レベルの違い:MTVアワード。

日曜日に開催された今年のMTVアワードは、当社直ぐ隣のラジオ・シティを中心に、ブロードウエイの幾つかの劇場や周辺の道路まで使っての大行事であった。

下見会中から凄い人出と大歓声が聞こえ、骨董品を客に勧める我々としては、少々外が羨ましくなる程で、筆者も「最優秀女性ビデオ賞」を受賞したTAYLOR SWIFTを49丁目で見掛けたが、残念ながらビデオで観る程可愛くは無かった。勿論優ちゃんに遠く及ばないのは、云うまでも無い。

その晩、MTVチャンネルでアワードの様子を見たのだが、何しろ番組構成や演出が素晴しい。先ず冒頭驚いたのは、マドンナの「モーニング・スピーチ(「朝」では無い。「弔辞」である)」。日頃余り肉声を聞かせないマドンナが、あの様に長い時間を掛けて(恐らく5分以上あったのではないか)非常に「パーソナルな話」を語ったのを聞いたのは初めて。

MJと自分の生い立ちの類似点(同い年、大家族に生まれた事等)から始まり、彼へのリスペクト、如何に自分を含めた人々がMJの「人間」性を無視してきたか、また2人で過ごしたプライベート・タイム等、時折溢れ出る感情が見え隠れしながらのスピーチは本当に感動的で、マドンナの人間性を垣間見せた。

そしてジャネット・ジャクソンによる「MJ」トリビュート・ステージは、ビデオとステージが渾然一体になる演出で会場も大興奮であった。またハプニングとしては、KANYE WESTが泥酔し、上記テイラーが受賞した時のスピーチを妨害した上、彼女からマイクを捥ぎ取り、云う事に事欠いて「ビヨンセが最も素晴しい女性アーティストだ!」と発言。その後ビヨンセは、彼女が受賞した際にテイラーを舞台に呼び出し、お詫びの意味で彼女にスピーチの時間をプレゼントした。こういう所にもビヨンセの、女性いや人としての成熟度が伺える。

番組中の幾つかのステージも、本当にカッコ良かった。特にPINKの空中ブランコや、番組最後のJAY-ZALICIA KEYSのデュエット・パフォーマンスが秀逸。リムジンでシアターに乗り付けたJAY−Zが、そのままステージに直行し(それをカメラがずっと追いかける)、ステージ登場と同時にALICIA KEYSとデュエットを始めるという、超カッコいい演出であった。そのALICIAの歌声がこれまた素晴しく、観衆やTV前の視聴者の心に染み渡り、彼女が世界超一流のアーティストである事を改めて証明する事となった。

がしかし今回の最高のステージは、やはり我がBEYONCEであった!

LADY GAGAや、BRITNEYを押しのけ、以前ダイアリーでも紹介した、本年度「ビデオ・オブ・ジ・イヤー」受賞曲「SINGLE LADIES」のステージは、恐らくMTVアワード史上、また本年度のTVで観られた如何なるアーティストのステージの中でも最高であったと断言しよう。

受賞曲のPVをモチーフにし、しかしかなり大胆なアレンジを加え、最終的には何十人もの「ビヨンセ体型」の女性達が、「例のダンス」を同じ振り付けで踊る。この曲、振り付けの斬新さは筆舌に尽くせないのだが、端的に云えば「女の生・性の美しさと悦び」であり、ビヨンセだけがそれを具現し得る。もう彼女は単なる「大人になったセクシーなDESTINY CHILD」ではなく、何と言うか、飛び切りの世界の超一流の「女神」アーティストなのである。

今回のアワードは、ショウとして本当に凄かった。この日登場した全てのアーティストとその個性、PV、ステージ、演出、舞台装置、全ての面で日本とはレベルが違うと、断言できる。正直日本は10年遅れているだろう。

流石はアメリカ、MJ、マドンナ、ビヨンセを生んだ国である。