イヴの朝、MOMAで。

メリクリ。

NYのイヴの朝は、意外と静かである。こんな日でも何と当社は、「半日営業」で(誰が来るというのか!:怒)やっていたりするのだが、勿論筆者は会社等には行かず、がしかし会社近所の「MOMA」に朝一で行って来た。

MOMAなぞは、ホリデー・シーズンは当然大混雑なので、イヴかクリスマス当日の「朝一」に行くに限る。ウチの会社の「福利厚生」等と云うモノは、近所のジム(しかし、誰がアフター・ファイブに会社が契約しているジムに行って、己の醜い体を「同僚」に見せたいのだろう?)やロックフェラーセンターでの食事の割引位で、特に何も好い事も無いのだが、一点だけ素晴しいのは、仕事柄当然NY中の美術館のコーポレート・メンバーなので、入場券の「あの」長蛇の列にイチイチ並ばなくて良ろしい・・・これだけは本当に助かる。

MOMAに着くと、入り口付近はもう既に黒山の人だかり・・・こちらはスッとメンバー・カウンターでチケットをゲットし、2秒後にはギャラリー・オープン。現在MOMAでは中々バラエティーに富んだ、幾つかの特別展が開催されているのだが、先ずはお目当ての「BAUHAUS 1919-1933:WORKSHOPS FOR MODERNITY」へと歩を進める。この展覧会は「流石MOMA!」と拍手を送りたい程の展覧会で、絵画、工芸、写真、染織、デザイン、建築迄を網羅した素晴しい作品群で、そのたった14年間の創作活動を詳細に俯瞰したものである。

バウハウス(建築の家)」に関しては、筆者より詳しい方が大多数と思うので簡単に記すが、ワイマールで設立、ナチスに拠って閉校されるまで「合理主義的」「表現主義的」、そして「機能主義的」思想と芸術・建築を教え、特にモダン・デザインやモダニズム建築に多大なる影響を与えた「学校」である。

さて展覧会だが、「ご存知」クレーやカンディンスキーの作品はマジ素晴しいし、ロシア構成主義的作品や「ダダ」っぽいコラージュ等の平面作品も、かなり面白い。が、筆者に取ってもっと素晴しかったのは、実は「立体」であった。初代校長であるグロピウスの石膏モデル「Monument for the March Dead」(1921)や、スルツキーの「Study for Preliminary Course taught by Johannes Itten」(1920)、しかし何と云っても白眉は、モホリ=ナギの「Light Prop for an Electric Stage」(1930)である。

これは所謂「ライト・ディスプレイ・マシーン」と呼ばれるモノで、この機械を作動させ、光を当て反射させる事により、壁や天井に複雑な幾何学文様を映し出すと云う「シロモノ」だ。この「マシーン」は、一見何じゃこりゃ?なのだが、しかし良く観ると「歯車」やアルミ・鉄・ニッケル等の素材感、直線と曲線のコンビネーションが非常に美しく、超格好良いのである。

展覧会場では残念ながら、実際にこの「機械」を起動させてはいなかったが、その起動時の映像を観る事が出来る。その映像を見た感想は、何と言うか「大人のミラーボール」と云うか「機能主義的プラネタリウム」と云うか、不思議なモノであったが、だからと云って、この作品のスカルプチャーとしての美しさを減ずる事は決して無い。「欲しいっ!」と思ってしまいました。

バウハウス」展を後にし、次は「ガブリエル・オロスコ」展へ。この作家は筆者と同世代のメキシコ人現代美術家で、「介入主義(Interventionism)」と云う、既に在る「既成の形状」に手を加えて自分のアートにして行く、と云う作家である。この展覧会にも出ていたのだが、フランスの大衆車「シトロエン」を細切りして、前後各1人乗りに改造した作品が前から大好きであった。

が、その他の作品は正直ソコソコな感じだったので、サッサと次なる「In Situ:Architecture and Landscape」展へ。このショウは中々面白かった。ライトから始まり安藤忠雄伊東豊雄迄、モデルとドローイングで、建築とその自然風景を考える。この展覧会は1月18日までやっているので、友人の建築家S氏に解説して貰いたいショウである・・・Sさん、一杯奢りますのでヨロシクね(笑)。

最後に「常設」をザッと観て廻ったのだが、改めて素晴しい!と思った作品が幾つか有った。先ずフリーダ・カーロの2作品、「Fulang-Chang and I(サルと自画像)」と「Self-Portrait with Cropped Hair(切り落とされた髪の自画像)」。やはりフリーダはスゴイ・・・イッチャッている。

そしてクリムトの「Hope II」。最近「ベニスに死す」を改めて観たばかりなので、この作品に「頽廃と絶望の中の『希望』」を観てしまい、危うく涙が出そうになった。クリムトも「やはり」スゴイ。後はジャコメッティとベーコンの各作品・・・この辺は「やっぱり」という感じであった。

イヴの朝、「MOMA」を確り満喫させて頂きました。