全ての道は、羅馬に通ず。

67回目の終戦の日、LAから日本に入った。

着いた翌朝は、恒例の酷い時差ボケで早朝4時前に起きると、暫くボヤボヤした末、5時に為ったのを切っ掛けに神田明神へと散歩に。

さて早朝のこの辺りは、中々に面白い。

例えば聖橋のベンチでは、こんな早朝から2人のオッサンがビールとツマミで一杯遣っているし、オールでカラオケでも行ったのか、かなりお疲れ気味の朝帰りの若いカップルや、仕事に向かうのか、早足と云うよりも全速力走っているオバサン等とすれ違い、本当に「人生色々」だと感じる。
そんなこんなで神田明神に着き、拝殿前に手を濯ぎに行ったのだが、ふと右の空が気になり、振り向いて見ると驚いた…其処には巨大な「スカイツリー」が聳え立って居たからだ。

神田明神の境内から見上げる空には、子供の頃から雲以外には何も無かった。正直、少し嫌な気がした。

そんな嫌な気分を治すには、熱い風呂にノンビリ浸かるのが一番…と云う事で、今日のテーマはANA0005便で観た「風呂」の話、映画「テルマエ・ロマエ」で有る(笑)。

主人公が現代にタイム・スリップし、現代の科学技術に驚愕した末、自分の時代にそれを持ち帰って成功する、と云うプロット自体はそう珍しく無いが、その舞台が古代ローマ現代日本、そして持ち帰る「技術」が「風呂」な所は、全く以て斬新と云わざるを得ない(笑)。

これは、「風呂愛好文化」と云う共通項を古代ローマ現代日本の間に見つけた原作者の大勝利で、その時代考証の緻密さや、2週間に及ぶ「チネチッタ」での撮影(スゴい!)を実現させたとの事…流石、自称「古代ローマ・オタク」の為せる技だろう。

また、主人公の「古代ローマ人浴場設計家」役の阿部寛がかなり宜しい。彫りが深く濃い顔、イイ体と云う点で選ばれたのだろうが、劇中にチラッと出てくる原作主人公に似て居るし、「驚く顔」が妙に魅力的な阿部が、不思議な事に段々古代ローマ人に見えて来るのが可笑しい(市村正親や宍戸開等、他の古代ローマ人役の日本人俳優が、何故か最後迄日本人にしか見えない処が、これまたバカバカしくて良い)。

そして全編を彩る、ラッセル・ワトソン唄う処の、プッチーニ誰も寝てはならぬ」等のオペラ・アリアの数々、また何故か場面転換毎に登場する、道化的な役割のデブでトボけた歌手の存在!

機内と云う笑いを自重する環境でも、思わず声を出して笑ってしまう程、笑える作品だった。

さてこの「テルマエ・ロマエ」、原作が大ヒット漫画で有る事や、阿部寛が何と古代ローマ人役で出演している事は噂に聞いて知っていたが、ニューヨークに住むワタクシは、当然原作も本作も観て居なかった。

が、数日前、或る方に筆者が近々日本に行く旨のメイルをしたら、

「日本で今大ヒットしている、『テルマエ・ロマエ』と云う漫画の原作者のヤマザキマリさんと会うので、良かったらご一緒に如何ですか?」

と、その方にお誘いを受けたばかりだったので、本作を機内上映リストに見付けた時は、余りのタイミングの良さにビックリ!

全ての道は、羅馬(ローマ)に通ず。

ならば、そして若しヤマザキさんにお会い出来たならば、是非とも「平たい顔族」が16世紀に制作したローマに関わる「あの屏風」の話をしたい…う〜む、楽しみ過ぎる!

聞く所に拠ると、本作は「全国公衆浴場業組合」推薦作品と為り、「テルマエ・ロマエ」風のイラスト付き(ヤマザキさんの作品だろうか?)で、日・英・中・韓の4ヶ国語での注意書付きのポスター「入浴する前にごらんください:Look ! Before go in ...」(実は映画ポスター)が、全国の銭湯に貼り出されて居るそうだ。

また、本作はイタリア全土でも公開されて居るらしく、日伊親善大使の役割も大…必見の抱腹絶倒な「時空を超えた入浴スペクタクル」(笑)で有った!