7月30日に生まれて。

月曜日、やっと9月オークションのカタログが校了した!

セールの「スニーク・プレビュー」は、追って詳しく此処でする予定だが、今回のセールには「旧明石城襖絵」(二曲屏風三隻)を含む「重要日本(江戸)絵画個人コレクション」、白隠や玄峰老師等の禅画墨蹟、「曾我物語」(10冊揃)や奈良絵本等の肉筆本や絵巻物、能面・鼓胴の数々、小川破笠の名品を含む漆工、金工・七宝・象牙彫刻等の明治の超絶技巧工芸、五姓田芳柳から深見陶治迄の近現代作品、そして「李朝染付大龍壷」迄バラエティに富んだクオリティの高い作品が揃っている。

また今回は、通常のカタログと共に江戸絵画を中心とした「重要日本絵画個人コレクション」の別冊図録の制作も有り、そんな訳で3週続けての週末無し生活だったのも、これで一息。そして、この校了日とは即ち筆者の誕生日で有って、今年は1月の父の急死から当に「四苦八苦」の年と呼ぶに相応しく、無事49歳を迎えた(気持ちは未だ「35」なのだが、体が…:涙)。

因みに筆者と同じ「7月30日生まれ」の男性有名人には、アーノルド・シュワルツェネッガーや「ダーク・ナイト」のクリストファー・ノーラン監督、「マトリックス」のモーフィアス役のローレンス・フィッシュバーン、「ドラえもん」ことジャン・レノ等が居る…そして同じ日生まれの、彼等と筆者の共通点はと云うと…その答えは、今日のダイアリーの最後に記すので、良い子は最後迄きちんと読む様に(笑)。

さてその誕生日、カタログ校了後に「クサマヨイ」(この日から訳有って、「ゲル妻」は今ニューヨークで話題独占の「草間彌生」ならぬ、「クサ『マヨ』イ」と名を変えた:笑)と遅い「バースデー・ディナー」の為に向かったのは、トライベッカに在るデヴィッド・ブーレーと辻調理師学校のコラボ和食店「ブラッシュストローク」。

この店の噂は今迄嫌と云う程聞いて居たのだが、クサマヨイも筆者も実は「ブラ・スト」初体験。そして着いてみると、思ったより質素な造りの店内には見覚えの有る店員も居たりして、やはりニューヨークの有名和食店の世界はかなり狭いので有る。

そんな「ブラ・スト」で頂いたのは、シェフのテイスティング・メニュー。「紫蘇のかき氷」から始まったメニューは、「スイート・コーンのすり流し風スープ」や「トリュフ風味の茶碗蒸し」、「豚肉の八丁味噌添え」や〆の「イクラご飯」とデザート迄、計9品目の豪華なモノだったが、筆者達には全体を通して味が少々濃く、ブーレーの店だけに、若しかしたら外人向きの味付けをしているのかも知れない。

そして食後はと云うと、校了後の疲労感が強かったにも関わらず、飲み足りなさそうなクサマヨイに促されて向かったのは、お馴染みチェルシーの「B」。

9コースの料理を「ブラ・スト」で頂いたばかりだと云うのに、此処に来ると何故かまたお腹が空いて来て、全く以て自分が完璧なる「パブロフの犬」に思える(笑)。そしてそのパブロフ博士的「誘惑」にいとも簡単に負けた筆者は、「今日は俺の誕生日じゃないか…デッドラインも終わったんだから、俺は食いたい物を食うのだ!」と、結局カウンターで「ボンゴレ・ビアンコ」(小)と、大好物の激ウマ・デザート「クレスポ・デラックス」(ローソクと「ハッピー・バースデー」の合唱付)を頂き、クサマヨイからのプレゼントを抱えながら、疲労の極致と満腹感一杯でアパートに帰った。

が、家に着いて着替え、色々な人から届いたカードやプレゼントを見ていたら、何だか口寂しく為って来て(笑)、「そうだ、『アレ』を食べよう!」と思い出した「アレ」とは、前日に友人のシェフAさんが愛情込めて作ってくれた「『バースデー』お赤飯」…そして、諦め顔のクサマヨイが温めてくれた「赤飯」は、涙が出る程に美味しかった!

その「涙の赤飯」作ってくれた、元レバノン大使の料理人だったAさんは、嘗てはニューヨーク居酒屋の名店「RIKI」の多彩なメニューを創造し、今は「Sushi of Gari」でキッチン・シェフをしている。外見は強面、しかし人柄は本当に優しい人なのだが、さてこのAさんと仲良くなった最大の理由はと云うと、何とお互いの誕生日が「7月30日」だったからなのだ。

そんなAさんが、略毎年お互いの誕生日が近くなると作ってくれる「お赤飯」は、今迄何処で食べたどんな赤飯よりも美味しい。餅米と小豆は柔らか過ぎず、堅過ぎず、プロが作る絶妙な歯応えと薄目の塩味…しかしそれ等と共に、いやそれ以上にこの「お赤飯」を美味しくしているのは、何を隠そうAさんの「友情」では無かろうか。「ブラッシュ・ストローク」、そして「B」とハシゴした今年のバースデー・ディナーだったが、結局この晩一番心に残ったのは、最後に何口か食べた、同じ日生まれのAさんの「お赤飯」で有った。

さてAさんと筆者、前述の有名人を含めた「7月30日生まれの男」の共通点…それは「気は優しくて力持ち」、「マッチョ振って居る癖に、何処か気が弱く」、「基本的に善人だが、悪役や脇役に妙に共感する」。

そして何より「友情に篤く」、「食べる事が何よりも好き」…筆者とAさん以外の男達も、きっとそうに違いない(と信じたい:笑)。