オレの「オレオレ詐欺」体験。

昨日の夜は、ミッドタウンの居酒屋に集まり、日本男子の飲み会。

今回が初会合で(笑)、国家機関関係のA氏、文化事業関係のB氏と筆者の3人、気が付けば「4時間」近くもアートから文化事業、政治から教育迄話し続けていたのであった。喋り捲ったのは云う迄も無く筆者であったが、お二人とも吃驚されていなければ良いが。

さて震災後、笑える話題を中々書けなかったので、偶にはこんな話を(今日の話は、「アート」や「ニューヨーク」とは全く関係無いので、悪しからず)。

それは数日前の事、震災後心配なので、時折ニューヨークから老夫婦2人だけで住んでいる東京の実家に電話をしているのだが、その際母親がこう話し始めたのだった。

「いやね、この間『また』変な電話があったのよ…『あ、オレだけど…』っていきなり云って来て、『オレ、何か風邪引いちゃってさぁ…声変だろ?』って云うのよ。何か変だなと思って、『オレって、誰よ』って聞いたら、『●●●(筆者の本名)だよ、判ってんだろう』て云うんだけど、やっぱり変だなと思って『貴方、今何処から掛けてるの?』って聞いたら、『家だよ、家』って云うの。」
「でね、こいつって思って、『家って、何処の家?貴方、家が幾つも有るでしょ?何処なのか云ってみなさい!』って怒鳴ったら、何と『23区内だよ』だって(笑)!」

そして、この母親からの「笑い話」を聞いて思い出したのは、今でも筆者の心の傷が癒えない、或る「『容疑者』事件」の事である。

話は6-7年前に遡る。当時筆者はゲル妻と結婚したて、未だ新婚の時期で、あの事件が起こったのは、夫婦で日本に来ている最中、そして二ューヨークに帰るホンの1-2日前であった。

朝仕事に出掛け、地下鉄の出口を出ると携帯が鳴り、それは神保町の自宅に居た妻からであった。何かと思って出ると、いきなり妻が興奮した泣きそうな声で「貴方、今何処なの!?痴漢したってホントなの?」と云う。「ハァ?」…云っている意味が判らず、筆者の頭の中は「『?』マーク」だらけである。

「さっきお義母様から電話が有って、孫一が新宿で痴漢して捕まったらしいって云うんだけど、ホントなの!?」
「んな訳、無いだろう!」
「でもお義母様がね、いきなり『孫一は今何処ッ?新宿ッ?』て凄い勢いで聞くから、『あの、孫一サンはさっき仕事に出掛けましたけど…』って云ったら、『えーっ、ヤッパリ…今ね、新宿駅の鉄道公安から電話が掛かって来て、お宅の息子さんが痴漢したので逮捕したって云われた』って云うのよ!もう、私もパニクっちゃって、それに散々貴方に電話したのに出ないから、『やっぱり、そう云う人だったんだ』って思っちゃったのよ。」
「お前ら、『やっぱり』ってどう云う意味なんだ?俺がそんな事する訳無いだろう!」

と道端で怒鳴り散らすと、新婚妻は少し落ち着きを取り返し、「ホントに?ホントなのね?」としつこく聞くので、つくづく自分は、「母親にも新婚の妻にも、信用が無いのだなぁ」と思い「超」落胆したが、気を取り直して母親に電話をする事にした。

「お袋、オレだけど」
「孫一っ、今何処?!」
「って云うか、俺が痴漢なんかする訳無いだろう?」
「いやね、私は息子を信じてますよ…でもね、最近じゃ満員電車でお尻に手が当たっても、訴えられる時代でしょ?それにまさかとは思うけど、貴方もストレスが溜まってるかも知れないし」
「それ、全然信用して無いじゃん…」

「でもね、今だから思うけど、最初から変だったのよ…電話で「息子さんが」としか云わないし、絶対に貴方の名前を言わないの。そうしたら『相手が示談にしても良いと云っているから、今から云う口座にお金を振り込め』って云うのよ…おかしいなと思って、「鉄道公安って仰いますけど、ご担当は何と云う方ですか?」って聞いたら、『それは秘密だ』とか云って答えないから、『こりゃおかしい』と、やっと判った訳よ。」

犯人にとって不幸だったのは、筆者の母親が大学卒業後、当時では数少ない女性の上級国家公務員として、某官庁に勤めていた事だ。母は「こりゃ、今流行の詐欺だ」と何と無く感付いた物の、念の為妻に確認を取ったが、そんな時に限って筆者に連絡が付かず、それで少し慌ててしまったらしい。

そんなこんなで、この時もお金は取られず、唯単に筆者が「痴漢をする人間である」と母親と新婚の妻に思われ、酷く傷付いただけで済んだのだった(笑)。

筆者の実家には、実は過去に筆者名義(笑)で後1回と弟名義で1回、この様な「オレオレ詐欺」「振込み詐欺」の電話が掛かって来た事が有るのだが、その時は筆者も弟も名前の漢字の読み方が間違っていて、直ぐにバレた、全く以って酷いレヴェルの「オレオレ詐欺」だった。が、老夫婦が住んでいて子供が独立している事が判っていて、また何らかの「漢字」での名簿が流失しているのも確かなのだから、恐ろしい。そして震災後の今でも、被災者を装って老人を狙ったこう云う犯罪が多発しているとも聞く。被災者の方も、皆さんも十分注意なさって下さい。

しかし、家族に「痴漢容疑者」と思われたオレって、本当に信用が無いなぁ(笑)…そして、こう云った「『オレ』の心の傷」と「『容疑者扱い』された恨み」は、中々癒えないモノなのである(涙)。