至高のダブル「マロンちゃん」、再び。

先週も公私共にイヴェント盛り沢山で、少々お疲れ気味なワタクシ。

が、そんなワタクシを癒して呉れたのが、食の盟友Mのレストラン「T」の激ウマ・デザート、「Chestnut Napoleon」で有った!

甘過ぎないマロン・クリームをパリッパリのパイ生地が挟み、その上には生クリームとそれこそ絶妙な甘さで煮込んだ栗が乗った、「マロンちゃん」好きには堪らない逸品…ハァ、思い出しても溜息の出るデザートでした…。

さて先週は、先ずはメトロポリタン美術館でのレセプションへ…在外日本美術コレクションの中でも、「パワーズ・コレクション」と共に質量共に最も評価されるコレクションとされる「バーク・コレクション」が、最近同館(とミネアポリス美術館)に寄贈されたのだが、そのMETでの寄贈記念展「Celebrating the Arts of Japan:The Mary Griggs Burke Collection」 のVIPオープニングで有る。

世界各国からの学者や業者、知人友人が集まったカクテル・レセプション会場では、キャンベル館長の挨拶に続き、ハーン・アジア美術部長、カーペンター学芸員の挨拶が行われ、いざ展示室へ。

バーク・コレクションのラインナップは多彩で、神像・仏像から陶磁器、絵画、漆工芸迄、時代も縄文時代から明治時代迄幅広いが、僕の目からすると矢張り「女性の眼」で選んだ所に特色が有ると思う…それは、バーク夫人とそのアドヴァイザーだった村瀬実恵子先生の眼が選んだからか、力強いモノよりも品の有るモノが多い気がするからだ。

現在展示中の作品中での僕のオススメは、矢張り「ツレ」が大和文華館等に分蔵される「男女神坐像」や雪村の名品「竹林七賢図」、14世紀の「丹生明神像」軸や「扇面流風俗図」屏風等だが、その中でも特に「丹生明神像」は、僕がNYに来る大分前に開催されたクリスティーズの第2会場でのオークションに「Portrait of a Woman」と云うタイトル(+たった2000ドルのエスティメイト!)で出品され、その「Woman」が「丹生明神」と知って居た2人が競った結果、8万ドル程で落札…そして修復後、数十万ドルの価格でバーク・コレクションに入ったと云う「スリーパー」伝説を持つ作品なのだ…何はともあれ、是非訪れて頂きたい。

展覧会観覧後は日米ディーラーとイタリアンを頂き、その日は終了。そして翌晩は日本からのお客様と、メトロポリタン・オペラに再び…前回の「トゥーランドット」に続き(拙ダイアリー:「誰も寝ては為らぬ…いや、寝ては居られぬ」参照)、今回は「トスカ」で有る。

「トスカ」を観るのは人生で3回目、METでは2回目だが、この作品は脚本とアリアが良く出来て居るのに加え、毎回プロダクションが異なるのが楽しい。今回もシンプルなセットだったが、トゥーランドットの時と同じく指揮者とオケ、そして特にカヴァラドッシ役のロベルト・アロニカが素晴らしくて、泣ける。

その翌晩はチェルシーに向かい、Paceでのラウシェンバーグ展等のオープニングを渡り歩いた後は、顧客Sがハーレムの元ビール工場を借りて6日間のみ開催する展覧会、「Hyon Gyon and the Factory」へ。

この稀なるスペースを訪れたのは2回目だが、広大な廃墟美を誇る空間に並ぶ女性作家Hyon Gyonの作品は、その巨大空間に決して負けて居ない処か、その場所で産まれた如き親近性を持ち(実際そうなのだが)、空間を飲み込む程の迫力に充ち満ちて居る。

そして、Sに拠って丁寧にキュレーション&インスタレーションされ、選ばれたコレクターや美術館キュレーター等が集まったレセプションの夜は、驚くべき事にSが全て自分で作ったと云う(!)ハンガリー料理等に舌鼓を打ちながら更けて行った…然し、Hyon Gyonとは凄いアーティストだ。

そして僕に取っての「先週最大のご馳走は?」と問われれば、それは久々のブルー・ノートで観た「Dizzy Gillespie All-Stars」だったと答えるだろう!

満員のブルー・ノートのセカンド・セッションは、2トランペット、アルト、トロンボーン、ピアノ、ベース、ドラムスの7人編成でスタートしたが、何しろ実力者揃いのパワフルな演奏が迫力満点。

その中でも特に光っていたのが、トランペットのテレル・スタッフォードと、スキャットも素晴らしいドラムスのルイス・ナッシュ、そして今日のダイアリーの「もう1人の主役」で有るピアニストだった。

軽やかなタッチで奏でる彼の腕前は物凄くて、例えば彼の弾く単音の強さと美しさや、僕が今迄聞いた事の有る如何なるアレンジの中でも最も美しい「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」のプレイは、世にも稀なるモノだったのだ。

そのピアニストの名は「サイラス」。が、その彼の名前がステージで告げられた時の驚きは、筆舌に尽くし難い…何故なら、彼の「ファミリー・ネーム」が僕の大好物だったからだ!

「マロンちゃん」好きの僕に取って我慢出来ない「名前」を持つピアニスト、Cyrus "Chestnut"のプレイは甘さ控え目、且つパリッとして「T」の「ナポレオン」 の如し(笑)。

2つの至高の「マロンちゃん」に、大満足な1週間でした!


ーお知らせー
*Gift社刊雑誌「Dress」にて「アートの深層」連載中。10/1発売の11月号は「秘すれば花」な「春画」に就て。