「随縁茶会」。

前夜、カラオケで1日を締め括り、興奮していた事と時差ボケの為に、帰宅後3時頃迄眠れなかった。

因って、明くる日曜日の朝、「武者小路千家東京稽古場」の在る千駄木に向かう地下鉄内で、「恥をかかない様に!」(笑)とニューヨークに居る妻から送られて来た、「濃茶の飲み方:裏(裏千家の事)」と題されたメールを、必死に読んで覚えようとしても「上の空」だった…大丈夫だろうか(笑)。
そう昨日は、武者小路千家家元後嗣の千宗屋氏が主を務める、「第一回随縁茶会」へと足を運んだのだった。

この「随縁茶会」は、若宗匠ご本人の斎号でも有り、茶の本質を一言で表す「随縁」を会名に冠する事に拠り、茶の湯を介して縁有る人々(そして千氏に縁の有る、流儀を超えた方々)が出会い、交流を深める事を最大の目的とする、と云うものだ。

昨晩「金田中」で大活躍だったギタリスト、S君と駅で待ち合わせ、「てくてく」歩いて稽古場に到着。待合で待っていると、続々と知り合いが到着し、挨拶頻り。筆者が入る組には、アーティストのMさん、PギャラリーのTさん、陶芸家のNさん等のニューヨーク関係者も多く、「外人枠」(笑)としては大層心強い。

今回は薄茶、濃茶そして点心が振る舞われるが、1日数組が行われる為、我々の組は先ず「薄茶」席へと案内された…途中廊下に、山口長男が掛かり、眼を惹いたのも一興。

寄付に入ると、白隠さんの軸が掛かっており、皆で「何と読むのだろう?」等と楽しく話す…この様にして、客達が親密度を徐々に増して行く所も、「茶」の素晴らしい点だ。

席入し、気軽な感じであっさりと薄茶を頂く。道具を簡単に記しておけば、床は伝雪村「瀧図」(波濤部分が雪村風か)、花入が砂張釣舟、左入赤楽、若自作の茶杓「一清風」等等。

終了後中立して、暫し休憩。その間もライターのM女史、碧雲会の方々等、偶然必然の知人友人に出会ったりもして、それこそ「縁」を感じている内に、いよいよ「濃茶」席へ。

水を打った露地を歩き、席入。そして床を拝見に行くと、見覚えの有る「一行書」が…。席に付くと、亭主の千氏が登場しご挨拶され、そろそろと濃茶点前が始まった。

「妻からのメール」を必死に思い出しながら、お菓子を頂き、千氏のお点前を観る。何時も思うのだが、千氏の無駄の無い動きは、修練された者だけが持つ「秀でたアスリート感」がある。そしてその動きは、客達の息遣い、視線、興奮を統一し、包み込むのだ。

時節にピッタリと合った、新旧、また「縁」有って外国より到来したモノ迄をも含んだ、千氏らしい道具組で、美味しい濃茶を頂く…至福の一時であった。

濃茶席を出て、立礼点心を頂き、皆でリラックス。此処でも、元某民放局アナのFさん等、久々にお会いする方々との「ご縁」頻り。

そして筆者の「随縁茶会」は、無事終了。帰り支度をし玄関を出ると、外は一雨有ったかの様に濡れていた。
「縁」に充ち溢れ、そして何処と無くサッパリとした気分を亭主に感謝しながら門を出る時、ふと心の中では、本席の「一行」が浮かんでいた…。

「雨後青山青転青(うごせいざん あおうたたあおし)」。

良縁に出逢い、それに随う程自分も成長する、と云う意味なのかも知れない。

しっとりとした気分、の茶会で有った。