現代美術、強し!:クリスティーズとサザビーズの「イヴニング・セール」結果報告。

昨日、西海岸に来た。

夏時間がこの前の日曜に終わり、今度は3時間の時差(戻る)…都合4時間の、この微妙な時差が意外と体に堪える。しかし昨日のニューヨークからのフライトは、何と定刻に出て、驚くべき事に1時間近く早く到着。余りに順調且つ早く着いてしまったので、此方が迎えの車を待たねばならなかった程だ…これは若しかしたら、良い滑り出しの前兆かも知れない(笑)。

さてクリスティーズサザビーズ、両オークションハウスの「現代美術イヴニングセール」が終了した。

先ずはスティングのコンサートの真っ最中に入ってきた情報に拠って、「こんな立った侭寝てしまいそうなコンサートは止めて、そっちに行けば良かった!」とゲルゲル妻に云わしめた、レオ様(ディカプリオ)もやって来たクリスティーズの「イヴニング」から(笑)。

此方は91点中82点が売れ、総額2億4759万7000ドル(約193億円)を売り上げ、ロット・ベースで90%、ヴァリュー・ベースでも87%の大成功のセールで有った。

そのトップ・ロットは、アーティスト・レコードを叩き出したリキテンスタインのシグナチャー・ワーク「I Cam See the Whole Room !...and There's Nobody in it !」で、4320万2500ドル(約33億7000万円)、その他ロスコの「White Cloud」とウォーホル「Silver Liz」、ブルジョアの「Spider」(これもアーティスト・レコード)の計4点が、1000万ドル以上での売却された。

またもう一点特筆すべきは、先日杉本博司氏の茶事でご一緒したアンドレアス・グルスキーの「Rhein II」が、如何なる「写真作品」の中でもオークションに於ける最高値(433万8500ドル)を記録した事だろう。

「Peter Norton」コレクションも完売、そして昨日開催された現代美術家村上隆氏主導、俳優の渡辺謙氏が「雨ニモ負ケズ」を読んだチャリティー・セール「New・Day」も、出品21点を完売しトータル875万6100ドル(約6億8000万円)を売り上げ、クリスティーズの企画は大成功の内に終了。

そして、現代美術の強さを見せ付けたクリスティーズのセールに続いて、昨晩行われたサザビーズの方はと云うと、これまたその上を行く凄い結果で有ったのだ。

サザビーズ・イヴニングは、73点中62点売れ(84.9%)、ヴァリューでは何と94.7%を記録、7点のワールド・レコードを含む総額3億1583万7000ドル(約246億3500万円)を売り上げたので有る!

トップ・ロットは、クリフォード・スティルの「1949-A-No.1」で6168万2500ドル(約48億1000万円)…スティルと云う画家の作品の価値がこんなに高いとは、本当に知らなかった(恥)。そしてこの作品だけで無く、もう後2点のスティル作品が、各々3144万2500ドルと1968万2500ドルで売れたと為ると、もう筆者に取っては、単に驚愕の極致の一語である。

その他にもリヒター作品「3点」が1000万ドル以上で売れ、それに筆者お勧めだったベーコンの「Three Studies for a Self-Portrait」を加えると、計7点もの作品が、1000万ドル以上で売却された事になる…恐るべし、現代美術マーケット!

今秋のメイン・セール・シーズンは、これで印象派・現代美術ともサザビーズにやられてしまった…しかしこの現代美術の売れ行きを見ると、美術品景気は全く落ちていないどころか、良い作品はより高くなっているのが明白である。

そうなると、今月末香港で開催の「中国美術」にも注目せねばなるまい…「土地バブル」の終結が云われる最近の中国市場は、一体どうなっているのだろうか?

乞う、ご期待である!