「現代美術下見会」始まる…しかし、それだけでは無い!

ピカソの新記録の余韻の中、現代美術の下見会が、各オークションハウスで一斉に始まっている。

サザビーズ、フィリップスは追って記すが、クリスティーズでは以前此処に記した、「マイケル・クライトン・コレクション」(拙ダイアリー:「或る作家の眼」参照)の31点を始め、数々の名品が目白押しだ。

クライトン」では、何しろジャスパーの「Flag」(1000ー1500万ドル:約9億4000万ー14億1000万円)が大目玉であるが、その他にもラウシェンバーグの名品2点「Trapeze(ブランコ)」(500-700万ドル:約4億7000万ー6億5800万円)と「Studio Painting」(600-900万ドル:約5億6000万ー8億4000万円)、ピカソも「Femme a la Robe Rose(バラ色の服の女)」(1917:550-750万ドル:約5億1000万ー7億円)と「Femme et Fillettes(女と少女達」(1961:同左)の2点が有り、その他クーンズ、ウォーホル、マーティン、プリンス、リキテンシュタイン等、豪華なラインナップだ。

VARIOUS OWNER EVENINGの方は49点の出品で、目玉はウォーホルの2点「Silver Liz」(1000-1500万ドル)と「Holly Solomon」(700-1200万ドル:約6億5000万ー10億円)、そしてこの2月ロンドンで大ブレークした、イヴ・クラインの「Anthropométrie "Le Buffle" (ANT 93)(人体測定『水牛』)」(800-1200万ドル:約7億5000万ー10億円)等など、パートIIも含め見所満載である。

それと是非此処に記しておきたいのが、来週火曜までのこの下見会の期間中「だけ」展示されている、「現代美術では無い『名品2点』」の「必見」作品の事で有る。

それは、来月ロンドンで開催される「印象派・近代絵画イヴニング・セール」に出品される、「キャッツ」や「オペラ座の怪人」の作曲家として知られるアンドリュー・ロイド・ウェバーの財団所蔵、ピカソの青の時代(1903)の作品「アンジェル・フェルナンデス・ド・ソトの肖像(或いは『アブサンを飲む男』)」と、7月の「オールドマスター・イヴニング・セール」に出品される「スペンサー家」のルーベンス、「A Commander Being Armed for Battle(戦の為に武装する将軍)」(1613-14)の、2作品である。

ピカソエスティメイトは、3000万ー4000万英ポンド(約40億ー54億円)、ルーベンスは800-1200万英ポンド(約10億ー16億円)で、両作品とも非常に興味深い「来歴」を持つ逸品。また「ウェバー・ピカソ」は、数年前に一度、「ナチ略奪絵画」の疑いが有ると云う事で、セールが直前に為って中止になった経緯が有るのだが、裁判の結果、今回のセールが可能となった。またこの作品の売上金は、ウェバー財団に拠り寄附されるそうである。

現代美術と共に楽しむ、「オールドマスター」と「ピカソ」の名品。見逃せませんぞ!