香港セール終了。

気が付けば、師走。

もう後ひと月で、今年も終わり。年を取ると、何でこんなに時間の経過が速くなるのだろう…全く以て嫌に為る。

さて、飽食の限りを尽くす勢いの香港滞在だが(涙)、「香港の景気は如何に?」との心配も有った今秋のオークションも、無事昨晩終了。

先ずは、一昨日開催された、中国絵画のセールの結果から報告しよう。

相変わらず近代絵画のマーケットは強く、422点中371点売れ(88%)、総売上は5億9520万香港ドル(約59億3000万円)、ヴァリュー・ベースでは91%の成約率を記録。

トップ・ロットは崔如琢の作品「盛世荷風」で、断トツに高く1億2386万香港ドル(約12億3400万円)で売却、2番手は相変わらず人気の高い張大千作品で、「雨後嵐新」が2194万香港ドル(約2億1852万円)で落札された。

それに対し古画の方は、ロット・ベースで82%、ヴァリューでは何と95%を売り、総売上は1億8328万6750香港ドル(約18億3700万円)、沈士充と陳繼儒の合作「書畫合璧」が2306万香港ドル(約2億2960万円)で、トップ・ロットと為った。

そして昨日開催された、注目の「器物」セール…此方は、絵画に比べると何処と無く静かなセールだったのは、送金の問題等に拠って、今回本土の業者が殆ど来なかった所為かも知れない。

そして結果から云えば、昨日1日(「ヨーロッパ個人コレクション」と「重要器物」の2セール)で、総売上げは5億1461万9250香港ドル(約51億2500万円)に留まり、正直少々物足りない結果に終わったので有った…。

さて、その内訳を見てみると、「個人コレクション」の方が5860万香港ドルの売上で、87.3%(ヴァリュー)と73.3%(ロット)、「重要器物」の方が、ヴァリュー65.3%でロットが56.6%、そして売上は4億5601万9250香港ドルで、この結果を見ると、今迄と比べて今回の「レギュラー・セール」が如何に厳しいセールだったかが、お判りに為るだろう。

この両セール合わせてのトップ・ロットは、清朝乾隆銘の「青花釉裏紅草花文梅瓶」で4658万香港ドル(約4億6400万円)、次点はこれも清朝雍正銘の「黄地青花草花文龍耳扁壺」で、2642万香港ドル(約2億6300万円)。

そんな中、売れた作品の中でもエスティメイト下値以下(リザーブ価格)での落札も多く、買い手が品物と値段を見極め始め、お腹も少しずつ膨れて来ているのは明白で、もう「何でもかんでも」と云う訳には行かなく為って来ている。

しかし此の状況は、「景気の後退」と云うよりは、中国人バイヤーの「眼が肥えた」と云うべきだと思う。
そして今回の結果を見ると、香港に於ける中国美術市場は(本土の状況は、香港と異なると思う)、健康的美術市場への第一歩を踏み出した、と云って良い。

近代絵画の価格が上がるのも、振り返れば日本の高度経済成長期と同じ状況で、一般人に取って近代絵画は古美術に比べて理解し易く、作風もモダン、体裁も額装だったりもして飾り易く、億単位の金額を払うにしても、身近で安心感が有るのだろう。

アート・マーケットは、美術品が高く売れれば良いと云う訳では無い。

健康的な、長続きするマーケットの構築が必須なので有る。