"I Have a Dream."

"I have a dream..."

この「余りにも有名な『フレーズ』」を持つスピーチを、知らない人は居ないだろう。

今から丁度50年前の今日、1963年8月28日ワシントンD.C.に於いて、マーティン・ルーサー・キングJRが25万人の大聴衆を前にした、人種差別終結を願う「パブリック・スピーチ」中の名文句で有る。

自分の生まれた略ひと月後にこのスピーチが為された事に、時間の経過と世の中の情勢の変化を感じない訳には行かないが、ここ数日ニューヨークのメディアでは、例えばシリアやエジプト情勢の混乱と絡めて、キング師とこの高名なるスピーチが毎日フィーチャーされて居る。

そんな中、ニューヨークの朝のテレビ番組の合間合間に「吐き気」を覚えているのは、果たして筆者だけだろうか?

それは、ニューヨーク市長選に出ている元下院議員アンソニー・ウィーナーと、市の会計監査官に立候補している、元州知事エリオット・スピッツァーの選挙CMの事で有る。

ウィーナーは、自分のヌード写真や猥褻な内容のメールを送ったとして下院議員を辞職したが、何と辞職後も送り続けて居た事が発覚した、痩せたトカゲの様な外見を持つ男だ(マヨンセに云わせると、自動車保険会社「Geico」のCMに出てくるトカゲの様だ、との事)。

そのウィーナーがニンマリしながら、幾ら歯の浮く様な政治信条を述べても、我々にはそのスーツの下に隠された、自己満足極まりない痩せた裸体と、猥褻メールを必死に女性に送っている最中のエロ顔しか想像出来ないのだから、朝から「吐くな」と云う方が無理と云う物だ。

そして、此方も何故か爬虫類っぽいスピッツァーも、高級売春クラブに何万ドルも使った事が発覚し、州知事を辞任。終いには相手の売春婦もメディアに出て来た程のスキャンダルと為ったエロオヤジで、この男も当選後の政策等をCMで澄まし顔で喋っているが、売春婦を前に見せたで有ろうニタリ顔がどうしてもダブってしまう。

成る程、アメリカと云う国には「『一度』は過ちを赦す」慣習が有って(アメリカに13年居ても、未だに夫婦揃って出て来て「夫のセックス・スキャンダルを赦す」とメディアの前で発言する、政治家の妻の気が知れないが…)、その事は重々承知しては居るが、このエロ政治家2人が責任を取り切らず、政治的に去勢される前に(時間的に、カムバックが早過ぎると思う)、再び公衆の面前で、しかも朝からテレビCMで己の政治家としての正当性を語る姿には、「疑問」を持つ処か「吐き気」をさえ催すのだ。

こんな状況を見ると、今の時代に「政治家の質」等望むらくも無いのだろうが、それにしてもこんな小物な連中が、「責任を取って辞職します」との舌の根も乾かぬ内に政治の場へ出て来れるのだから、政治の場に於ける人材不足は甚だしい。それは日本も然りで、と云うよりは日本の方が酷く、その悲惨さは目を覆う程だ。

若い頃、世の中を変えようと要人の暗殺を試みた事の有る老政治思想家に、「真の政治的リーダーとは、どんな人でしょうか?」と以前尋ねた時、老政治思想家は、

「将来が見通せ、万人に愛され、責任を取り切る人だ。」

と答えられた。

"I have a dream today."

このスピーチをした時、マーティン・ルーサー・キングJRは、僅か34歳。

責任を取り切り、国や国民の将来に夢や希望を持ち、それを情熱を持って語り実行する事の出来る、「大きな器」の政治家は何処にも居ないだろうか?

今日の「ニューヨーク・アート・ダイアリー」は、孫一特派員に拠る「ポリティカル・ダイアリー」をお届けしました。


◎筆者に拠るレクチャーのお知らせ
「特別展 京都洛中洛外図と障壁画の美ー里帰りした龍安寺襖絵をめぐって」
日時:2013年11月16日(土)、15:30-17:00
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室

詳しくは、朝日カルチャーセンター新宿教室:03-3344-1941迄。
皆様のご参加をお待ちして居ります!