「ギョロッケ」とは?

クサマヨイの実家の在る、山口県の萩に行って来た。
何時もながらクサマヨイの家族に歓待され、此れも何時もながら萩の美味しい魚貝類をふんだんに頂いたのだが、食い意地の張っているワタクシは、余りに多種多量の魚介を食べた為、まるで自分の胃が「水族館」化した様な気がした程だった(笑)。

さて今日の「フード・ダイアリー」、もとい「アート・ダイアリー」のテーマは「龍泉窯」…山口県立萩美術館・浦上記念館で開催中の展覧会、「日本人の愛した中国陶磁 龍泉窯青磁展」を観て来た。

龍泉窯の中でも、特に質の高い青磁作品を生産した大窯村地区の楓洞岩と云う場所で、明時代初期に宮廷用の青磁を焼いた窯が2006年に発掘されたのだが、その出土品(龍泉青瓷博物館蔵)と日本国内の有名美術館所蔵の名品、個人蔵作品を通して、北宋から明時代迄の龍泉窯の作品の変遷を、この展覧会は考察する。

さて、この11世紀から15世紀迄の龍泉窯青磁の変遷は、日本人の好みも手伝って、誠に興味深い。

初期の淡青釉に始まり、南宋時代中期から始まる筆者も大好きな、美し過ぎる薄胎厚釉の粉青色釉青磁、所謂「砧青磁」、元時代中期から明時代初期に掛けて現れる、器面装飾が多様に為された青緑色の大盤等の「天龍寺青磁」、碧緑色青磁の明時代前中期、そして洪武・永楽官器迄、その「青磁」の「『緑』の歴史のグラデーション」は、一見の価値が有る。

その中でも、特に筆者の眼を惹いた作品を挙げると、出光美術館蔵の「青磁鳥紐蓋長頸瓶」や東洋陶磁美術館の重文「青磁鳳凰耳瓶」、根津美術館の「大内筒」と見込みに型押の花を持つ「輪花文鉢」、常盤山文庫蔵の「斗笠碗」、そして東洋陶磁の国宝、23の鉄班を持つ「飛青磁」で有ろうか(しかしこの作品、何度観ても状態が素晴らしい…査定先の個人宅で出て来たら、門外漢の筆者等は「現代作品」と思って仕舞うかも知れない!:笑)。

この素晴らしくも重要な展覧会は、愛知県陶磁資料館と当館のみの巡回で、しかも会期は今月26日迄…一寸遠いが、旅がてら訪れる価値の有る必見の展覧会で有る。

さて今回の2泊3日の萩滞在も、上記展覧会を堪能したり、30年近い歴史を持ち、海外大物ミュージシャンも演奏するジャズ・クラブ「Village」で、ニューヨークのミュージシャン達に驚く程顔の効くマスターと話したり、「YCAM山口情報芸術センター)」の館内を足立館長に案内して頂いたり、家で「The Stone」でのクサマヨイと坂本教授のパフォーマンス(拙ダイアリー:「テンスな、余りにもテンスな…:坂本龍一&ゲル妻@The Stone」参照)の上映会をしたりと、アート三昧の滞在だった。

が、そんな中、最も印象に深かったのは、実は車で萩市内を運転中に街角で見つけた、看板に大きく書かれた本日のダイアリー・タイトル、「ギョロッケ」で有る。

「ギョロッケ」…この、何故か「JB(ジェームズ・ブラウン)」を思わせる名称が何ともファンキーで、「ギョロッケ!ウッ!ハッ!」と叫びたく為るこの響きは(笑)、一体何を意味して居るのだろう?

答えは、萩市に在る荒川蒲鉾店が商標登録を持つ、「平天」と呼ばれる平たい蒲鉾をディープ・フライした所謂「魚(ギョ)コロッケ」。

食べてみると、何とも「学校帰りに1枚」的な、意外にアッサリとした「揚蒲」で、1枚たったの60円で有る。

ウーム、このネーミングと味は只者では無い…そしてこの「ギョロッケ」も筆者の「水族館」に、確りとコレクションさせて頂きました(笑)。

嗚呼、最後はやはり「フード・ダイアリー」に為ってしまった(嘆)。