シカゴ美術館「Beyond Golden Clouds」展と、「The Modern Wing」。

昨日は終日シカゴ出張…朝3時半に起きて4時45分の迎えの車に乗り、6時のフライトで7時半にシカゴ到着。

まず訪れたのは、湖畔の高級マンションに住むコレクターである。彼は日本の仏教彫刻が大好きで、今回は彼からの依頼でコレクション中の仏像の査定に伺った。拝見したのは、珍しい室町期の「亥神像」…亥神は十二神将の一人で、弓を持ち矢先を見ている立像である。良い物だが値段交渉が必要かも知れない。

その他何体か拝見し、談笑の後はシカゴ美術館へ。

数年前から日本美術担当学芸員となったジャニス女史と共に、つい先日始まったばかりの展覧会「Beyond Golden Clouds」を観る。シカゴとセントルイス美術館所蔵の屏風絵の展覧会で、中々「オモシロキモノ」が並ぶ。南蛮屏風、大織冠図、冷泉為恭の短冊屏風、加山又造、現代美術の屏風仕立て作品等。作品自体もさることながら、展示が素晴しい…ガラス・アクリルが一切ないのだ。危険と云えば危険だが、作品から受ける印象は良い意味で全く異なる。難を云えば少々作品の設置位置が低かった様に思ったが、或る意味オークション下見会場の様であった。

屏風を後にし、新設された「The Modern Wing」へ。

素晴しい清新な空間で、これまた贅沢な近・現代美術を観る。トゥオンブリーの後期の珍しい作品群に拠る「Landscapes」と云う特別展があり、これも面白かった。今迄知っていた筈のトゥオンブリーとは全く違う雰囲気で、より有機的な作品群であった。

他の現代美術も先端を行っていて、非常に観やすく構成されている。チョッと驚いたのが、シュール・レアリスム絵画のコレクションの素晴しさで、日本では恐らく余り人気の無いデルボー、タンギー、そしてお馴染みのマグリット、ダリ、エルンスト等、珠玉の作品群が並ぶ超現実空間であった…日本では有り得ないのでは無いか。

そして美術館前で頼んだ車を待っていると、一台のストレッチ・リムジンが目の前に。まさかと思ったがこれが頼んだ車で、「これで客の所へ行くのか…」と思いつつも、ゆったりと足を伸ばす。運転手に拠ると、不況の影響でストレッチ・リムジンを頼む客が激減し、普通車の方に人気が集中、出払う事が多くなり、今回も普通車と同じ料金でのサービスと云う事であった。何処も苦しいのだ。

朝が早かったので転寝をしている内に、40分位で郊外に在る今日最後の顧客の元へ。現存する中では、恐らく3本の指に入る、世界最大・最高クオリティーの浮世絵版画コレクションの持ち主夫妻である。生臭い話は無く、美術界四方山話に終始するが、実はこれが大事…そう、ディールは急いではいけない。コレクションはじっくり暖める事が重要である。笑顔で再会を約束、豪邸を後にし奇跡的に遅延無いフライトで、9時半頃ニューヨークに戻った。

空港からは、直行で常連の「Basta Pasta」で食事。こう云う日は、高田シェフの味が心に優しい。そこで、バッタリ妻の友人の西海岸のアーティスト親子に会ったり、シェフと「チャイコフスキーは、誰の演奏が一番良いか?」等と話たりして、頭も腹も満腹、家に帰るとバッタリとベッドに倒れ込んだ。

今週末は独立記念日。友人の若手アーティスト宅での、パーティーに参加予定である。