死守すべき「サンクチュアリ」。

先ずは、明るい話題から…クリスティーズ・ロンドンの「現代美術イヴニング・セール」が、大成功裏に終了した。

欧州で開催された現代美術のカテゴリー・セールに於いての史上最高売上げ額を記録したこのセール、総売上は1億3280万英ポンド(約165億円)に及び、イヴ・クライン(「Le Rase du Bleu」の2356万1250ポンド:約29億3000万円)やバスキア(「Untitled, 1981」の1292万1250ポンド:約16億円)等のアーティスト・レコードを輩出して、幕を閉じた。

前回此処でフォンタナについて「ヨーロッパ向き」だと云う事を記したが、高額トップ10リストを見ると今回のラインナップにはそれが顕著に出ていて、イヴ・クラインが1位と5位、ベーコンが2位でリヒターが4位、敬愛するフロイドが7位と9位、そしてフォンタナが10位とヨーロッパ勢が上位をドミネイトし、アメリカ勢は元々ヨーロッパでの人気が高い3位のバスキア、そして6位のカルダーと8位のリキテンスタインの3作に留まった(そして何と、此処にもウォーホルの名は無い!)…欧州危機、何処吹く風である。

さて今度は、暗くなる話…昨日、日本全国の電力会社の「株主総会」が有ったらしい。

テレビで少し見ただけだが、東電・関電の経営陣は、橋下、猪瀬両氏の質問に対する碌な答えも出さず、動議も全て否決。一体何様かとマジに思うが、「民間」と云っても所詮自治体が大株主の半官企業だけに、「民意」等が通用しないのも仕方無いのかも知れない…が、観ていてその無責任さには、本当にウンザリだ。

しかし外から見ている者からすると、混迷を極めている日本の政局は、何とも苛立たしく茶番劇じみて見える。

前回の選挙で増税しないと云って勝ち、結局そのマニフェストは一方的に破棄、且つ未だ福島第一で最高線量を確認する等、15ヶ月経った今でも何一つ満足に解決出来ない癖に原発再稼動をする民主党には、次回の選挙ではどうやっても投票出来ない…かと云って、自民党にも死んでも投票したくない。

そんな状況で唯一考えられる良策は、出来るだけ早く衆議院を解散させ、小沢一郎氏にもとっとと民主党を出て貰って新党を作らせ、民主、自民、維新の会、小沢新党、その際に「我こそは!」と出て来る新人を含めて、政界全体がシャッフルされる事に賭ける事だけでは無いか。

そして短期的には(色々有るが)勢いと決定力の有る橋下徹氏を応援し、次回の衆院選で「維新の会」に議席を取らせ、長期的には「首相直接選挙」及び「大統領制」を実現させた上で、「誰か」が「首相(大統領)公選」直接対決で橋下氏を引き摺り下ろす…これしかないだろう。

この侭では、本当に日本と云う国は消滅してしまう…何とかせねばならない。どうしても、の場合には「最後の手段」を使うしかないのだが…。

そんな母国にイラつきながらも、月曜の夜は友人A姫の招待を有難く受け、ゲル妻と「Tribeca Film」へブラジル映画「Xingu」(先住民族の一部族の名)のニューヨーク・プレミアを観に。

この映画は2012年度、Cao Humburger監督作品。1950-60年代、ブラジルも近代化を余儀なくされ、アマゾンの開発に着手する。その開発に因って、当然其処に住む先住民族達の生活と命は脅かされるのだが、その彼等を救う為に立ち上がる教養と勇気有る3兄弟の姿を、実話を基に再現した作品で有る。

観終わってみると、尺が長目なのと少々ハリウッド的な「如何にも」場面が眼に付いた事を除けば、ジャングルや先住民達の生活、交流等も美しく詳細に描かれていて、中々良い作品で有った。

そして本作を鑑賞中、常に筆者の頭を過っていたのが、「犠牲」と云う言葉で有る。

この作品のテーマでも有る様に、近代化や植民地化、異文化の流入から先住民族の文化や生活等の既得権を守る為には、当然闘わねば為らない。そして「闘い」には、これも当然ながら「犠牲」が伴う。

しかし忘れてならないのは、何処を落とし所として「闘い」に勝利するか、そしてその勝利の為にどんな「犠牲」を払うのかを熟考せねば、その闘いに於いての真の勝利は有り得ない、と云う事である。

この作品の主人公である3兄弟は、先住民の「サンクチュアリ」を確保する為に、最終的に元来の土地を先住民に放棄させ、異なる部族達を「サンクチュアリ」一ヶ所に集める。命と文化を守る為に、謂わば「『肉を切らせて、骨を断つ』的勝利」をモノにするのだ。

そう、今の日本人は「この事」を深く考えねば為らない。日本国国民は、どんな「犠牲」を払えば、その国民としての「真の勝利」を得られるのか…で有る。

国民の命・文化・土地を守れない、守る気の無い政府や政治家等、役立たず以外の何者でも無く、存在する意味がない。

明確な命の保証も論証せずに、「国民生活の為」と云う詭弁を使って原発を再稼働する政府民主党、同じ理由で長期に渡り原発を時限爆弾的に全国にばら蒔いた自民党は、放射性物質を空と海に大量に撒き散らした責任の下、強いるべき「犠牲」と得るべき「勝利」に就いて、日本国民及び「世界」に対してもっと誠実に説明をせねば為らない。

が、果たして現存する如何なる政党の、如何なる政治家にそんな芸当が出来ようか?…彼等は「Xingu」に登場する3兄弟の様に誰かを救う為に闘う所か、「選挙」と云う何が飛び出して来るか分からないジャングルに、足を踏み入れる勇気すら無いのだろう。

何れにしても、一刻も早く解散総選挙を実現し、「臆病者」と「役立たず」を排斥せねば為らない…今こそ「日本国株式会社」の「株主」で有る我々国民が、その責務を果たす時なので有る。

我々の「サンクチュアリ」…日本人としての命、領土、文化を死守する為に。