「男同士三人会」@神楽坂。

さて昨日から、「モノ探し」が愈々本格化。

何人かの顧客に会ったが、良い作品は見つからず、ちょっとガックリ。しかし、そんな事でガッカリしていても仕方がないので、移動中の時間を使い、メゾン・エルメスで開催中の「市井の山居/細川護煕展」へ。

会場では氏の茶陶作品、最近始められたと云う油絵、そして藤森照信氏設計の「草庵 亜美庵杜」が「市井の山居」として、外露地、内露地と共に、インスタレーションとして展示されている…ギャラリー内の「草庵」は、都会のオアシスの様相を呈していた。

そして夜は、神楽坂に在る弟の和食店「来経(きふ)」にて、作家平野啓一郎氏と、ジャズ評論家の小川隆夫氏と食事。

店に着くと、暫くして平野さんが登場、旧交を暖める。今回もお土産として、平野氏監修・選挙・執筆のアルバム「ショパン伝説のラスト・コンサート in Paris 1848.2.16 葬送II」を頂戴した。

このアルバムはタイトルに有る通り、平野氏の傑作長篇「葬送」に100ページに渡って細密に描写されている、ショパンのパリでの最後のコンサートを再現したもので、フランソワ、ガヴリーロフ、バレンボイム、オールソン等が演奏する、モーツァルトショパンの名曲で構成されている。

見ると全22曲も入っているので、驚いて平野さんに「一回のコンサートで、こんなに弾いたんですか?」と尋ねると、その頃ショパンの体調は既に悪化していたので、ソナタ等の長い曲の演奏は難しかっただろうが、資料に拠ると短目の曲を休み休み弾いたらしい、との事だった。

「葬送」中でも「ラスト・コンサート」の場面は、著者の力もかなり入り、筆者も大興奮で読んだ箇所なので、このアルバムを聴きながら再読してみようと思う。

さて一方、小川さんとは初対面であったが、最近氏の著者「ブルーノート・ジャケ裏の真実」を読んだ事と、「マイルス・デイヴィスとは誰か」を小川氏と共著した平野さんが、今でも日本とニューヨークを往復されている氏を、筆者に紹介がてら飯でも、と云う企画であったのだ。

お話すると、小川さんとは共通の友人も有ったりしてり、初対面にも関わらず勝手に心安くさせて頂いてしまったが、小川さんは何しろフランクで、お若い方であった。そして昔のニューヨークの話や、伝説のジャズメン達、特にマイルス・デイヴィスに関する氏のお話は、最高に面白く、思わず身を乗り出す程だった!

小川さんがマイルスとの会話中に、マイルスの名曲で「口癖」とも云われている、「So what?」と云われた話(マジ羨ましい!云われてみたい。)や、マイルスと一緒に部屋に居た時に、2人ともお腹が空いたので、小川さんが角のデリに買い物に出たのだが、途中で雨が降り出してしまった…すると、マイルスが小川さんの分の傘を持って迎えに来てくれた話等々、本当に興味深かった。因みにこの逸話は、先日亡くなった荒川修作と、マルセル・デュシャンの邂逅話を彷彿とさせる…マイルスとデュシャン、双方共一流アーティストらしい、暖かいエピソードだ。

何しろ三世代に渡る「男三人」が、食べながら喋りまくり、話題も政治(何処へ行くニッポン!)、社会(自殺の増加と抑止)、宗教(ミュージシャンの宗教志向)から、音楽(我々が、如何にミュージシャンに為りたかった事か!)、映画(「ロッキー」と「レスラー」は、泣ける作品である)、ゲイ(何故ジャズと建築分野には、ゲイが少ないのか?また、何故我々は、こんなにゲイにモテるのか?:笑)、芸能(「石原軍団」とは何か?)、アート(ウォーホルやマイルスの絵画)、スポーツ(プロレス万歳!)迄、縦横無尽、門外不出、笑い満載、怒涛の「4時間超」であった。

しかし30、40、50代の「男同士三人会」…ゲイの話題が出るのも当然か…(笑)。
愉快な、ただ愉快な一夜であった。