再見、香港!

一昨日の晩は、アジア美術部門の「スタッフ・ディナー」。

クリスティーズ・アジア会長のフランソワを始め、アジア美術部門のスタッフ、総勢40人以上が勢揃いしての「中華晩餐」は、壮観である!

出て来る料理は、海鮮と野菜中心でどれもサッパリ…セールの成績が良かった事を祝いながらの中国人同僚達の呑み比べや、何回もの乾杯の音頭を楽しみながら、最後のデザート「Eight Happiness Rice」迄、十二分に堪能した。

そして香港滞在最終日の昨日は、朝10時から夕方5時過ぎ迄ビッチリと、某有名ホテルの会議室を借り切っての「SENIOR ASIAN SPECIALIST CONFERENCE」に参加。
この会議は、中国、シンガポール、イギリス、ブラジル、フランス、スイス、アメリカ、台湾、そして日本人である筆者を含めた、国籍も多岐に渡る、アジア美術部門のシニア・スペシャリストとビジネス・マネージャー達総勢30名程が、ポテンシャル・ビジネスや問題点等を徹底的に議論する「OFF SITE」(社外で行う)ミーティングで、企業秘密の為此処で詳しくは記せないのだが、非常に有意義な会議であった。

夜は、世界的に知られた中国人グルメの同僚K(と云っても、社内での彼の地位は、筆者とは比べ物に為らない程高いのだが)と、香港での最後の晩餐。

筆者が今回の滞在中に何処に食べに行ったかを尋ねた末に、忙しい中態々時間を作ってくれたKに来る様に云われた店は、灣仔にある「Y」と云う海鮮地方料理店であった。

Kの顔を見ただけで出される、「タンタニーズ」と呼ばれる料理の数々は、辛いが非常にスッキリとしていて、信じられない位に旨い!アサリ、白身魚の唐揚げ、ガーリックと唐辛子のフレークを揚げたモノでまぶされた巨大な茹でエビ、そして、そのガーリック&唐辛子・ブレークをお粥に掛けて食す…余りの「パラダイス」に、お互いお粥をお代わりしてしまった!食べ終わってKが云うには、「孫、これで君は、今香港で最も美味しい三軒の店を制覇した!」らしい…持つべきモノは、現地のグルメ友人である(笑)。

大満足の食事の後は、忙しいKと別れ、他の同僚4人が呑んでいると云う、オフィス街と港を見渡すビルの25階に在る大人気のバー、「S」へ。

素晴らしい気候と、林立するビルのイルミネーションが美しい、25階のバルコニーは最高のロケーションで、多くの客で盛り上がっている。そして小一時間「S」で飲んだ後は、皆で30年代に建てられた「香港外国人記者クラブ」のバーへ行き、懐かしい英国時代の雰囲気を楽しんだ。

そして1980、1990、2000の各年代にこの香港を訪れ、今回2年振りに来て最も強く感じた事は、もう全てに於いて、日本とは「勢い」が異なると云う事だ。

「国力」と一言で云ってしまえばそれ迄だが、オークションのみならず、同じく巨大コンヴェンション・センターで、入れ替わり立ち替わり開催されている数々のフェアや展示会、その熱気溢れる運営側と来場者の数たるやもう恐るべしで、圧倒されるばかりであった。
こう云う光景を目の当たりにすると、国力・民力の差が歴然の今の日本は、此の侭では中国にいとも簡単に呑み込まれてしまうのでは無いだろうか…との危惧が現実味を帯びて来る。

例えば、全く洒落に為らない喩えだが、或る日中国人(若しくは韓国人)が九州に上陸し旗を立て、「此処は元来、中国の土地だ」と云い始めたら、日本国政府は一体どう対応するつもりなのだろう…自衛隊を出動させ、「自衛」出来る程の勇気と根性が、今の政権に有るのだろうか!

政府と云うモノは、「国民の命」と「国土」を守る事が究極の仕事の筈なのに、今の我国政府は、そんな根本的な所に措いてすら、全く以て緊張感が欠如しているとしか思えない。

それと共に、この分で行くと、中国美術品が日本から消え去る日も近いだろう。「数」の話をすれば、美術品等は、富の少ない方から多い方に流れるのが当然なのだが、こう云った現象は、我が国が長い歴史を以て培った(貯めた)文化を、簡単に手放してしまうと云う、象徴的な国家文化的弱体化の露呈に他ならない。

その反面、中国はと云うと、「文革」の反省と「歴史の証の帰還」に勤しみ、そして帰国させ手中にした自国の美術品は、権力や富の象徴と化すのだろう。しかし、何時の日か「盛者必衰の理を表す」日も来る、と云う事も有る…。

今回の台北・香港での滞在は筆者に取って、余りにも衝撃的且つ教育的であった。そしてその想いを胸に、これから母国へ向かう機上の人となる。

再見、香港!