北の国から。

今日のタイトルの意味は、「アー、アー、アアアアアー」では、無い。

「別れた男の行く末は、雪の舞い散る北国の、海鳥だけが知っている。歌は流れる貴方の胸に…一週間の御無沙汰です。『⚫本●司』でゴザイマス。」でも無い。

長くなったが、今日は朝から「北の国」に出張であった。「北の国」等と甚だ大まかで申し訳ないが、「企業秘密」なので「何処」と云えない…気になるでしょ(笑)?行きすがら、「トンネルを抜けると、其処は雪国で」は未だ無かったが、前回来日時に続いて、列車窓より大きな美しい虹を観る事が出来たので、ヨシとしよう。

さてその「北の国」には、桃山時代の或る重要な屏風を観に行ったのだが、先ず何しろそこの家が、これまたスゴイ。築150年位で、襖を立てると、都合26部屋ある。敷地総面積は一万坪弱だそうで、規模は少々違うが、嘗て筆者が子供の頃に遊んだ祖母の家を思い出させる、大きな梁の立派な「民家」建築である。広大な庭も素晴らしく、落ちた紅葉が恐ろしい程美しい。非常に変わった形状の茶室も在り、本当は色々述べたいのだが、これも云えないのが辛い(笑)。

豪商の末裔の家に育った御当主は御年82歳、至ってお元気且つ、非常に魅力的な「お洒落」なおじいさんである。時折会話に英語が混じるので、何故かと思えば、先代がアメリカの大学を2つ出ているかららしく、所謂「ハイカラ」な一族なのだ。しかし御当主のメガネの奥の瞳は、人を居抜き見抜く鋭さを宿していた…。筆者の経験から云うと、こう云う人は怖い人だが、尊敬できる人だ。

御当主とはニューヨークの話題や、「此処でも」魂と文化を失いつつ有る、「腰抜け日本人」について話が弾んだ。御当主が筆者の仕事を「羨ましい!」と繰り返し云うので、「ハイ、僕はラッキーなんです。」と云うと、ニッコリ微笑んでいたのが印象的であった。

件の屏風は、残念ながら今回は出て来なさそうだが、スゴイ屏風とお宅を拝見し、そして何よりも「持ち主」の御当主にお会い出来た事が、本当に嬉しかった。この仕事の醍醐味は、素晴らしい「人とモノ」との出逢いに尽きる。売れた売れないは、二の次なのだ(勿論高く売れるに越した事はないが:笑)。

結局「北の国から」は「手ぶら」で帰京したのだが、幸せ感一杯の1日であった。珠には、こんな日が有っても良いだろう。