青い釉。

今回の日本出張も、あと残り数日。クリスマス前で慌ただしいが、アメリカでの国内出張がこれから二回有るので、今年の年末年始はNYである。正月はマッタリとした日本に限るのだが、致し方無い。

一方仕事の方は、そこそこの収穫はあったのだが、未だ3月のオークションの目玉(50万ドル以上の作品)が決まらず駆けずり回っていて、実際今も新幹線の中からアップしている。

さて昨日は、昼に幾つか屏風を観たが決まらず(泣)。特に午後に観た作品は、もう数年に渡り追い掛けている大作で、「超大物」なのだが、一点だけ自分でも納得出来ない問題が有り、躊躇している。詳しく云えないのが残念なのだが、端的に云えば「古美術の真贋」は非常に難しい、と云う事だ。
美術品は一度「偽物」や「贋作」の烙印を捺されると、その後調査や研究が進んでも、その作品が「真作」に変わるのは非常に難しい。真作を贋作とするのは至って簡単だが、逆は…と云う事である。つまり贋作を真作にしろ、と云う事ではなく、安易に「贋作」を産み出さない様に注意する事が肝要なのだ。美術史研究上、また取引上最大の罪は、「真作」を抹殺する事で、我々は其処を忘れてはならない。

さてさて夜は、S会長カップルと、行き付けの青山のイタリアン「D」で食事。ここのシェフのI氏は、シシリーでも修行した強者で、腕も良い。会長のGFのMさんとは初めてお会いしたが、とても綺麗且つ飾らない方で、妻との「ビックリするご縁」も有り、食事も大いに盛り上がった。デザート時には、会長ゲットの玉佛もバッグから出現し、皆で鑑賞。イチゴ・ティラミスやカンノーリと共に眼もお腹も大満足でした。

食後は、お茶を一服と云う事になり、場所を会長宅に移した。窓からの街の灯りが美しい応接間で、妻と暫く待っていると、支度が出来た旨告げられ、躙口より茶室に入る。と、其所は別世界…暗い室内は幾つかの燭台の灯りでほんのりと照らされ、炉には釜、既に松籟が聞こえる。当に「此処は何処?」である。そしてこんなに短時間で準備出来るのは、流石「かいちやう」。床には「戒」一字の軸、脇床には愛染明王座像があり、暗がりの中拝見する。

そろそろと、お茶が始まった。静かにお点前を始める会長の指の先には、暗くて良く見えないのだが、何やら堂々とした茶碗が…。見覚えの有る、上がりの良い青磁鉢のお菓子を頂いている内に茶が点てられ、茶碗を手に持つと、何ともスンバらしい茶碗では無いか!仄かな暗闇で観ても、カイラギの力強さが判る…溜め息を吐き飲み干すと、妻、Mさんと続き、今度は会長のご指名で、妻が会長に一服差し上げる事となった。

何とも至福の一時…時間がその速度を落とし、そして停まった。

一服後は茶室を明るくし、道具拝見タイム。軸は俵有作作、その他道具も素晴らしいのだが、例の主茶碗がやはり飛び抜けている。この茶碗は、筆者が「出る事の叶わない茶会」に用いられるモノだそうで、この日に見せて頂いた会長のお心遣いを、有り難く頂戴したのだった。

この茶碗の事は、此処では深く云わないが、「あおい、ゆう」が掛かっていた事だけ記しておく。

「青い釉」、最高であった(笑)。