「役者は揃った」か?

昨日は、朝イチで歯医者に行った後、東博で開催中の「特別展 写楽」へ。

会場に着くと、朝から結構な混雑…写楽の人気は、相変わらずで有る。今回の展示は、芝居番付に拠る時系列的歌舞伎演目に沿った物で、他の絵師に拠る同一役者・役名の作品も並べて展示されており、比較対照出来る点が興味深い。

人並みを掻き分けて進みながら、師宣風の歌舞伎遊楽図、歌麿や長喜の作品から観る。そして筆者の見覚えの有る作品も多い、第一期の作品群を鑑賞…云う迄も無いが、観れば観る程、やはり写楽の画業は「第一期」に尽きると感じるのは、決して筆者だけでは無い筈だ。

こうした機会に、写楽全四期を通して観てみると、成る程、間判や武者絵、恵比寿やお多福図等は、第一期の絵師と同じ手に拠るものとは、到底思えなかった事も、此処に記して置こう。
残念だったのは、重文指定されている旧松方コレクションからの作品の状態が余りの良くない事で、例えば「石部金吉」や「おしづ」、「志賀大七」等は、指定されていない状態の良い作品と並ぶ事に因って、見劣りがしてしまった事だ。

偶々隣で観ていたオバサン二人組の、「あらあら、重要文化財の方が汚いわねぇ…どう云う事!」と云う声にも笑ってしまったのだが、来歴や状態等を鑑みて、版画に関しても現行の文化財指定作品を見直すべきだし、世界美術史上に於ける浮世絵の位置と意義を考えれば、「国立浮世絵美術館」を早急に作るべきだろうと思う。

また、「役者は揃った」とのキャッチ・コピーに反し、写楽全版画作品の内4点が出展されなかったので、「役者は揃い切らなかった」のが、甚だ残念で仕方無かった。

常設展も見終え、早いお昼を神田の「藪」で頂く事に。何時もの「天たね」と「せいろう」を頼んだのだが、何故か何時もと雰囲気が違う。

何だろうと思い、辺りを見渡すと、理由が解った!実はこの「藪」には名物が有り、それは帳場に居る女将の注文声で、「せいろう〜、いちま〜い」「てんたね〜、おふたりさ〜ん」等の高い独特の節回しで、女将が調理場にオーダーを入れるのだが、その「声」が何時もと違うのだ。

帳場を見ると、今迄の女将とは違う、和装の若い女性が座って居る…娘さんかお嫁さんに違いない!筆者に取っては3人目の女将の声は、初々しく店内に響いていたのだった。

夜は神保町「いるさ」での、同士K氏が主宰する政経塾の「筆者を囲む会」へ。
参加者は20人近くに上り、代議士、外務官僚、内閣府、国際銀行、民間金融、テレビ・雑誌等が集まり、後には全生庵の和尚も登場し、此方はこれで「役者は揃った」(笑)。震災復興やG8、原発、核問題等についてワイワイと意見交換…大変盛り上がりました。

そして今筆者は羽田空港のラウンジで、ANA香港便の搭乗を待ちながら、このダイアリーをアップしている。

明日からの、久々の「香港美術日誌」に乞うご期待!