「自己体内で観るアート」?

人が自分の「体内」を観る機会は、何れ位有るだろうか?

実は昨日今日と、毎年恒例の「人間ドック」に入って来た。そして此れも毎年恒例の、胃と大腸の「内視鏡検査」を受けたのだった。

いやはや、この検査は何回やっても馴れない。何しろ痛いし、前の晩はゆっくり夕食も取れず、喉に溜める麻酔の不味さ(麻酔を掛けて、眠らせての検査方法も有るらしいが、筆者は怖くて出来ない)、早朝から下剤を2リットル飲まなければならない事(余談だが、この下剤の名前は「ムーベン」と云い、「ムーヴ:動かす」と「便」を合わせた、たまに薬や医療品に見られる秀逸なネーミングで笑える)、そして肛門から内視鏡を入れられる喜び、もとい恥辱たるや、何とも耐え難い(笑)。

さて、筆者が毎年「一泊ドック」を実施している、K病院での内視鏡検査は、患者に「モニター」を見せながら進行するのだが(「見たくない」と拒否も可)、これが中々興味深い。勿論検査中に大きな病変でも発見されたりしたら、それはそれで大ショックで有ろうが(それが検査の目的なのだが)、或る意味「痛さを忘れる程に」面白い光景が、横臥した眼に飛び込んで来るのである。

「胃」を例に取ってみよう。

先ず内視鏡は横臥した筆者の、マウスピースをくわえた口から侵入する。この時が一番痛い。しかしモニターに映る、ライトに照らされた喉や食道は、想像以上に綺麗なピンク色で、眼を奪われる…この柔らかなピンクの器官を見て、何と無く「煙草を止めて良かった!」と思うのは、筆者だけでは有るまい。

内視鏡は進む。食道の或る部分から、ピンクが薄い「赤」に変わり、これは胃酸の逆流に因る軽い「逆流性食道炎」で、最近日本人にも多いそうだ。しかしこのピンクから赤に変わる「グラデーション」が、中々に美しい…と思っていたら、医師から「食べて直ぐ寝たらダメ」とか、「腹八分目を心掛けよ」等の「無理難題」を云われ、感動も薄まってしまった(笑)。

医師の説明を聞きながら、内視鏡は更に奥へと進む。胃に入ると、これまた毛細血管がほんのりと浮かんだ綺麗なピンクの胃壁と、たまに見えるシワは、年齢に因る軽度の萎縮らしいが(もう若く無いのだ…涙)、ちょっと「マンゾーニ」入っていた(笑)。

結局、内視鏡は行く所迄行き、幸運にも今回はポリープ1つ見付からず、無事引き返す事に為ったのだが、この時のモニターに映る「映像」がスゴイ。胃と食道、大腸をスピード感満点に引き返すカメラ。ライトに照らされたピンクの内壁が、勢い良く引き抜かれて行くライトと共に、暗闇へと消えて行く…異常が無かったと云う安堵感も手伝い、このビデオ・アート的「絵」から眼が離せなかった。

自分の体内と、ビデオ・アートを観る事が出来て、しかも早期癌等の発見が可能な「内視鏡検査」…アートな貴方にお薦めです!(笑)