赤坂の数寄屋、神楽坂の風。

ホントに暑い。溶ける。茹だる。そして株は9000円を割り、海外市場では円は83円台に…。

そんな酷い陽気だった昨日は、顧客回りの中、昼は某代議士秘書のG氏、憂国同士K氏とランチ。

場所は、赤坂の数寄屋造りの料亭「K」。挨拶に来た女将に拠ると、此処は赤坂にもう六軒しか残っていない料亭の一軒だそうで(因みに、嘗て300人居た芸者も、今はたった30人だそうだ)、しかし流石に手入れが行き届いており、堂本印象や棟方志功、唐三彩等の美術品も各間に見え、「政治の舞台」としての風格が垣間見える。

すき焼き御膳を頂きながら、「日本文化を、如何に今一度国民に浸透させ継承させるか」、そして「我が国独自の、その文化的特性を如何に政治経済に反映させるか」を議論する。ドーキンスの「ミーム」や文化進化論、ホモ・サピエンス生来の動物学的考察、人類行動学等を絡めながら、心理科学系のバックグラウンドを持つG氏と、非常に刺激的な時間を過ごさせて頂いた。
ランチ後は、また顧客回り。昨日の顧客は老舗骨董屋さんが多く、付き合いも長い人達なので気も楽なのだが、その途中、某骨董屋さんでは、分割払いの返済を。後少しで「『女神様』がオレのモノになる!」という段階迄支払いが済んで来たので、その「女神様」が何時もより愛おしく見えるのも仕方無いだろう…あぁ、こんな日ばかりなら良いのだが(笑)。

そして夜は、何時も歌舞伎でお世話になっている松竹制作部のN氏、筆者が連載中の講談社「セオリー」担当編集者のA氏と、男3人で神楽坂「来経」にて食事。

N氏とA氏は初対面だが、A氏が歌舞伎通だと云う事も有ってアレンジ、この楽しい会が実現したのだった。初っぱなから、新橋演舞場の「四谷怪談」、勘太郎の素晴らしい「お岩」の話題で盛り上がる。その後、海老蔵を誰が如何に教育するか(今は大和屋だけが可能らしい)、海老蔵のライヴァルに為れそうなのは誰か(協議の結果、ダークホース染五郎に決定!)、クドカンの舞台は歌舞伎と呼べるのか、はたまた呼ぶべきではないのか等、大盛り上り。

季節の食材を楽しみながら、話は「エビマオ」結婚裏話や「歌舞伎の未来」へと移る。笑ったのは、「エビマオ」が喧嘩した時の話で、「アナタは、何でそんなにワガママなのよ!」とマオがエビに云うと、「キミは何で、オレの長所を短所みたいに云うんだ?」とエビが返したそうな…話が中々噛み合わないんだそうである(笑)。

話からすると、かなりの舞台を観て来ているA氏の歌舞伎歴は、団十郎襲名前迄に遡り、贔屓は先代仁左衛門だと云う…シブイ。玉三郎の「次の立女形」は?と云う話では、期待を込めて「菊之助」、獅童は?と云えば、「鍛えればマシになるかも」、松禄は「年取ってから」等、3人で激論…あっという間の「傾いた(かぶいた)」、3時間で有った(笑)。

食事を終え外に出て、駅に向かって歩き出したら、思いがけず、ほんの少し涼しい風が、神楽坂の裏道を歩く我々の頬を撫でて通り過ぎて行った。

思えば「立秋」など、疾うに過ぎていた…9月はもう目の前である。