「茶事」の招待状と、「印象派・近代絵画」プレビュー。

円高が止まらない。

後2週間程で再び日本に出張に行く身としては、これでは輸出産業並みに辛い思いをせねば為らぬ(涙)。云ってみれば、コーヒー1杯に就き、6、7ドル払うつもりでいなければならないと云う事だ。日本政府は何時も指を咥えて見ているだけで、無策にも程が有る…ぶっちゃけ「金返せ」、と云いたい(笑)。

さて気分を変えて、昨日届いたニュースから。

今迄アメリカではMarianne Boeskyに所属していた奈良美智氏が、何とPACE Galleryの所属になったそうだ。これでPACEには、李禹煥杉本博司に次ぐ3人目の日本ベースの作家が所属する事になった…何も日本人作家に限らず、これを聞くとPACEはGAGOSIANを脅かす存在に為りつつ有る、と云えるかも知れない。因みに、奈良氏のPACEでの初展覧会は、来年だそうである。

そして最近、某アーティスト氏から「茶事」の招待状が届いた。

それは、そのアーティスト氏がチェルシーに滔々完成した茶室「今冥途」の「茶室披き」への招待で、筆者はゲルゲル妻共々今週末伺う事に。

しかしこの招待状、封筒も中身も凝りに凝った紙質と字体を用いて居て、中身には茶会の日時・内容と、茶室の名の由来や建築の理由等が記されているのだが、もっと驚くべきはその貼られた切手…何と氏の「有名作品」が、そのまま「切手」と為っているでは無いか(本当は「天皇陛下」作品を使いたかったそうだが、ダメだったらしい)!

自身の展覧会図録も、紙からフォントまで全て自分で決めると云うこのアーティスト氏、流石!と云った招待状(これ自体或る意味「作品」では無いか?)で有ったが、さてさて、今週末が死ぬ程楽しみで有る!

話は変り、今週末からオークション・ハウスでは「印象派・近代絵画」のプレビューが始まる。

今回のクリスティーズのイヴニング・セールは、84ロット、エスティメイトは総額2億1500万ドル(約163億円)を越えるが、そのトップ・ロットは、ドガの非常に重要且つ有名なブロンズ作品「Petite danseuse de quatorze ans」(「14歳の少女ダンサー」)の2500-3500万ドル(約19億-26億6000万円)。

その他にも、ピカソの2枚の1930年代の絵画「Femme endormie, 1935」(「眠る女」)と「Tete de femme au chapeau mauve, 1939」(「藤色の帽子を被った女性頭部」)が、各1200-1800万ドル(約9億1500万円-13億7000万円)、マグリットやエルンスト、デルヴォー等のシュール作家の名品や、大好きなジャコメッティ(「Femme de Venise VII」:1000万-1500万ドル)やブランクーシ(「Le premier cri」:800万-1000万ドル)等の珍しい作品迄、バラエティに富んだライン・ナップが出品される。

一方のサザビーズはと云うと、此方は71ロットの出品で、トップ・ロットはクリムトの美しい風景画「Litzlberg am Attersee」で、エスティメイトは「on request」。高額商品のその後は、マティスのブロンズ「Nue de dos」(2000万-3000万ドル)が続き、もう一点の下値1000万ドル以上の作品は、此方でもやはりピカソ作品「L'Aubade」(1800万-2500万ドル)である。

最近株価が不安定だが、今回の「印象派・近代絵画」と「現代美術」のセール結果は、美術品のここ一番での「資産価値としての『実力』」を、明らかにするのでは無いだろうか。

非常に楽しみな且つ、不安なこれからの数週間である。