「クリスティーズ圧勝」:「印象派・近代絵画」イヴニング・セール@Christie's & Sotheby's.

両オークションハウスの「イヴニング・セール」が終了した。

その両日の昼には、「ギリシャ」と「ユーロ」に対する不安に拠って、NY株がかなり下落したので心配しつつも、今回の「イヴニング」は、マーケットは健在なのか、と云うか「順調に回復」をしているかどうかを占う、大事なセールであった。

先ず初日のクリスティーズだが、昨日此処に記した様に「ブロディ・コレクション」は完売、通常のVARIOUS OWNERSを含めると、69点中56点売れ、総額3億3554万8000ドル(約315億4000万円)を一晩で売り上げた。トップ・ロットは勿論ピカソで、2位はジャコメッティの「薄い頭部」の5328万2500ドル(約50億800万円)、3位もジャコメッティの「手」(2584万2500ドル:約24億2800万円)であった。

全作品69点中「1000万ドル以上」で売れたのは9点で、アーティスト・レコードもピカソとブラックの2作家に出たが、それよりも特筆すべきは、トップ・テン・リストの中にピカソが4点(1,5,7,10位)、ジャコメッティが3点(2,3,4位)入って居る事だろう。昨日も此処に記したが、この両アーティストのマーケットでの強さには、21世紀も10年経った今となっては、「近・現代美術」と云うよりも「20世紀美術」と云う括りで、アート・ヒストリーを考えねばならない必然性を強く感じる。

更にこの事は、今を然る事90年代後半に、アメリカ人の超有名現代美術ディーラーと会った時に、彼が「もう20世紀も終わりなのだから、これからは21世紀の美術史の教科書に、誰が『20世紀美術の代表作家』として残るのかを、早くそして正確に検証しなければならない。」と筆者に語った事を、突然思い出させた。

そして、昨晩のサザビーズである。58点中51点売れ、売り上げ総額は1億9569万7000ドル(約184億円)。トップ・ロットは、下見会の時に「高すぎる」と思ったマティスで、2864万2500ドル(約27億円)、2位はモネで1520万2500ドル(約14億2800万円)、3位はモディリアーニで1380万2500ドル(約13億円)、1000万ドル以上で売れた作品は計4点であった。

こう云った結果から見えて来るのは、マーケットがアーティスト名や、クオリティに対する価格の正当性に対して非常に「ピッキー」で有る事と、不景気の時には「クラシック」な作品が好まれ易い事、そして最高品質作品は以前よりもより良く売れる事、等だろうか…この辺は未だ「アート不景気」状態の名残であろうが、オークション・ハウスは勿論その辺はしっかり考えて来ているので、マーケットは堅調に回復していると云えると思う。

さぁ、来週は「現代美術」…此方の方がマーケットの将来を占えるかも知れない。