「世界最高価格」への期待高まる!:「印象派・近代絵画」下見会。

先週末、タイムズ・スクエアでの爆弾騒ぎが有ったが、そんな不穏な雰囲気の中「胸焼け」をおして(笑)、サザビーズとクリスティーズでの「印象派・近代絵画セール」の下見会に足を運んだ。

それにつけても、土曜の午後のタイムズ・スクエアでの爆発物(自動車)発見は、背筋が冷たくなる。最も人が多い時帯で有るし、ブルームバーグや市警本部長が云う様に、正しく「VERY LUCKY」で有った。それでも今朝の出社時には(毎朝其処を通るのだが)、旅行者もノンビリ朝食を取っているし、我々も何時もと変わらない…「慣れ」とは恐ろしい物だ。

さて、先ずはサザビーズ。会場は多くの人で賑わってはいたが、作品は正直云ってパッとしない。トップ・ロットのマティス、「Bouquet de Fleurs pour le Quatorze Juillet(7月14日の為の花束)」(1800-2500万ドル:約16億7000万-23億2000万円)は、綺麗な絵では有るが、とてもこんな高額な作品とは思えない。イヴ・サン・ローラン・セールでの、マティスのセール結果を踏まえているのだろうが…。

その他個人的に気に入った作品は、カンディンスキーの「Vertiefete Regung(深められた衝動)」(450-650万ドル:約4億1800万-6億400万円)、それとシーレの男性のバック・ヌード等が有った位で、翌週にオークションに掛けられる予定の、一緒に展示して有ったウォーホルの巨大セルフ・ポートレイトやロスコ等に、専ら眼が行ってしまった。しかしサザビーズの会場では、懐かしい顔の数々…英国人ジェームズやサイモン、ベルギー人のクリストフ、筆者の大顧客でも有るB氏等と会う事が出来たので、行った甲斐は有ったのだった(笑)。

さてサザビーズを後にし、今度はクリスティーズへ。こちらは、2日前のダイアリーでも述べた(拙ダイアリー:「青の魂」参照)「ブロディ・コレクション」を含む、非常に強力なラインナップである。先ず「ブロディ・コレクション」は、何しろオークション史上「世界最高価格更新」の期待が掛かるピカソ(恐らく1億ドルを超えるだろう!)、もう溜息が出るほど素晴しい「Grand Tete Mince(薄い頭部)」(1955年:2500-3500万ドル:約23億2000万-32億5000万円)と「Le Chat(猫)」(1955年:1200-1800万ドル:約11億1000万-16億7000万円)の2点のジャコメッティ、それとマティスの「Nu au Cossin Bleu(青いクッションのヌード)」(2000-3000万ドル:約18億6000万-28億円)等、逸品揃い。

またレギュラーの「イヴニング」の方も、これまた恐るべきジャコメッティの傑作「Le Main(手)」(1000-1500万ドル:約9億3000万-13億9000万円)や、ムンクの大作「Fertility(豊饒)」(2500-3500万ドル:約23億2000万-32億5000万円)等など、こちらも傑作揃いである。

このジャコメッティの「手」(実際は「腕から手にかけて」なのだが)は、余りに繊細で、「触れなば折らん」と云った、美しくも素晴しい彫刻である…マジ、欲しい(笑)。またムンク作品は、一見普通の「ハーヴェスト・シーン」の様にも見えるが、紫の木の幹、農民カップルの鼻や口、そして眼球の無い顔等、本当に不気味な「豊饒」絵画であるが、ムンク「此処に有りき」の作品と云えよう。

何れにしても、今回はクリスティーズの「圧勝」が予想される…そして、ピカソ「Nude, Green Laevs and Bust」に因る、「世界新記録更新」にも期待しよう!