鐘と雑炊。

一昨日日本に着いたゲルゲル妻と、昨日関西にやって来た。

今回の旅は、2日目からはニューヨークの顧客カップルと京都で一緒なのだが、初日の昨日は早めに東京を脱け出し、2人で智証大師開祖、天台寺門宗総本山の園城寺、通称三井寺を訪れた。

毎年の紅葉でも有名な園城寺だが、残念な事に、今年は京都も滋賀も紅葉が遅いらしく、色付きも悪い。

この園城寺の歴史は古く、その名の由来は、天武天皇から「園城」の勅額を賜った事に始まる。

また、良く知られた通称「三井寺」の名は、この地に天智・天武・持統の各天皇が産湯として用いた「霊泉」が有り、「御井(みい)の寺」と呼ばれて居た物を、後に智証大師が灌頂の法水に用いた事に由来するとの事だ。

また「園城寺」と聞いて直ぐに思い出されるのは、何とも他人の様な気がしない(笑)国宝「黄不動画像」と、今一つは利休作の同じ銘を持つ、「一重切竹花入」で有る。

この、秀吉の小田原征伐の際に得られた竹で作られたと云う大名品竹花入は、その大きなキズを敢えて正面とし、その「銘」は、一説には花を活けた際に起こる水漏れが、鐘の音の名残の様で有る事に、また一説では「弁慶の割れ鐘」の様で有る事に由来すると云われている。

そんな事を考えて居る内に、園城寺に到着。

先ずは重文の仁王門と釈迦堂を拝見して、石段を上がると、今度は雄大な金堂が現れる。

この、北政所に拠って建てられた桃山建築の傑作は、質実剛健でおおらかな雰囲気。弥勒仏を秘仏としているが、重文の大日如来坐像や不動明王立像は観る事が出来る。

金堂を拝観した後は、三井寺と云えば近江八景の一「晩鐘」、日本三銘鐘の一(後の二つは平等院神護寺)で有るお隣の鐘楼に行き、300円のお布施を払うと、ゲルゲル妻と「ゴーン」と一突き。

余韻の有る内は未だ祈りが届くと云う事だが、この「三井の鐘」の音は素晴らしく、残響も流石に長い。

しっとりとした音色の鐘の音は、琵琶湖を渡り、友人の安産祈願や、家族の健康祈願等の我々の祈りと願いを、天空の仏の元へと運んで行ってくれた様だった。
その後は、上に記した三天皇が産湯に使ったと云う泉が涌き出る「閼加井屋」(覆屋には、左甚五郎作の龍の彫刻が)、「弁慶の引摺り鐘」の「霊鐘堂」、高麗一切経を納める回転式の八角輪蔵を堂内に持つ、毛利輝元に拠り移築された「一切経堂」(以上全て重文)等を拝見し、園城寺を後にした。

京都に戻ってチェックインを済ませ、一休みすると木屋町迄散歩がてら出掛け、行き付けの「H」で夕食。
少し痩せたオヤジさんの料理は相変わらず最高に旨く、鰹の刺身、湯葉饅頭、このこ、河豚唐揚げ、ゲソ焼き、丸雑炊等を食べ、カウンター隣で飲んでいた紳士とも、共通の知り合いが居たりして大満足。

京都滞在は、「鐘」と「雑炊」で始まった(笑)。