「キューブリックの部屋と音」を体験してみませんか?

また1人、歌舞伎の巨星が墜ちた…「京屋」、四代目中村雀右衛門丞で有る。91歳で有った。

人間国宝でも有った京屋は何とも気品の有る女形で、お姫様役の似合う素晴らしい役者だった。ご冥福をお祈りしたい。

さて一昨日は、重要クライアントとランチを取った後、人間ドックに続く「脳ドック」を受診した。

脳ドック」を受診するのは5、6年振り、人生3回目なのだが、何回やっても馴れない(馴れる人など、居るのだろうか?)。

そして嫌な事ばかりの「脳ドック」でも、何が一際嫌かと云うと、これが他の病院で行われているかどうか、定かでは無いのだが、それは、MRI室に入る前に行われる「アルツハイマー・テスト」で有る。

では、筆者が受診した病院の「アルツハイマー・テスト」を、此処に紹介しよう。

先ずは3つの言葉(例えば「桜」「猫」「電車」)を覚えさせられる。次に医師が3つの数字を云うので、患者がそれを逆の順番で答える、と云うテストが数回に渡り行われる(例えば医師が3・54・26と云ったら、26・54・3と答える)。
続いて、100から7を引き引き続けるテスト(100→93→86→79…)。それが終わると、今度は医師が5つの物(例えばミニカー、印鑑、押花、定規、独楽)の入った小箱を取り出し、中身を患者に見せ、覚えさせた後蓋を閉めて、箱に何が有ったかを患者に答えさせるテストが行われる(これが何故か、結構難しい)。

そして、これらのテストを全て終えた後に、最初に覚えた筈の「3つの言葉」(桜、猫、電車)を云わされるのだ!

このテストのプレッシャーは相当な物で、テスト1つでも出来ないと、まるで自分がアルツハイマーに罹ってしまったかの様な恐怖を覚える、誠に恐るべきテストなので有る。

そしてこの「悪夢のテスト」が終わると、愈々この日のメイン・イヴェント…MRI検査に進む。

検査室の厚い扉前に書かれて居る「注意書」に有る様に、金属・磁気カード類を全て外すと(因みに、眉を含めた「刺青」も注意が必要で、燃えて火傷をする危険性が有るそうだ)、何故か筆者にキューブリックの名作「2001年宇宙の旅」を思い起こさせる、宇宙的「MRI室」に入室。

その妙に「スペーシー」な検査台に横たわり、耳栓をして頭を固定されると、緊急ボタンを握らされ、身動き出来ない侭、タイム・マシーンの様なMRI装置内に送り込まれる。

そしてその上で、神経に障るあの「爆音」を20分近く、しかも微動だにせずに聞かねばならないのだから、これはもう精神的・心理的・肉体的拷問としか呼び様が無い。

が、物は考え様で、この「爆音」も、聴き様に拠っては或る種の「現代音楽」か「ミニマル・ミュージック」、若しくは「トランス」にも聞こえるし、「トリップ」する事も一部の人間には不可能では無いだろう(笑)。

況してや、自分がかの偉大なるスタンリー・キューブリック作品の、登場人物の1人に為ったと思えば尚更で、その「悪夢の20分間」もアーティスティックに楽しめると云うモノだ…と云うか、狭く五月蝿い検査機内で発狂しない為には、実際そう思わずにはやってられない(笑)。

何れにせよ、人間50近くもなれば、自分の脳の状態を知るのは大事だし、自分の「忍耐力」と「恐怖克服力」、そして「夢想力」を知る事も必要なので有る。

貴方も、一度は「キューブリックの部屋と音」を経験してみては如何だろうか…爆音の中、無意識下で「HAL」と話す事が出来るかも、です(笑)。

さぁ、今日から2日間は東京下見会…頑張らねば!