忙中閑有り、或いは癒しの名曲「カヴァティーナ」。

今日は先ず、今度の日曜に迫った「山口県知事選」に就いて。

筆者と山口県出身であるゲル妻は、今回原発に頼らない「エネルギー改革」を掲げ地元知事選に立候補している、飯田哲也氏(→http://iidatetsunari.jp/)(→http://www.facebook.com/groups/iidatetsunari/)を応援して居る。もし飯田氏の考えに賛同頂ける方が居らしたら、是非山口県在住の知人・友人等にお知らせ頂きたい。また、飯田氏応援団の1人で有る坂本龍一氏からも、ゲル妻に直接「山口県民宛てのメッセージ」を頂いたので、以下に掲げる。

地方から日本を変えていこう!
日本を自然エネルギー立国にしよう!
世界は変わるよ、貴方がそう思えば。

これを機に、坂本氏の「たかが電気」発言に就いて一言。一寸考えれば判る事だが、原発を無くしても「電気」は無くならない…減るだけで有る。況してや代替エネルギーの開発が進めば、尚更だろう。そして云う迄も無く、坂本氏は使用できる電気が減れば、それなりの電気消費量で音楽を創るだろうし、アコースティックでも可能である。そして云う迄も無く「電気の有り難さ」等は、若い頃「テクノ」で鳴らした氏が一番良く知っている筈だと思う。

その反面、7月21日付の「産経抄」の書き手は如何なモノか。「全国紙」たる公共メディアで個人批判をするのだから、「『たかが』一音楽家」の言葉尻を公共の場で、匿名でこれだけ取り上げるので有れば、この「産経抄」を書いた者から、先ずは「報道人」として自分も記事に「署名」をしてから、この坂本氏の言葉尻だけを取り上げた、不細工な何処か「焼餅」にも読めるその気持ちを吐露すべきでは無かろうか…全国紙ですら「2ちゃんねる」レヴェルとは、亡国も甚だしい。

そして「たかが電気」が震災直後に復活した事に因って子供の命を救ったのも確かだが、「原発事故」で多くの人が苦しみ、その事故に因って実際に「節電」を強いられて居る事と、その間にも苦しんでいる人々が居る事を忘れてはならない。「大震災直後の昨年春、たかが数時間の計画停電で、病院に影響が及び、どれだけの病人が困ったかを坂本教授は知らないのだろう」と書いた者は、恐らく「原発事故でどれ程の人が被曝し、故郷を捨て、事故後16ヶ月経った今でも苦しんでいるのかを知らないのだろう」し、「計画停電は、原発事故の結果である、と云う事も知らないのだろう」。

話題一転。ニューヨークの街に、そして筆者的に、最近大きなニュースが2つ有った。その1つは映画「ハーブ&ドロシー」のハーブさんが亡くなった事だ。

その作品の監督で有る佐々木芽生さんと先週お会いした時も、ハーブさんの大層具合が悪く、明日をも知れないと伺っていたが、残念ながら日曜日に亡くなってしまったと聞いた。佐々木監督の続編が出来る前だったので本当に残念だが、美術品を扱っている身からすると人の死と美術品の関係は密接で、コレクターはコレクションにその姿を投影するが、ハーブさんが集めた作品がナショナル・ギャラリーに残った事に拠って、今度はその作品が生前のハーブさんの姿を映し出す事になるだろう。心よりご冥福をお祈りしたい。

そしてもう1つのニュースは、「イチロー」である。

余りにも電撃的なヤンキース移籍だったが、何と記者会見当日にマリナーズ戦、しかも地元の試合に出るとは派手好きなイチローらしい…「昨日の敵は今日の友、昨日の友は今日の仇」とは良く云った物だ。今年は不調全く以て不調だが、レギュラー・ポジション獲得争い等に拠るモティヴェイション・アップに繋がれば良いが、と切に願う。また聞く所に拠ると、ニューヨークの不動産会社各社は、躍起に為って高級アパートの売り込みに走り回って居るらしいが、もう1つの「争い」は、一体何処の「焼肉屋」がイチローのお気に入りに為るか、で有ろう(笑)。

実は筆者は、イチロー選手とは「或る店」を通して一寸一言では云えない因縁が有り、その上何時か見た夢の中では、彼が1人で淋しそうに定食屋で食事をしていたので、声を掛けて話し出したらお互い意気投合し、その後2人で夜の街を方を組んで遊び回った経験も有るので(笑)、引きの強い筆者は、きっとその内この街の何処かで会うに違いない…。

さて、カタログ編集で多忙絶頂の一昨日、文字通り「忙中閑有り」の心和む一時が有った。

その「閑」とは、友人の「にがう」(判る人にしか判りません:笑)こと、友人のクラシック・ギタリスト、村治奏一君が極く少数の人々を招いて開いたミニ・コンサートの事で有る。

夜7時過ぎ、ダッシュでその日分の原稿校正を終えると、ミッドタウン・イーストに在るタウンハウスに急ぐ。ピアノの有るリサイタル・ルームに通されると、筆者を含めた10名程の観客の前に奏一君が登場。奏一君は会う度見る度に大人びて来るが、「ニューヨークの叔父さん」(笑)としては嬉しい限り。そして拍手の中、演奏が始まった。

奏一君の演奏は古典的なバッハから始まり、2010年西村明氏作曲の斬新な現代曲「玉響(たまゆら)」、そして大好きなピアソラの「ブエノスアイレスの四季」の情熱的な演奏を経て、これも大好きなラヴェル作曲のピアノ曲の1つで、ローランディアンスがギター用に編曲した「亡き王女のためのパヴァーヌ」、最後はこれも名曲、映画「黒いオルフェ」の「フェリシダーヂ」で締め括られた。

バランスの良い選曲の、あっと云う間の1時間程のミニ・コンサートだったが、「貪欲なる聴衆」達はそれで満足する筈も無く(笑)、アンコールの1曲を所望…それに応え、奏一君が弾いたのは「カヴァティーナ」で有った。

ご存知スタンリー・マイヤーズに拠って、1970年に元々ピアノ曲として作られたこの曲は、1978年度の映画「ディア・ハンター」のテーマに使用され、筆者もこの映画でこの大名曲を知った。そしてそれ以来、ギター曲で一番好きな曲はと云われれば、必ずこの曲を挙げる程筆者の人生と共にこの曲は有るのである。

また云う迄も無いが、この「ディア・ハンター」も本当に素晴らしい映画で、「ロシアン・ルーレット」のシーンに代表される様に、クリストファー・ウォーケンメリル・ストリープジョン・サヴェージそしてデ・ニーロ等の迫真の演技は、涙無くしては見れない…数有るベトナム戦争映画の中でも、最高傑作の1つでは無いだろうか!

ディア・ハンター」と共に、永遠に弾かれ続け、聴き続けられるクラシック・ギター名曲中の名曲、「カヴァティーナ」…ささくれ立った心や、疲れた気持ちを癒してくれる、最高の逸品で有る。