"The World of Khubilai Khan-Chinese Art in the Yuan Dynasty"@メトロポリタン美術館。

ニューヨークも大分寒くなってきた。

さてこの間の日曜日は、午後から仲の良い友人のC&Rのカップルと「The Mark Restaurant」ブランチ。「The Mark」は元々有名なホテルだったのだが、現在は超高級コンドミニアムとなっており(14億円位するらしい!)、嘗て其処に在った有名且つ粋だったバーも、今は「ジャン・ジョルジュ」の新しいレストランと化したのである。

スゴく美味しいマフィンから始まり、ニューヨーク美術界ゴシップやRの最近の購入作品の話で盛り上がりながら、「トリュフのピッツァ」「オニオン・キッシュ」を皆で、その後は「エッグ・ベネディクト」「トリュフ・チーズ・バーガー」を勘太郎妻とシェアして食す…正直、かなり旨かった!

楽しいブランチの後、CとRとは此処で別れ、散歩がてら9月末から始まった展覧会「The World of Khubilai Khan-Chinese Art in the Yuan Dynasty」を観に、メトロポリタン美術館へ。

「元時代」の美術と云えば、即頭に浮かぶのは「染付」であるが、この展覧会には彫刻や金工、仏画や染織迄出展されており、何しろ非常に勉強になった。勉強にはなったが、個人的にはより洗練されている宋代の美術の方が好みで有り、宋時代の美術品が全ての分野に於いて勝っている、と云わねばなるまい。

が、その展示作品の中でも、例えば絵画で云えば、会場を入った最初の展示品である台北故宮博物院所蔵の「フビライ・ハンとその王妃の肖像」や、14世紀の「水月観音図」(ネルソン・アトキンス美術館蔵)と、唐棣が王維の詩を以て描いた「月下読経図」の両水墨画等は、かなりクオリティの高い素晴しい作品である。また、山梨の天目山栖雲寺蔵の「マニ教預言者に扮したイエス・キリスト像(日本では『虚空蔵菩薩図』となっている)」と云う14世紀の仏画、これは一見所謂普通の「菩薩坐像」なのだが、何と「十字架」を持ち衣服に「マニ教」の印が認められると云う、驚くべき作品。この作品と、滋賀県竹生島宝厳寺蔵の、夢の様に美しい南宋仏画の大名品「北斗九星像図」は、この展覧会の中でも必見中の必見作品である!

その他にも十字架をあしらった「ネストリア教」の石瓦や、木製の柄の付いた青銅のクロス等、本当に珍しい作品も有って眼を惹くのだが、何と云ってもこの展覧会のスターは?と問われれば、2005年6月にクリスティーズ・ロンドンに於いて「1568万8000英ポンド」で売却され、今でも西洋のオークションに於いて、如何なるアジア美術品の中でも史上世界最高価格の記録を持つ、「元染付鬼谷子図壺」と答えるに違いない。現在個人所有であるこの作品は、そのコバルト・ブルーの発色の良さが比類無く美しく、絵のクオリティも素晴しい。また画題もこの時代の陶磁器としては極めて稀で、そして何しろその「状態」が完璧なのである…何度観ても美しい作品であった。

「元」展の帰りには、日本美術ギャラリーに寄って「神像」や「春日曼荼羅」等の垂迹美術を楽しんだのだが、観た後何と無く気分が落ち着いたのは、やはり「こう見えても」日本人だからなのだろうか…(笑)。

そして昨日の月曜日は、アムトラックに乗って再び「日帰り出張」…ルイ・カーンがデザインした家に住む、かなり風変わりなコレクターを訪ねる。彼のコレクションは明治のブロンズ・金工が中心だが、中々素晴しい作品も有り行った甲斐も有ったと云う物だ。

帰ニューヨーク後の晩は、日本からのゲストの作家夫人Hさんを囲んで、ウエスト・ヴィレッジの「V」でディナー。総勢9人でワイワイと楽しく、P王子オススメのワインや、役者の様な、変わったイタリア人ウエイターの勧める「オーセンティック・イタリアン」を堪能した。

しかし、それに付けても、「北斗九星図」は素晴しい…ウーム、欲しいっ!って絶対無理なんだよな…(笑)。