「ロックフェッラー別邸での茶会」と、ある日本男児の「四十九日法要」。

何という、素晴しい日だったのであろう。

前日リストラで部下の首を切らねばならず、非常に「非情」な気分で有ったのだが、19日は天気にも恵まれ、鳥の囀り、木々の緑、空気の清明さ、全てがこの世の幸福を祝っている様であった。ホワイトプレーンズに程近いロックフェラー一族の別邸は、ゴルフ場を含む広大な、余りに広大な敷地に在り、その中に純日本風の茶室が池を目前に立てられている。

この日の茶会は武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏と、当代若手随一の目利き古美術商、柳孝一氏の「共同亭主」で行われた。この素晴しい環境に加え、これまた素晴しい道具の数々…床の利休消息文に始まり、長次郎赤楽、粉引茶碗、仁清水差等など、全て心尽くしが素晴しかった。

それと共に極めつけは、新茶の濃茶の美味しかった事!茶道とは、その全てが一服の美味しい茶を飲む為の演出である、と云う事がよく判る一碗であった。前日解雇された部下には本当に申し訳ないのだが、リストラで傷ついた此方の心も、一瞬裡にリカバーしてしまったのだ。これぞジャパン・クールの極み、お茶の極意であろう。

そしてまた昨日は、裏千家NY出張所元所長の山田尚氏の四十九日法要だった。この人との「縁」は、書いても書き切れ無いのだが、一言で云えば筆者の「師」の1人である。不世出の茶人であり、大和魂を持ち続けた日本男児であった。何時の日か、彼の事は此処に書きたいと思っている。

改めて氏のご冥福を祈りたい。