嵐の中の、「102歳のバースデー・パーティー」@Aquaholic号。

土曜日は、朝から事有る毎に天気予報を眺めていたのだが、実はそれには大きな理由が有って、その夜に予定していたイヴェントの為に、天候を注視する必要が有ったからだ。

朝から昼に掛けての天気予報は、「ニューヨークの夜は雨、時折『雷雨』」と云う物だったが、その予報通り、イヴェントの開始時間が近付くに連れ、空には不吉な黒い雲が増え、文字通り風雲急を告げ始めていた。

そしてそのイヴェントとは、仲の良い現代美術家、インゴ・ギュンターとの「船上合同バースデー・パーティー」で有る。

筆者の誕生日は7月30日、インゴは翌日の31日、もう既に両者の誕生日からは1週間以上過ぎて居たが、以前から2人で何かしようと約束して居り、結局お互いの親しい友人数人を招いて(ボートのサイズも有るので)、インゴの愛船「Aquaholic号」でクルーズ・バーべキュー・バースデーをする事に為ったのだ。

午後7時に「Pier 40」での待ち合わせだったが、6時を過ぎると雨はどんどん激しくなり、クルーズには「持って来い」の天候と為って来た(笑)。アーキテクトのK君が、愛車の'73年型メルセデス(この車は、本当にシブい…もうウッド・パネルやら全開するとフレームが無くなる窓やら、最高である!)で荷物の多い我々を迎えに来てくれ、メルト妻の仕込んだスペアリヴやカボチャサラダを積み込むと、車からK君の友人でラッパーの、Shing02君が降りて来て挨拶を交わす。

Shing02(→http://e22.com/blog/2011/03/07/aquatrium-chimp-beams-feat-shing02/)君は、子供の頃をタンザニアやサン・フランシスコで過ごし、今はロスを拠点に活動しているアーティストで、その晩は彼から色々と面白い話を聞く事が出来たのだが、何しろ礼儀正しく逞しい青年であった。

さてPier 40に着くと、メンバーは全員「時刻通り」に集合…流石ドイツ人と日本人のパーティーで有る(笑)。そして嵐の様な風と雨と波の中、総勢16名の「バースデー・クルー」を乗せて、Aquaholic号は出航した。

余りに激しい風雨の中、「マジ、大丈夫か?」と思った「乗組員」も居たと思うが、しかし其処は日頃から「行い」の良いインゴと筆者、いや乗組員達のパワーで雨は次第に弱まり、自由の女神近くにボートを泊めアンカーを撃つ頃には、女神様のトーチもマンハッタンの夜景も充分楽しめる程に雨雲も引き、土曜の夜では有るが、この天候の中ボートを出した酔狂な我々だけが、ハドソン河の「静寂」を独占する事に為ったのである!

皆が持ち寄った、イタリアや中東を含む世界各地方の料理の数々と、飲み切れない程積み込まれたワインで、パーティーはスタート。が、途中でアーティストのU君が船酔いでダウン…去年のボウリング大会のリヴェンジと云う訳には行かなかった(笑)。

そんなパーティーも宴酣、突然何処かからコースト・ガードが近寄って来て、我々はそのサーチ・ライトに照らされた。

「こんな雨の夜にボートが一隻、聴けばドアーズの曲が掛かり、見れば白人やらアジア人やらが居て、何ともアヤシイ…もしやテロリストか集団密入国か?」と思ったに違いない彼らは(笑)、ボートを横付けすると、ボートの登録証の提示を求めたり矢継ぎ早の質問をして、中々立ち去ろうとしない…超イライラしたが、逆らうと後が面倒なので結局大人しく従ったのだが、後でインゴと「もしやコイツら、こんな雨の土曜の夜は超暇で、実は俺らに招かれたかったんとちゃうか?」と小声で(笑)話したのだが、まぁ、これも余興の内と云う事で。

とは云え捕まったら嫌なので、警官が「まさかお前ら、釣りなんかしてないだろうな?」と繰り返し聞き始めると、「多国籍テロリスト」と見做された気の弱い我々は、バーベーキューで焼いた美味しい「鰯」(勿論釣った物では無く、持って来た奴です)を、必死に隠したのも事実である(笑)。

ニューヨークとは思えない、信じられない程の「完璧なる静寂」と瞬く夜景、そして秋の気配を感じる程の涼しい風を存分に楽しみ、気が付けば何と深夜2時…帰宅したのは3時近くに為っていた。

インゴ・ギュンターと筆者の、合計「102歳のバースデー」は無事終了…友情に溢れた、そして素晴らしくも思い出深い、「嵐の中の」クルーズで有った。