「珠響」、そして後2日。

昨日は午後から妻と、サントリーホールで開催された「珠響(たまゆら)第二回 彩(いろ)」と云うコンサートへ行った。

この「珠響」は、邦楽囃子方亀井三兄弟の「三響会」、則ち能楽葛野流大鼓方の長男広忠、歌舞伎囃子方(小鼓)田中流十三世宗家の次男傳左衛門、歌舞伎囃子方(太鼓)の三男傳次郎を中心とする、邦楽と洋楽の新しい形を目指すコラボレーション・コンサートである。

今回のメンバーは、この三響会以外には、ピアニスト稲本響、尺八の藤原道山、和太鼓の英哲風雲の会、クラシックギター村治香織、そして梨園からのゲスト、澤瀉屋市川亀治郎等である。

コンサートの前半は「洋」、後半は「和」のパートと分けられていたが、正直首を捻る箇所も多かった。先ず、何しろ和と洋のコラボレーションは本当に難しく、余程構成や編曲を考えないと、「お遊び」的、悪く云えば「文化祭」の様相を呈してしまう。また当然異論も有ると思うが、邦楽の純粋培養と云うか、良い意味での「愚直さ」と長い間鍛練された「歴史」と「技術」に、「ラップ」ははっきり云ってそぐわないし、甘いBGM的ビアノも深みを欠き、筆者には虚しく響いたのである。
「フィナーレ」時、出演者が勢揃いし、ニコニコして手拍子をしたり、「洋」の方のメンバーが中心に為って盛り上がっていたその時、一人所在無さげに、表情も固く、しかし圧倒的な姿勢の良さで佇んでいた、妻の学友でもある亀井広忠氏の姿は、その寂しさと難しさを代弁しているかの様で、観ていた我々も少し気の毒な気がしたのだが、それは気のせいだったのかも知れない。
そんな中嬉しかったのは、インターミッションの時に、モデルの春香さんにバッタリお会いした事だ。春香さんは、その後の夕食を一緒にする事になっていた、作家平野啓一郎氏の奥様だが、残念ながら夕食にはお仕事の為来られないと聞いて居たので、我ら夫婦としても偶然の再会は嬉しさ一潮…云う迄も無いが(笑)相変わらずお美しく、笑顔が素敵であった。

そして夫婦で「食べ捲っている」日本でのディナーも、残す所後3回のみとなってしまった(涙)。

上にも記した様に昨晩は、友人の平野氏、ニューヨーク時代の友人で、帰国後公共放送の朝の顔と為った有働さんと、妻と筆者の4人で、行き付けの青山のシシリアン・イタリアン「ドン・チッチョ」で食事。

平野氏と有働さんは初対面だったらしいが、こう云っては何だが、お二人共サッパリした方で有る事と、我ら夫婦とは当然仕事抜きの気楽な友人関係なので、ご一緒して頂く事にしたのだった。

平野氏とは鼻から、前の晩に観たドキュメンタリー映画「ソウルパワー」(拙ダイアリー「『花降る絵画』と『魂の力』」参照)の話で異常に盛り上がる!黒人音楽と当時の政治情勢、アリと云う男、そして愛すべき男「JB」に就いて等、話は尽きない。

その後は、プロシュートやトリッパ、鰯のパスタや、ミックスグリル、カンノーニとセミフレッドを食し、ワインを2本空けながら、「1Q84」や昨今のJ-POPに見る「今、此処に在る日本文学・日本語の危機」、小沢はホンモノか?、似非アーティストや評論家、メディアに代表される、最近の日本国民のリテラシーの極度な低下、「クラスタ」や「コンテクスト」にはもう飽き飽き!、天才梶井基次郎和田勉の共通点(さて、何でしょう?)等、皆で熱く語り尽くし、非常に楽しい時間を過ごした。

笑ったり怒ったり、しかしふと時計を見ると深夜1時を回っており、何と5時間以上も喋っていた事に気付く…気の合う友人達との時間は、不思議な程アッと云う間に過ぎて行くモノだ。
「ドン・チッチョ」のシェフ、石川氏と握手を交わし、皆とも秋の再会を約束して解散。最近ご近所地域に引っ越された平野氏と、タクシーをシェアして帰宅した。

日本滞在も、後残り2日である。