愛と哀しみの「日本・韓国美術セール」。

先ずは告知から。

3月15日発売の講談社の雑誌「セオリー」内で、筆者連載中の「オークションの目玉」。今回取り上げた作品は、100年以上に渡り数奇な運命を辿った、尾形乾山作「銹絵獅子香炉」…是非ご一読下さい!

さて、その乾山作品も出品された「日本・韓国美術セール」が、昨日終了した。

そして結果はと云うと、戦前の予想通り、見事「撃沈」…史上1、2を争う最悪のセールと為ってしまった。

193点出品して117点売れ、ロット・ベースでは60.3%、これはこれで宜しい…しかし、ヴァリュー・ベースで36.2%しか売れなかったので有る。

これは偏に高額商品が売れなかったと云う証なのだが、現に「洛中洛外図屏風」(70万ー90万ドル)も「李朝染付龍虎文壷」(エスティメイト・オン・リクエスト)も売れず、今回の最高落札価格は、上記尾形乾山作「銹絵獅子香炉」の19万4500ドルに止まった。

筆者の値付けが悪いのか、はたまたラインナップが悪いのか…原因はその両方なのだろうし、猛省しなくては為らないが、しかし昨今、工場で「製造」されている訳では無い日本美術作品を、200点から300点集めねばならない事が非常に困難で有るが故に、少々高いと思われる作品を受けざるを得ない状況が有る上に、オークションの目玉と為る100万ドルに近い金額の高額商品も必要と為る。

またエスティメイトは米ドルで付けるので、日本円が非常に強い今、$1=100円の頃からするとドルにして3割以上上乗せして付けねば日本人の手取りが同じにならないので、必然的にエスティメイトが高く為ってしまう。

その上オークションは、ギャラリーの様に、少数精鋭作品だけを売る訳には行かず、高額・中間価格・低価格の各価格帯毎の作品数や、刀剣・甲冑・絵画・版画・彫刻・漆工芸・金工・近代美術等の、日本美術の中での各カテゴリー別ラインナップも重要で有る。

そして、オークション・ビジネスには「時間」が余り無い。折角見つけた良い作品も、その作品調査やプロモーションの時間も限られているのが現実で、業界誌や学会誌に直ぐに載せる事も難しいし、最初に低価格帯作品を買った顧客を「育てる」時間も中々無い。

上に記した様に「云い訳」は山程有るのだが、ぼやいても仕方無い。要は、この狭い業界内の「トップ・プレイヤー」達の眼を如何に惹き付けるかと云う事と、新しい「日本美術ファン」を育てねば先は無い、と云う事なのだろう。

日本の美術は、世界の美術品の中でも、圧倒的にクオリティが高い…が、中国美術や東南アジア美術に比べて、購買層が薄い。コレクター達も、昔の様に競い有って集めると云うよりも、どちらかと云うと、仲の良い人達だけの「サークル活動」の様に為ってしまっている様な気もする。

何れにしても、日本美術品の素晴らしさを、もっと多く世界の人に知らせなければ為らない事だけは、確かで有ろう…日本人が日本美術を買わない今は、特に。

さぁ、切りが無いので、今日はこれ位にする。終わってしまった事は終わってしまった事…今更悔いても仕方が無い。今は唯、「アフター・セール」を頑張るのみで有る。