「金風無尽蔵」。

しかし、日々「新記録」が更新されている…云う迄も無く、「円」の話で有る。

これだけ毎日の様に「戦後最高値」と云われると、本当に「日本の戦後」が終わっていないのだなと実感させられる訳だが、政府の無策振りには本当に腹が立つ。こうなると、筆者は未だ勉強不足では有るが、今となっては我が国は「TPP」も呑まざるを得ないのでは無いかと思う。

そして「内需拡大」等と云う言葉は、既に日本では「死語」と為っている訳で、それを生き返らせるには、もう移民を受け入れるしか無いと思う…全く以て気の重い話だが、原発問題も含めて、今日本にはドラスティックな政策転換が必要だと云う事が、何故政府が判らないのだろうかと思う…何とかせねばならない。

そんなこんなでイラつく毎日、そして急に寒くなり、明日は何と「雪」の予報も出ているニューヨークの昨晩は、ゲルゲル妻と先ずはアップ・タウンのGAGOSIANへ…カイカイキキとがクリスティーズが11月9日に開催する、チャリティー・オークション「New Day」の下見会&パーティーで有る。

何とか仕事を終わらせ駆け付けると、先ずは今回の「仕掛人」、村上隆氏にご挨拶。村上氏は当然の様に少々お疲れの様子であったが、オークション当日「詩」の朗読をする事になっている、俳優渡辺謙氏に直接「お願いメール」をした話等、今回のチャリティー・オークションの意気込みと裏話を聞く。

また作品を拝見中、筆者は今回初めてお会いした、出品アーティストの一人で有るMr.氏と話した。が、その会話の中で、何とゲルゲル妻が学生時代、Mr.氏に会った事が有る事が判明し、世の中の狭さを痛感する事に…人間、本当に悪い事は出来ない(笑)。

その後は、会場で会ったギャラリストY氏ご夫妻と共に、今度はダウンタウンのPACE GALLERYに向かい、杉本博司氏の展覧会「Surface of the Third Order: Objects and Sculpture」のオープニングへ。

今回のPACEでの展覧会は、「海景」を入れ込んだ新作の「クリスタル五輪塔」等をフィーチャーした、「3D」作品の展覧会で有る。美しいインスタレーションと共に、これも大変な人の数で賑わっていて、日本からのゲストも多く、華やかな雰囲気であった。

そして一夜明けた今日はと云うと、実は或る意味ここ数年で「最も気の重い日」で、昨晩から精神と心とに深く圧し掛かっていた、本当に沈鬱な気持ちに為る午前中を過ごすと、気分が酷く落ち込んだ侭昼から向かったのは、アッパー・イースト・サイドに在る裏千家での「炉開き」で有る。

以前似た状況が有り、今回と同じ様に非常に「非情な気分」で有った時、偶然なのだがその時も直後の「茶会」に出た事に拠って、その重苦しい気分が晴れたという事が有った。それは今回も然りで、「俗」を離れて、目を瞑り聴く、後炭手前のパチパチ云う音や松風、そして一服の茶の効果は絶大で、筆者にとっての「茶の湯」とはこう云う事なのか、とつくづく感じ入った。

「炉開き」では、善哉と薄茶を頂くが、席入すると、床には三島龍沢寺の禅僧中川宗淵老師に拠る、軽やかな書体の「金風無尽蔵」の軸が掛かって居た。

そしてその金風(秋風)は、今日から三日間に渉る「『茶の湯』三連戦」の初日、筆者の重苦しかった心の中を、一服の茶と共に軽やかに駆け抜けて行った。

お茶に感謝…(なので、帯デザインの色も「新茶」にしてみました)。