あぁ大敗…印象派・近代絵画「イヴニング・セール」。

昨晩は若手写真家のG君と、行き付けの和食屋「T」で夕食を共にした。

久し振りの再会であったが、G君も元気そうで、数多アートの話に花が咲いた。食事中には、ワールドシリーズ終戦ヤンキース松井が、決勝打を打ったりして店主Hも大興奮・・・であったのだが、その最中に驚くべきニュースが、筆者のブラックベリーに入って来た。そのニュースとは、昨晩我々の食事中に開催されていた、サザビーズ印象派・近代絵画のイヴニング・セールの結果である。

一昨晩のクリスティーズのイヴニング・セールは、40点のオファーの内28点が売れ、総売り上げは6,500万ドル強(約60億円)であった。7割売れて、このご時世に一晩6,500万ドルなのだから、社員も皆「良く売れた!」と、安堵の感想を持っていた…昨晩のサザビーズの結果を知るまでは。

ブラックベリーに入ってきたサザビーズのセール結果の数字に、一瞬眼を疑ったのだが、もう一度見返しても、総売上は「1億8,176万ドル」(約166億円)と有る。「1億8,000万ドル」?こりゃ、驚いた。数日前のダイアリーでも(拙ブログ「印象派・近代絵画下見会」参照)、アチラさんのラインナップの方が良いと書いたのだが、結果も正にそうなってしまった。しかし、クリスティーズがイヴニング・セールでここまで大敗したのは、何年振りではないだろうか。

さて問題の結果内容なのだが、先ずクリスティーズ。トップ・ロットはドガパステル「踊り子たち」で、700万ー900万ドルのエスティメイトに対して、1,072万2,500ドル(約9億8千万円)で売却。買ったのは、香港の個人コレクター。相変わらず、中国は強い。第2位はロダンのブロンズで、下値は150万ドルであったが、これも良く売れて635万4,500ドル(約5億8千万円)での売却であった。

それに引き換えサザビーズは、66点のオファーで56点売れ、その中で1,000万ドル以上で売れた作品が、5点も有る(クリスティーズは1点)。その5点の中でも、ダイアリーにも書いたジャコメッティの「倒れそうな男」がトップ・ロットで、何と1,934万6,000ドル(約17億8千万円:エスティメイトは800万ー1,200万ドル)での売却、がしかし、この作品は本当に素晴しいので、高いとは思うが納得はできる。

が、驚くと共に納得し難いのが、筆者的には完全に「B級アーティスト」である所の、ヴァン・ドンゲン作「Jeune Arabe(若いアラブ男)」が1,380万2,500ドル(約12億7千万円)という価格で売れた事だ。正直、嘘だろう?という感じである。ヴァン・ドンゲンですよ、ヴァン・ドンゲン!しつこい様だが、信じられません。買ったのは、アラブ人に違いない(苦笑)。

その他1,000万ドル以上での売却作品は、ドランが1,400万ドル強(フォーブ時代の良い作品:エスティメイトは600万ー800万ドル)、カンディンスキーが1,000万ドル強(エスティメイトは600万−800万ドル:今グッゲンハイムで展覧会もやっているし、納得できる)、ピカソが1,000万ドル強(これは酷い作品。誰がこんな作品に10億円も払うのだろう…。エスティメイトは800万ー1,200万ドル)であった。

セール結果で大敗を喫した事は致し方ないが、唯一の明るい話題は、何しろマーケットがこれ程強く戻って来た、と云う事だろう。こんな両オークション・ハウスのセール結果を、今季一体誰が予想できただろうか…。噂に拠ると、サザビーズが取ったコレクションは、「某銀行」からの出品らしいが、クリスティーズは全くそのルートを知らず、「コンペ」にすら為らなかったらしい。

何はともあれ、これで来週の現代美術のセールが楽しみになって来た・・・今週末の下見会が楽しみである。来期のボーナスは期待できないけど…(泣)。