「桃源郷」の境地。

何ともきな臭い状況に為ってきた。

リビアでの米国大使館襲撃で大使が殺害されたのに続き、イエメンでも大使館が襲撃され、チュニジアやエジプト、モロッコ等でも反米デモが過激化している。

このデモは「9.11」に合わせて投稿されたと思われる、イスラムを侮辱した匿名映像に端を発し、リビア大使館襲撃とイスラム圏に於けるこれらの複合的な反米の動きは、恐らくは通常の武力行使と「民衆」をインターネットで利用した、新しい形の「テロ」では無いかと云われている。

問題は今アメリカが大統領選直前だと云う事で、オバマの対応が非常に気になる所だが、大使館を襲撃され、大使を殺されたのだから、この侭では済まないだろう…。

また数日前の朝、来月から中国全権大使に為る事が決まっていた西宮伸一氏が、東京渋谷の路上で倒れたとのニュースを見た。

嘗てニューヨーク総領事だった西宮氏とは、その駐留時代本当に色々な場所でお会いしたのだが、ご夫妻とも日本文化に大変理解の有る教養豊かな方で、その気さくなお人柄も大変魅力的な方で有った。

ここ数日、上海等で日本人が襲撃されたりして、日中関係は非常に難しく為って来て居り、西宮氏の様なバランスの良い方が任命されて本当に良かったと思っていた矢先の事だったので、非常に残念だが、ご本人、そして日本国の為にも、西宮氏の一刻も早いご回復を心よりお祈りしたい。

そしてもう1点…山口市議会が、何とも驚きの「配慮」を坂本龍一氏に求めたらしい。

坂本氏は、「YCAM」(山口情報芸術センター)の10周年記念祭総合芸術監督を務めて居るのだが、その坂本氏が脱原発活動をしている事に対し、市議が「(芸術監督として)県民・市民の税金を使って活動するのだから、政治活動を慎むよう申し立ててほしい」と市に要請したとの事。

坂本氏は、YCAMの記念祭で「脱原発イヴェント」でもやるのだろうか?もしそうでなければ、「思想の自由」すら山口県には無いと云う事になるのだろうが、そんな事で「芸術」が生まれるのかどうか、甚だ疑問で有る。

さてやっと此処からが、今日の本題(笑)。

今回大成功だった「日本・韓国美術オークション」では、ビッドは日本、アメリカ、ヨーロッパ各国、中国、ロシア、中東を含めた世界各国から満遍なく入り、バイヤーのタイプも個人コレクター、ディーラー、美術館等の公的機関が揃った。

また絵画、漆工品、甲冑、金工、韓国陶磁器及び韓国近代絵画の各分野で10万ドル超の作品が出た上、売れた作品のロット単価は7万4726ドル…この分野では、過去5年間に開催された如何なるオークションでも最高の、アヴェレージ・プライスで有る。

また、売れた作品の略半分(49%)がエスティメイト上限を超えて売れ、エスティメイト内で売れた作品が39%…「コンサヴァティヴなエスティメイトが、高いハンマー・プライスを呼ぶ」と云う、「成功するオークション」の定石が効を奏した訳で、やはり落札予想価格の付け方は重要なので有る。

しかし、驚くべきはやはり「明治」だろう。その中でも七宝や金工品、漆工芸の強さは凄い。が、高値を呼ぶのはその分野の中でも人気の有る作品、例えば漆では柴田是真、金工では海野勝みん(「みん」は「王片」に「民」)は並河靖之等の「名の有る」作品に限られていて、何でも売れると云う訳では無い。

また、今回のボナムズ・ニューヨークが400点を売っても、売上が100万ドルに満たなかった事を考えると、その内容も兎も角マーケットの大きさ等、それこそ安心出来ない点も有るのだが、その反面、今回のセールで新規バイヤーが出て来た事も確かなので、全てはこれからのやり様次第なのだろう…。

そして来年3月のオークションに向けた「作品探し」が、既に始まった…成功したセールに、「桃源郷ユートピア)」の境地の筆者が云えるのはたった一言、「もう、嫌っ!」で有る(分かる人にしか、分からんだろうなぁ:笑)。