「出品チラリズム」:9月の日本・韓国美術オークション。

昨日は先ず、コーネル大学に研修に来た東京の某有名ホテル勤務のSさんと、ウエスト・ヴィレッジの超旨いイタリアン「L」で食事。

「帆立のカルパッチョ」「ヨーグルト、ピスタチオとローステッド・ビーツ」「イカスミで作ったフェットチーネのスパイシー・ボンゴレ」「マッシュルームのラグー・パスタ」等を頂き、デザートは「オリーヴ・オイル・ケーキ」と「ココナッツ・セミフレッド」…大満足であった。

その後、場所を大のお気に入り、グラマシー・パーク・ホテルのバーに移し、建築家S、ピアニストH,そして妻が合流。夜中まで盛り上がる。このグラマシーのバーは、安くは無いが本当に雰囲気が良くて、カッコ良い。日本にこう云う、重厚且つ新しい感覚の店は中々無く、客層を観ても一味違う…Sさんも楽しまれた様で一安心であった。

さて9月のオークションのカタログ作りも、スタッフの眼が三角に為ってくると共に佳境に入ってきた。以前にも少し此処で述べたが(拙ダイアリー「LOTOS CLUB」参照)、今回はもう少し詳しく、来る9月15日に開催予定の「日本・韓国美術オークション」の内容を「チラリズム」。

今回は、幾つかの「カテゴリー」をプロモートする。先ず「浮世絵版画」。此処何年か浮世絵版画が非常に出辛く、コレクター達もイライラして居ただろうが、やっと少しウブいモノが出て来た。目玉は写楽の「四代目岩井半四郎の乳人重の井」、その他今NYでも人気の「奇想の絵師」国芳の三枚続の数々、川瀬巴水伊東深水、橋口五葉等の新版画も有り、良いラインナップとなっている。

次に控えしは「桃山」。先ずは狩野孝信に拠る襖絵、「中国仙人・唐子図」紙本金地著色・六面。この作品は細川家の依頼に拠って孝信が龍安寺の為に描いたもので、制作当時の「ツレ」は、現在メトロポリタン美術館とシアトル美術館に分蔵されている。そしてこの作品は、筆者が2000年に売った作品なのだが、何のご縁か10年振りにマーケットに戻って来た事に為る。そして「金銅六角桐菊透文吊灯篭」。これは観た者にしか判らない「スゴイ」存在感の名品で、もしかしたら「聚楽第」に有った物では無いかと睨んでいる。京博の「金色のかざり」展に類例が載っているのだが、クオリティは全くと云って良い程に異なり、この作品のスペシャルな感じが良く判る…桃山金工、いや日本金工の白眉と云えよう。

その他、柿右衛門、鍋島、マスプロ美術館旧蔵の古九谷大皿の名品を含む日本陶磁器、「清水寺参詣図」等の初期風俗画や萬野美術館旧蔵品を含む屏風群、能面、素晴しいラインナップの甲冑、現代の作品も篠田桃紅の屏風、斉藤義重や深見陶治の大きな青磁彫刻、経筒や千体仏等の仏教美術に、そしてイチオシの「MEIJI:明治工芸」である。

その「MEIJI」セクションでは、七宝では大名品を含む4点の並河靖之や涛川惣助作品、安藤七宝、金工では伝鈴木長吉の迫力抜群の巨大且つ面白い来歴の有るペアの象嵌壺や駒井、焼物では真葛香山や「超絶ノイジー」且つ質の高い藪明山や錦光山等の薩摩焼、漆芸では象彦の最高級レヴェルの書棚、その他象牙工芸迄、これでもかの「MEIJI」尽くしなのである。この企画は、「これから明治が来る!」(実は外国ではもうとっくに来ているのだが…)と云う実感と予感の賜物で有るが、日本美術史家の中でも山下裕二先生の様に、既に「明治」に目を付けられている方もいらっしゃるので、是非皆で協力して「ジャパニーズ・テクニック・アズ・ナンバー・ワン」である「明治ブーム」を起こしたいと思っているのだが、どうだろうか…。

その他、儒教美術が中心の「李朝絵画」個人コレクションを含む、韓国美術セクションも充実。
あぁ、早くカタログを校了して、休みたい(笑)。