葉…その意は「一国の興亡は、その国を担うたった一人に拠って興隆し、たった一人に拠って滅びる可能性がある」と云う事だ。

この騒ぎがいつか収まり、政権が変わるであろう近い将来、後任の首相に自分が連発した得意文句、「『悪夢の』安倍政権」等と云われる事を覚悟せねば為らない…因果応報、人を呪わば穴二つ、で有る。

最後に孟子の言葉を記し、我が国のリーダーの人品を考えて、今日は此処迄。

「君、仁なれば(民)仁ならざるはなく、君、義なれば義ならざるはなし」(離婁下第五章)

(リーダーが仁の心をもっていれば、国民はその人に感化され、皆が仁の心を持つ。リーダーが義の心をもっていれば、国民は皆感化されて義の人となる)

 

ーお知らせー

*今月発売の神戸新聞総局発行、明石総局編の書籍「明石城 なぜ、天守は建てられなかったのか」(→https://kobe-yomitai.jp/book/1034/)内の第3章「消えた襖絵を追う」で、僕と僕が嘗てオークションで手掛けた長谷川等仁作「旧明石城襖絵」が、綿密な調査と共に紹介されて居ます。美術品の「流転の極み」とも言えるこのストーリー、是非ご一読下さい。

*4月1日発売の「婦人画報」5月号の特集「珠玉の東京50」内、「究極の“東京ギフト”」(→https://www.fujingaho.jp/lifestyle/gift/a32076431/tokyo-gift-snowdome-2004017/)にて、僕のオススメを紹介させて頂きました。また同号内「併読本のススメ」にて、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。是非ご一読下さい。

*「日経マネー」5月号(3/20発売)内「Money Interview」(→https://www.nikkeibpm.co.jp/item/mon/639/saishin.html)にて、インタビューが掲載されています。ご一読を!

*3月21日付「文春オンライン」に、インタビュー(→https://bunshun.jp/articles/-/36541)と拙著「美意識の値段」からの「怖い話」の抜粋(→https://bunshun.jp/articles/-/36555)が掲載されました。

*3月17日付「日経産業新聞」内のシリーズ企画「アートはビジネスに役立つか」の第5回(→https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57322410X20C20A3000000/)に寄稿しています。大変内容のある本企画、是非ご一読下さい。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*3月1日付ウェッブ版「美術手帖」にて、インタビューが掲載されました(→https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21362)。

*2月28日付朝日新聞デジタル「&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月21日の夕刊フジ、22日の西日本新聞の書評に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*2月5日の日経MJ内「使える読書」で、「美意識の値段」が取り上げられました。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

*雑誌「Pavone」54号内の特集「ART: Timeless Value 永遠の価値を求めて」(→http://www.pavone-style.com/culture/art_202001_1.php)で、オークションに就いての取材を受けました。是非ご一読下さい。

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

主婦と生活社の書籍「時間を、整える」(→http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-64148-6)に、僕の「インターステラー理論」が取材されて居ます。ご興味のある方は御笑覧下さい。

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。 

「狂人走れば不狂人走る」。

少し前に雨から雪に変わった、外出自粛要請の週末2日目の東京。

ウィルスを抑え込んでくれと祈りたく為る様な、窓から見る吹雪き始めた美しい雪景色とは反対に、僕の心は途轍も無く殺伐として居て、それはコロナウィルスの蔓延の事実よりも我が国のリーダーへの我慢ならぬ感情の所為だ。

テレビニュースでは、首相や都知事が「自粛『要請』」を出してもそれに従わない人、特に若年層の人達を取り上げて居るが、人間的にも政治家としても、そしてリーダーとしてもこんなに信頼の置けない人間の云う事を聞け、と云う方が無理に決まって居る。

森友問題のみ為らず、嘘を吐き続け、議事録も作らず根拠の無い「政治判断」を勝手にし、人を人とも思わぬ傲慢な態度を取り、「やってる感」を出す為の「不急不要の『原稿棒読み会見』」を「国民を見据えて」話す訳でも無く、左右に顔を振り続けてのパフォーマンスとしてドヤ顔でやり続け、責任は国民に丸投げ…正直、こんな首相を未だに支持して居る人の気が知れない。

さて、今日のダイアリー・タイトル「狂人走不狂人走」は、大徳寺百七十世清巌宗渭の言で有る。

改めて簡単に意味を記せば、「人間は付和雷同する物だ」と云う事だが、ヒトラーの例を出す迄も無く、リーダーの人格に拠って国民がそれに流され、同化して行く「恐怖」を喩えた物とも云えるだろう。

ティーンエイジャーの頃、この言葉を僕に教えてくれた祖父の親友だった政治思想家の先生は、「リーダーが間違うと、国家全体が間違う」と良く仰って居られた。現首相の父親を推していた先生がご存命だったら、今何と仰られるか…。

首相も首相夫人も、国を引っ張る人間としての自覚、それは「国民の下僕」であり「リーダー」で有ると云う自覚を改めて持ち、過去を振り返って過ちは正し、1人の人間として真摯に、誠実に国民とその心に対峙し沿わねばこの難局は切り抜けられないし、我が国に於いて無責任、平気で嘘を吐く、都合の悪い事は隠蔽と云う様な「人格的国民総首相化」を蔓延させ、亡国の一途を辿るのは必然。

首相は会見で、遠巻きに「文化芸術は後回し」と云った。

自分を戒める古人の言葉や「教養」は、文化芸術から得られる最大のモノ…こんな事が解らない様では、生前先生が歴代首相を始め自分が推す政治家に勧めた谷中の禅堂に一時期通ったのも、総理に取っては単なるお得意の「パフォーマンス」に過ぎなかったのだろう。

国家の難局時に、文化芸術を最も後回しにしては為らないのは、首相本人では無いだろうか?

 

ーお知らせー

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*3月21日付「文春オンライン」に、インタビュー(→https://bunshun.jp/articles/-/36541)と拙著「美意識の値段」からの「怖い話」の抜粋(→https://bunshun.jp/articles/-/36555)が掲載されました。

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*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*3月1日付ウェッブ版「美術手帖」にて、インタビューが掲載されました(→https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21362)。

*2月28日付朝日新聞デジタル「&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月21日の夕刊フジ、22日の西日本新聞の書評に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*2月5日の日経MJ内「使える読書」で、「美意識の値段」が取り上げられました。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

*雑誌「Pavone」54号内の特集「ART: Timeless Value 永遠の価値を求めて」(→http://www.pavone-style.com/culture/art_202001_1.php)で、オークションに就いての取材を受けました。是非ご一読下さい。

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

主婦と生活社の書籍「時間を、整える」(→http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-64148-6)に、僕の「インターステラー理論」が取材されて居ます。ご興味のある方は御笑覧下さい。

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2021年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。 

 

「人生は地獄より地獄的である」。

先週末、本当に久し振りに映画「地獄変」をDVDで観た。

1969年東宝製作、豊田四郎監督の本作は、ご存知芥川龍之介宇治拾遺物語から題材を取った同名短編を基にした、彼の「芸術至上主義」を具現する作品。

主演の渡来人絵師に仲代達矢藤原道長をモデルとした「堀川の大殿」に中村(萬屋錦之助、絵師の娘に内藤洋子と云った配役、龍之介三男の芥川也寸志が音楽を担当して居て、流石の出来栄えで有る。

階級社会の中で奪われ、牛車の中で焼死させられる娘の様迄を見せられた絵師は、それでも「地獄絵」を描き上げ、大殿に献上する。最終的には因果応報…大殿は狂い、絵師は縊死するのだが、絵師の描いた「地獄絵図屏風」は名作の誉を得る、と云う話だ。

そんな劇中の仲代と萬屋の演技は、今の俳優の誰が演れるだろうかと思う程抜群で、「階級」と「アート」の関係性、そして「芸術的リアリズム」の極致が原作者とダブる、大名作だと思う。

この映画「地獄変」の最後にテロップで出て来るのが、今日のダイアリー・タイトルの「人生は地獄より地獄的である」と云う一文なのだが、実はこれは原作「地獄変」に出て来るセンテンスでは無く、芥川の「侏儒の言葉」内の「地獄」と云う箇所に出て来る。

この一文の意味は言わずもがなだと思うが、「侏儒の言葉」ではこの後にこう続く…。

 

地獄の与える苦しみは一定の法則を破ったことはない。(中略)

しかし人生の与える苦しみは不幸にもそれほど単純ではない。(中略)

こう云う無法則の世界に順応するのは、何びとにも容易に出来るものではない。(後略)

 

この映画を観た数日後の今日、9回目の「3.11」がやって来た。

そして「3.11」に起きた事は、被災された方に取って当に「地獄より地獄的」だったろうと、「地獄変」のテロップが脳裏にこびり付いて仕舞った僕は、改めて強く感じた。

今日のテレビ報道等ではコロナウィルスの報道がメインで、今日が「3.11」で有る事すら忘れそうに為って居た人も居たのでは無いか。

「忘れない努力」は絶対的に必要で、それは国や自治体の務めでも有るにも拘らず、「復興五輪」に代表される様に、現政権が放つ根拠無き言葉のいい加減さは最近余りに目に余り、原発政策や東電の後始末も侭為らない。

然しこんな状況下でも、我々はこのまま東京オリンピックが開催されようが中止になろうが、コロナウィルスが蔓延しようが退治されようが、決してこの日を、「地獄より地獄的な人生」を過ごして居る人達を忘れてはいけないと思う。「3.11」も「コロナ」も「無法則な世界」の産物…受け入れ難いが、忘れない事でしか未来は無い。

犠牲者の方のご冥福と1日も東北の早い復興を、改めて、心よりお祈りをして、今日はお終いとしたい。

 

ーお知らせー

*「日経産業新聞」内のシリーズ企画「アートはビジネスに役立つか」の第5回(→https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57322410X20C20A3000000/)に寄稿しています。大変内容のある本企画、是非ご一読下さい。

*「日経マネー」5月号(3/20発売)内「Money Interview」(→https://www.nikkeibpm.co.jp/item/mon/639/saishin.html)にて、インタビューが掲載されています。ご一読を!

*3月21日付「文春オンライン」に、インタビュー(→https://bunshun.jp/articles/-/36541)と拙著「美意識の値段」からの「怖い話」の抜粋(→https://bunshun.jp/articles/-/36555)が掲載されました。

*「週間文春」3月12日号内「文春図書館」の「今週の必読」に、作家澤田瞳子氏に拠る「美意識の値段」の有難い書評が掲載されております(→https://bunshun.jp/articles/-/36469?page=1)。是非ご一読下さい。

*3月4日付「日刊ゲンダイDigital」にて「美意識の値段」の書評が掲載されました(→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/269858)。

*3月1日付ウェッブ版「美術手帖」にて、インタビューが掲載されました(→https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21362)。

*2月28日付朝日新聞デジタル&Ⓜ︎」内のインタビュー、「クリスティーズジャパン社長と映画『ラスト・ディール』に学ぶ ホンモノを見抜く力」(→https://www.asahi.com/and_M/20200228/9915737/)にて、インタビューを受けました。

*2月21日の夕刊フジ、22日の西日本新聞の書評に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました。

*2月15日産経新聞内「本ナビ+1」で、永青文庫副館長橋本麻里氏が拙著を取り上げて下さいました(→https://www.sankei.com/life/news/200215/lif2002150018-n1.html)。

*2月15日付日経「新書」にて「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55630490U0A210C2MY6000/)。

*2月5日の日経MJ内「使える読書」で、「美意識の値段」が取り上げられました。

*1月22日の産経新聞書評欄に、拙著「美意識の値段」が取り上げられました(→https://www.sankei.com/premium/news/200122/prm2001220002-n1.html)。

*「J-CAST ニュース」内「BOOK ウォッチ」(→https://books.j-cast.com/2020/02/12010854.html)、「Bur@rt ぶらっとアート」(→https://kobalog.jp/burart/2020/01/aesthetics-and-prices/)にて、「美意識の値段」が取り上げられました。

*作家平野啓一郎氏に拠る、拙著「美意識の値段」の書評はこちら→https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/8124。素晴らしい書評を有難うございます!

*拙著「美意識の値段」が集英社新書から発売となりました(→https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1008-b/)。是非ご一読下さい!

*雑誌「Pavone」54号内の特集「ART: Timeless Value 永遠の価値を求めて」(→http://www.pavone-style.com/culture/art_202001_1.php)で、オークションに就いての取材を受けました。是非ご一読下さい。

藤田美術館の公式サイト内「Art Talk」で、藤田清館長と対談しています。是非ご一読下さい(→http://fujita-museum.or.jp/topics/2018/12/17/351/)。

*僕が嘗て扱い、現在フリア美術館所蔵の名物茶壺「千種」に関する物語が、『「千種」物語 二つの海を渡った唐物茶壺」として本に為っています(→http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033551943&Action_id=121&Sza_id=E1)。非常に面白い、歴史を超えた茶壺の旅のお話を、是非ご一読下さい!(因みに、その「千種」に関する僕のダイアリーはこちら→http://d.hatena.ne.jp/art-alien/20090724/1248459874、今から思えば、これも藤田美術館旧蔵で有った…)

主婦と生活社の書籍「時間を、整える」(→http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-64148-6)に、僕の「インターステラー理論」が取材されて居ます。ご興味のある方は御笑覧下さい。

*僕が一昨年出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」が、NHKオンデマンドで2020年3月28日迄視聴出来ます。見逃した方は是非(→https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017078195SA000/)!

*山口桂三郎著「浮世絵の歴史:美人画・役者絵の世界」(→http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924337)が、「講談社学術文庫」の一冊として復刊されました。ご興味の有る方は、是非ご一読下さい。