「東京下見会」、初日終了。

来月21日にニューヨークで開催予定の、「日本・韓国美術セール」東京下見会の初日が、無事終了した。

今回の出展は、日本美術セクションからのみと為っているが、ラインナップはこんな感じで有る。

桃山末〜江戸初期の、非常に珍しい構図の「洛中洛外図屏風」(紙本金地著色・六曲一双)、108年振りに「一時帰国」した、尾形乾山の「銹絵獅子香炉」、上がりの非常に良い古九谷滝鳥文隅切皿一対、14世紀絹本著色の仏画掛幅「釈迦三尊十六善神図」、池田家伝来の甲冑「黒雛革二枚胴具足」、そして20005年に発見されたばかりの、池大雅の重要なる書帖「水流帖」の、計6点。

自画自賛に聞こえたら何だが(笑)、しかし今回の作品のクオリティは中々に素晴らしく、そしてその高いクオリティのお陰か、初日の昨日は150人を超える人々に来て頂いた…下見会1日の来場者としては、これは正直云ってかなり良い数字なので有る。

さてその昨日だが、朝11時の開場から、全国の有名美術館学芸員や大学の学者先生方、IT企業社長や投資家等のコレクターや業者の方々が集まり、例えば洛中洛外図屏風の年代確定や乾山香炉の状態、そして金額(笑)等を、喧々諤々と議論していたが、こう云ったオープンなディスカッションが、オークション・プレビューには誠に相応しい。

それは何故なら、(少なくとも筆者に取っての)このビジネスは、決して「商売」が全てでは無いからで、特に古美術の場合、そのモノの「真実の姿」を知る事が、或る意味商売よりも重要且つ興味深い事項だからなのだ。

例えば昨日、筆者が「ギャラリー・トーク」を終えた後、其処に居た或る来場者から、非常に興味深い示唆を頂いたのだが、それは今回展示している「洛中洛外図屏風」内に描かれている、「阿国歌舞伎」の阿国が身に付けている印籠の、「根付」に就いてで有った。
その方のご指摘に因り、画中、阿国の帯の上から顔を覗かせている「根付」を良く観ると、鹿か何かの動物の形状をして居る。

そしてその方が云うには、近世初期の「根付」は輪の形をした「丸根付」が主で、動物の形をした「根付」は、江戸中期に為らないと登場しない、と云うのが根付研究者の間での定説らしい。

お察しの通り、その方は「根付」の研究家だった訳だが、もしこの「洛中洛外図屏風」の年代下限が少なくとも江戸初期有って、この「阿国歌舞伎」のシーンが後補で無ければ(両条件ともクリアしていると思うが)、根付研究史上の「大発見」なのだそうだ。

この話には、勿論調査・検証が必要だが(何方かご存知の方が居らしたら、ご教授下さい)、こう云う話が飛び出て来る所が、「パブリック・ビューイング」の面白さなので有る。

さて、そんな大盛況だった下見会終了後は、片付けを終えると、ギリギリのタイミングだったが、森アートセンターで開催されているコンテンポラリー・アート・フェア、「G-Tokyo」のオープニング・レセプションに滑り込みセーフ。

会場では小谷元彦氏や村上隆氏等のアーティスト、小柳敦子さんや南塚真史君等のギャラリスト、フクヘンこと鈴木芳雄氏や橋本麻里さん等のジャーナリスト達とご挨拶し、盛況な会場を楽しんだ。

そして今日の下見会最終日は、11時より19時迄、銀座のクリスティーズ・ジャパンにて開催。

全ての展示作品に云えると思うが、御自分の眼でこれ等の名品を観る事の出来る、最初で最後のチャンスかも知れない。

皆様のご来場を、お待ちしております!