「デトロイトの産業」。

ヴァレンタインの日はと云うと、これまた酷く忙しく、夕方迄必死に働いた後の夜は、妻孝行の為に友人マルコの経営する、ユニオン・スクエアに在る「15 EAST」へ。

「15 EAST」のSUSHI BAR(今でも「寿司バー」と書くのに抵抗が有る…)では、板長のMASAさんが握る至上の刺身・寿司をたらふく頂いた。オーセンティックで非常に旨い数々の握りの最後は、大好物の「トロタク」で〆…大満足であった!そしてその後は、近所に在るマルコのもう一軒の店「Tocqueville」のバーで、マルコと語らいながらの一杯。その間には、奥さんのJo-Annや長い馴染みのウェイターもやって来たりして、誠に楽しい一夜でした。

家に戻ると、筆者からは花とディナーだけだったのとは対照的に、妻からのプレゼントが机の上に…アンティークの「タイプライターのキー」を使ったカフ・リンクス。お互いのイニシャルのアルファベットが使われており、凄く気に入った!

そして昨日は「朝4時」に起き、4時45分の迎えの車に飛び乗って、デトロイトへ。この街へは、「9.11」以来初めて訪れた事になり(拙ダイアリー:「私にとっての『9・11』前・後編」参照)、そして今回は作品査定の仕事だったのだが、しかし今日の話題は、その仕事の合間に行った「Detroit Institue of Arts(デトロイト美術館)」で観た、或るスゴイ「絵画」の事なのだ。

さてその「絵画」とは、実は巨大な「27面のフレスコ壁画」なのだが、作者はメキシコ人画家のディエゴ・リヴェラ、作品タイトル「Detroit Industry(「デトロイトの産業」)」の事である。

この作品は1932-33年に掛けて、デトロイトに滞在したディエゴに拠って制作され、内容はと云うと、デトロイトの主要産業であるフォードの自動車工場をメインに、機械・科学文明の進歩と人間と自然との共存をテーマとした、一大スペクタクル絵画である。この巨大且つ精細な作品を良く観て行くと、当時のデトロイトの王でこの作品のパトロンであったフォードII世自身や日本人技術者、アフリカ人や中国人等の各人種等が画面上に見つけられるが、それは恐らくマルクス信奉者であったディエゴの考える平等主義とプロレタリアート思想に、この作品がかなり裏打ちされている証左では無いだろうか。

また、何処と無くキリストを思わせる様な「幼児」が出て来る事も有るが、このフレスコ画の在る美術館のドームも、キリスト教聖堂を髣髴とさせる雰囲気で、この「デトロイトの産業」は、一種独特な雰囲気を持った「近代産業祭壇画」とでも呼びたい様な、素晴しい力の篭った作品と為っている。

筆者の今迄の浅薄な知識と作品鑑賞経験では、ディエゴ・リヴェラと云う作家は「フリーダ・カーロの連れ合い」と云うイメージが強かったのだが、この作品は只事では無い…ちょっと土下座する勢いの、超素晴しい作品であるので、「必見」である!!

「ディエゴ、あんたは本当にスゴイ!これから、貴方の作品をもっと勉強します!」と、天上の「色男」ディエゴに謝りつつも、筆者は明日の朝日本へと飛ぶ…次回からは再び「ジャパン・アート・ダイアリー」である。