「裏千家」イヴェント・ウイークエンド。

先週開催された「ASIAN WEEK」は、結局全体で7075万ドル(約60億2000万円)、ニューヨークでの「ASIAN WEEK」史上2位の売り上げを記録して終了。中国の勢いは未だ衰えず、3セールで5555万2000ドル(約46億円)を売り、アジア美術を引っ張った。アジア美術全体(日本・韓国、東南アジア、中国各部門)のマーケット・シェアは、72%と競合(サザビーズ、ボナムス)を圧倒し、格の違いを見せ付けた結果となった。

一息吐いた先週の金曜日は、売れに売れた中国美術セール終了後、仲の良いディーラーのNとHの両氏、東京支社のMと共にチェルシーの「B」でディナー。旨い料理を食べた後は、我が地獄の庵で妻も交え一杯…旧交を温めた。

翌土・日はと云うと、今日庵鵬雲斎大宗匠が来ニューヨークされており、裏千家から幾つかのイヴェントへのご招待を受けたので、妻と参加する事にした。これらのイヴェントは、鵬雲斎大宗匠が初めて日本国外に出られてからの「60周年」を記念するもので、大規模な催しである。

先ずは土曜日の朝。「グラウンド・ゼロ」に程近い、ニューヨークで最も古いカトリック教会、セント・ピータース教会での、鵬雲斎尾大宗匠に拠る「献茶式」に参加した。

リノベートされた教会内部は、大理石造りでシックな美しさが際立つ。今回は最前列に通されたので、間近で「献茶」のお手前を拝見できた。讃美歌やお祈り、神父の聖書朗読等に続いて、「一碗の茶から、平和を」がモットーである大宗匠が、荘厳な雰囲気の中で濃茶と薄茶の二碗を点てられ、テロの犠牲者の方々、そして昨年亡くなった元裏千家ニューヨーク出張所所長の山田尚氏のご冥福を祈って、神に献じられた。

昨年、山田氏の追悼会がジャパン・ソサエティで開催された折、いらっしゃる予定であった大宗匠がご病気の為来られなくなり、我々身近の者は非常に残念に思っていただけに、今回大宗匠が晩餐会でのスピーチを含め、故山田氏の事に触れられ功績を讃えられた事に、さぞかし天上の氏も安心されお喜びになって居られるだろうと、妻と万感の想いであった。

献茶式後は、お茶を習っている友人のA姫とYちゃん、そしてP王子との5人で「BREAD」でブランチ。

一度家に帰った夕方からは、記念晩餐会出席の為「プラザ・ホテル」へ。ディナー前のレセプションでは、数々の友人や顔見知りと挨拶を交わし、いざディナーへ。恐らく300人程の、多くの和服姿の女性を含めた各界の人々で埋められた、オーナーが変わってもそのままの「プラザ・ボール・ルーム」は、雰囲気も素晴しく壮観で、流石「プラザ」の名に相応しい。

友人の茶人Gの司会で会は進行し、同テーブルに着いたコロンビアやイェール大学関係者、美術館関係者等とも談笑しながらディナーは進む。途中大宗匠のスピーチ、そして各テーブルを出席者と握手して廻る等大サービスも有ったが、何しろとても87歳とは思えない鵬雲斎大宗匠のバイタリティと(握手した手の力強い事!)、その出席者・関係者を大切にするご姿勢には感服至極。

そして日曜日は、朝からお茶会。先ずは69丁目の茶の湯センターでの、京都今日庵が持つ濃茶席に赴く。今回の相客は親しい茶人D氏夫妻、もう何十年もお茶を嗜んでいるM女史、Iさんや随縁会のKさん、キーン・センターのA氏、KITANO HOTELのK氏(彼は遠い親戚である!)、神道ファンデーションのN氏や国連代表部、総領事館の方々等。「茶の心」をご存知なD氏(正客)夫妻が居るといつもお茶が楽しく、今回もそれは例外ではなかった。

濃茶が終わると表にバスが待っていて、今度は裏千家NY支部が受け持つ薄茶席と点心を頂きに、KITANO HOTELに移動。KITANOのペントハウスでの薄茶は、道具の取り合わせも変わっていて、お菓子も京都製では有るが、このペントハウスから見えるエンパイア・ステート・ビル等のニューヨークの摩天楼が描かれており、これも一興…点てていた友人Pは、ちょっと緊張していた様だが…。そして点心は、地下の和食レストラン「白梅」で皆さんと楽しくお弁当を頂き、無事お開きとなった。

裏千家茶の湯センター・ニューヨーク」も、マーク・ロスコのアトリエであった今の素晴しい場所に移ってから、もう30年経つ(未だにロスコの幽霊が出るとの噂も!)。この間の、アメリカでの茶の湯を通しての日本文化伝播活動には本当に大きな功績が有って、そしてそれが有ったからこそ、今のニューヨークでの「茶」のソサエティやファンが存在していると云っても過言では無い。

これからも裏千家ニューヨークには、日本文化代表選手である茶道を通して、真の日本の心を伝え続けて頂きたいと、心より期待している。