Tatzu Nishi's "Discovering Columbus" 始まる!

コロンバス・サークルに聳える「コロンブス像」を囲む様に「リヴィング・ルーム」を拵えた、アーティスト西野達氏のパブリック・インスタレーション「Discovering Columbus」が(→http://www.youtube.com/watch?v=ADysOho6H0Q)(→http://www.chicagotribune.com/videogallery/72426048/News/Room-in-the-sky-for-Columbus)、一昨日の9月19日、滔々お披露目となった!

「パブリック・アート・ファンド」のキュレーターに拠ると、朝行われた記者会見では(筆者は行けなかったが)、予想の倍の何と200人の報道関係者が押しかけたと云う。

ニューヨークと云う街のアートへの関心の高さが窺えるが、残念ながら日本からの取材はほんの少しで、インタビューの申込みも余り無かったとの事(放映されれば良いが)。ドイツやオランダからもテレビ取材が来たにも関わらず、「ニューヨーク・ポスト」紙の一面に為り、「ニューヨーク・タイムズ」にもきちんと記事が出たにも関わらず、で有る。

が、例えばひと月程経って、此方で大行列でも出来よう物なら、日本の報道陣等はその事実を確認後、大挙して押しかけて来るのだろう。日本の、そしてメディアのコンテンポラリー・アートへの関心なんて、所詮そんなモノで有る(嘆)…「自分の眼」等、無いも等しいのだろう。

世界の現代美術のメッカ、ニューヨーク・シティのど真ん中で、日本人現代美術家の作品が認められ、これだけ大掛かりに発表されているのだから、オリンピックの「金メダル」程には世界に誇れる筈だ…日本のメディアには、もっと取材し報道して欲しい。

さて秋晴れの晴天の下、達さんのお陰で「パブリック・アート・ファンド」のプレス・ヴュー・リストに入れて貰った筆者が早目にコロンバス・サークルに着くと、達さんと今回達さんの通訳を担当している、髪を切り初めてその「耳」を公開したコウスケ君(藤高晃右:ニューヨーク・アート・ビート、ファウンダー)がテレビのインタビューを受けていて、その背後に聳え立つ鉄筋の足場の上には「白い部屋」が!

インタビューが終わった2人と話したりしている内に2時に為り、プレヴューが始まると、達さんが所属するギャラリー「アラタニウラノ」の浦野さん達ほんの数人と共に、早速階段を登る。

おおよそビルの6階分の階段を登ると(この日の為に、此処2週間程エレベーターをなるべく使わず、6Fに在る我が庵「地獄宮殿」迄歩いて上ったお陰で、余り息が切れなかった:笑)、其処には豪華な「リヴィング・ルーム」が…ウ〜ム、其の窓から眺めるセントラル・パークも、流石に素晴らしい!

入り口を入ると、先ずは綺麗な板張りの廊下が有り、達さんの撮った自由の女神の写真等が飾られて居る…そしていざ「リヴィング」へ。

部屋に入って、筆者が発した最初の言葉は何しろ「ウォー、スッゲー!」…これは確実に「Once in lifetime」な経験、あの塔の上の「コロンブス像」をこんなに間近で、しかもこんな非日常的に天空に浮かぶ、日常的な豪華なリヴィングで観れるなんて、非日常の極みでは無いか!

そんな部屋の内装、先ず目に付くのは達さんがデザインした、エルビス・プレスリーマイケル・ジャクソンミッキー・マウスやホットドッグ(!)、エンパイア・ステート・ビル等のイラストが描かれた可愛いピンクの壁紙、その壁に掛かる絵はデ・クーニング(複製です)…また部屋の調度として置かれるアメリカ独立年記の入った味の有る木箱、本棚等の家具や本も、ニューヨークで達さんの眼に選ばれたモノ達。

そして部屋のど真ん中に、モダンな家具に囲まれ聳えたっているのが、「コロンブスアメリ渡航400周年記念」(1892年)に建てられた、大理石の「コロンブス像」だ!

約4m有るこのコロンブス像、ラグジュアリーなソファに座って見上げると、日頃コロンバス・サークルを通ってもチラッと見上げるのが関の山だったので、その大きさに驚愕する。そして160年間に及んで風雨を受け止め、9.11の驚異に曝されたコロンブスに、畏敬の念を感じるのだ。

そして余りの居心地の良さに、此処が地上約23mの天空に浮かぶ「リヴィング・ルーム」だと云う事すら忘れてしまう…あぁ、此処に住みたい…(笑)。

小さく、細かいアートが得意な日本人の中で、こんな大規模な作品を創る達さんのアートはダイナミックだ。そしてそのダイナミズムは、ニューヨークと云う街(ブルームバーグも大絶賛)と「パブリック・アート・ファンド」と云う、日本では考えられない様なアート・サポーターと見事に合致し、これから信じられない程の多くの人を呼ぶと思う。

だが、達さんの作る様なアートは、日本では誠に受け入れ難いのだろう…何故なら、「アートは、パブリックな物で有る」と云う観念が、日本には基本的に欠如しているからで有る。

達さんにも話したのだが、個人的には例えば「鎌倉の大仏」や「牛久の大仏」(一寸高すぎるかなぁ:笑)、上野の「西郷さん」を茶の間で囲むとか、何処かの寺の鳩尾を「床」に見立てて茶室にし、茶事でもするとかして欲しいのだが、「パブリック・アート」感覚が皆無な日本では、恐らく100%不許可・不可能だろう…。

また、達さんのこのインスタレーションが11月18日に展示終了した後、その組んだ足場を利用しての「『コロンブス像』の修復」が予定されている。こう云った「一粒で二度美味しい」グリコ的企画(笑)を出せば、日本のお寺か何処かも理解を示してくれるかも知れない…無理かなぁ…無理だろうなぁ(嘆)。

そして昨日の夜、「リヴィング」を見渡せる真向かいのTime Warnerビルのラウンジで行われたパーティーでも、多くの人がお祝いに駆けつけ盛り上がったが、日が暮れると、我々は達さんを先頭にラウンジを抜け出し、横断歩道を渡って「リヴィング」への階段を登り、達さんやコロンブスと共に、今度はニューヨークの素晴らしい夜景を堪能したので有った。

アメリカ大陸を発見したコロンブスを「発見」する、この「Once in lifetime」な西野達氏の凄いインスタレーション「Discovering Columbus」、予約は此方から(http://www.publicartfund.org/view/exhibitions/5495_discovering_columbus/)。

これを観ずして、ニューヨークのアートの今は語れない!