The Practice of Chanoyu Today@CHRISTIE'S.

下見会も半ば過ぎの日曜日は、午後から当社に於いて「現代に於ける茶」に就いての、「レクチャー&デモンストレーション」を行った。

この「レクチャー&デモンストレーション」(デモンストレイティング・レクチャーと呼ぼう)は、武者小路千家十五代家元後嗣の千宗屋氏に拠るもので、ニューヨークに於ける武者小路千家「随縁会」の全面協力の下、開催されたイヴェントである。

ピカソの「キューブ・ぺリオド」の大作が壁に掛かるボード・ルームには、100名に喃々とするお客様が集まり、今か今かとレクチャーの開始を待つ。集まったお客様は、在NY日本総領事の西宮大使夫妻を初め、学者、茶道具コレクター、現代美術関係者、美術商、またNYでお茶をやられている一般の方々等、本当に多彩な顔触れであった。

今回の千氏に拠るこの「デモンストレイティング・レクチャー」は、そもそも今週のオークションで、15代楽吉左衛門と12代三輪休雪と云う、古い茶陶の家の長に拠る「現代的・彫刻的造形」の茶碗を売る事になった事と、千氏NY再来訪の件を聞き及んだからであった。また今回は、氏が考案した立礼卓「天遊卓(てんゆうじょく)」を使う事に因って、21世紀と為った今、「日本人でも、外国人でも」お茶に親しんで貰える空間を提案したい、との氏のお考えとも一致したからである。

さて、筆者による講師紹介も終わり、早速千氏のレクチャーが始まった。

千氏に拠るレクチャーは、本当にいつも判り易く、観衆の心をいとも容易く掴む。「文化庁文化交流使」として滞在された2008−9年の、NYを中心とした活動のお話や、海外に出たからこそ感じた「お茶」の未来、また「天遊卓」の誕生秘話等、興味深い話ばかり…流石であった。

レクチャーが終わると、「天遊卓」を使用しての御点前のデモンストレーションに移る。

最初に、実際に「天遊卓」に座ってデモンストレーションに参加して頂く、「客」を紹介する。先ずはNY、いやアメリカ随一の茶人且つコレクターでもある、ペギー&ディック・ダンジガー夫妻で、旦那さんが正客となり、奥様がお詰。そして次客には、現代美術家杉本博司氏。そしてもう1人の「スペシャル・ゲスト」は、現代美術家森万里子さんの娘さんのまなちゃん、9歳であった。

千氏が主茶碗を持ち入場、静けさの中御点前がそろそろと始まる。主茶碗は、今年の正月に武者小路千家に納められた、当代楽吉左衛門造の新作赤楽茶碗。日本から千氏と共に到来した物である。また、千氏のデモンストレーションに於いては、御点前中は一切「解説」が無い。

これは観衆に、自分たちも実際に茶事に参加しているのだ、と云う気持ちを持たせるのには最適な方法である。千氏が服加減を尋ね、正客のダンジガー氏が一言「美味しい!」と呟くと、会場からも溜息と笑いが洩れる。緊張の中にも一瞬の親和感…こういう所が、「茶」の素晴しい所以だ。

その後は現代作家作の茶碗が次々と出され、まなちゃんもしっかりとお菓子とお茶を飲み、お茶は無事終了。最後は千氏に拠る使用道具(千氏作の茶杓も登場!)の解説で、「デモンストレイティング・レクチャー」は締め括られた。

レクチャー終了後は参加者への道具拝見、その時に杉本氏が「茶杓造り」を宣言、いやいやこれは楽しみである!(多分本気だと思いますが…笑)。時を移しては、隣室にて「コーヒー・レセプション」を開催。多くの人が残り、親睦を深めていた。

何しろ今回のイヴェントは大成功で、多くの方からこのイヴェントに関する賛辞を頂き、これも千宗屋氏、そしてNY随縁会の皆様のお蔭である…本当に有難う御座いました!

そしてもう一点、筆者が何よりも嬉しかったのは、NYでお茶を習う方々が、「流派」を問わずに参加して頂いた事だ。以前にも此処で述べたが、NYと云う場所では「ショバ争い」の様な事は余りそぐわない、と筆者は考えている。先ず日本人として、日本の代表文化である「茶道」を広め、その「精神性と美」を以てして、「日本国」や「日本人」、「日本文化」を外国の人に知って頂く事が最重要課題で有る筈で、「流派」はその後である。

「能」もそうだと思うが、21世紀に於ける日本の伝統文化の伝承には、広い視野を持った「スポークスマン」が必要であり、勿論闇雲に「大衆化」すると云う意味では決して無いが、そう云った人に「存続」が懸かっていると云っても、過言では無いと思う。その意味で千宗屋氏の様な方は本当に重要であると思うし、その責務を確実に果たされていると、この日も非常に強く感じたのだった。

夜は当社開催の「ASIA WEEK レセプション」で、会場は非常に「良い雰囲気」の混雑。今週のセールに期待が出る。レセプションを切り上げた後は、会社の裏の四川料理店で、「随縁会」の皆さんと楽しい会食。偶然にも隣のテーブルには大コレクターのW氏と、そのガールフレンドのJ女史、M美術館のW氏とF美術館のY女史が、そして2つ先のテーブルには、B美術館のP女史が。お互いニッコリ挨拶するが、声は段々低くなる(笑)…レセプション後の裏の中華料理店とは、何と危険極まりない事か(笑)。

そこで解散と思いきや、「せっかくだから」カラオケに行こうとの話になり(笑)、千氏を含む数名で夜中過ぎ迄、そして「PERFUME」(因みに筆者は、「ワンルーム」より「チョコレート」の「ディスコ」の方が好きです…)から「同期の桜」迄、皆で大熱唱(笑)。ストレス発散に一役も二役も買ったのだった。

さて、下見会も大詰め…。頑張らねば!!


追信:因みにこのデモンストレーションの様子は、日本時間25日(木)の朝日新聞夕刊、千宗屋氏の連載記事に掲載予定との事。日本の皆さん、チェキッ!