アジア現代美術イヴニング・セール。

昨日、何とも蒸し暑い香港にやって来た。

羽田からのANA便は、ターミナルも大き過ぎず本当に便利で、何と云っても家から30分な所が止められない。

羽田では、旧知のディーラー数人とラウンジや機内でバッタリ会い、マーケット状況に就いての意見交換等をする…日本の美術業界は、想像以上に厳しい様だ。
フライトは、台風が沖縄に来ていたので少し心配したが、特に大きな揺れも無く、無事香港に到着…ホテルにチェック・インし、展覧・オークション会場であるコンヴェンション・センターへと向かった。

今回この巨大なコンプレックスでは、アート・フェアも開催されていて、物凄い人で溢れ返っている…何と云ってもこの人的パワーは凄い。歩いていると、ニューヨークから出展しているFやC等の一流ディーラー達に次々と会い、中国マーケットの重要性を再確認した。

一方クリスティーズはと云えば、前日ワインのセールが完売、700万米ドルを売り上げ、ここ数年の中国人に拠る、強力なワイン・マーケットへの介入と価格高騰を証明をしたばかりで、広大な会場に展覧された宝石、中国絵画や器物、そしてこの晩イヴニング・セールが開催されるアジア現代美術品も、今か今かと「嫁入り先を待ちわびて居る様で有った。

6時を過ぎると、続々とイヴニング・セール出席者が集まり始め、セール開始頃には、会場に入れない客達が外迄溢れる勢い…ニューヨークのディーラーEや、日本からの業者等の顔も見える。

さて肝心のセールはと云うと、今回は幾つか以前と異なる点が有って、先ず藤田嗣治、児島善三郎の「日本近代絵画」が出品されていて、日本円で5千万円程の、今時では中々の価格で落札された事。

それと、800万香港ドル以上のエスティメイトが付いた作品にビッドするには、事前に100万香港ドルの「デポジット」(供託金)が必要と為り、オークションの際も、その事を証明する特製パドルでのみ、ビッドが出来る様に為った事だ。これは、落札者の不払いを防ぐ為の策で、今回が初めての試みで有る。

そして注目の結果はと云うと、総額4億8406万香港ドル(約50億円)を売り上げ、昨年秋よりも74%アップの好成績で有った!

トップ・ロットは趙無極(ザオ・ウーキー)の「2.11.59」で4098万香港ドル(約4億3300万円)、高額2位も趙無極で、3874万香港ドルであった。ザオ・ウーキーは、或る時期迄、世界で通用する唯一の中国人作家だったが、その精神性の高さが、中国本土で見直されて居る様だ。

また日本人作家では、残念ながら村上隆の作品が不落札だったが、奈良美智タカノ綾等は順調に売れ、李禹煥や白南準(これは名品だった!)の韓国勢も、ギリギリでは有ったが何とか売却された。

全体的には、セール中も以前の様な熱狂的な所は無く、最も高額だった2点が趙無極だった事を考えると、景気が落ち着くと安定指向に為ると云う「歴史」を繰り返して居るのかも知れない。

セール後は、顧客と再び死ぬ程旨い中華を堪能…「例のスープ」(拙ダイアリー「『香港美術日誌』其の壱」参照)やフカヒレ等、もう最高で有った!

香港の夜は(昼もだが:笑)、後4晩続く…。