「ハレのご縁」、或いは「サプライズ大作戦」。

ネットで日本の新聞を読んで驚いた。

東京都が、前回の五輪招致の書類18億円分を「紛失した」と云うのだ。呆れて物も云えないが、長である石原氏はこの責任をキチンと取るので有ろうか。

電通等の云いなりに為り、都民の税金を湯水の如く使った末に招致に失敗し、今度はその経費等の証拠書類も紛失…こんな無責任極まりない長が再び「招致活動」等、全く以って片腹痛い。

好い加減、自分が鈴木前都知事に引導を渡した「老人に政治は出来ない」発言を、早急に実践して頂きたい。

さて今日は、最近身の廻りに起きた「ハレ的『ご縁』」に纏わる話を。

筆者が西海岸へ仕事で出張していた事と、「ゴッドファーザー・オブ・ブラック・ミュージック」との邂逅の話は此処に記したが(拙ダイアリー:「『ゴッドファーザー・オブ・ブラック・ミュージック』から学んだ事」参照)、その間クサマヨイは、現在フランスで制作活動中の姉を訪ねて、パリに居た。

彼女はパリで久し振りに姉と会い、偶々パリに来ていたダリル(・ジョーンズ)と食事をしたり、「Law and Order」のエクゼクティヴ・プロデューサーで有る友人Rが今撮っているドラマに出演中の「ドラえもん」ことジャン・レノに会ったり、日本文化会館で開催中の「笑いの日本美術史:縄文から19世紀まで」展を観たりして、鬼の居ぬ間の命の洗濯をしていた様だったが(何と、羨ましい…)、ある時突然仕事中の筆者に、以下の様なテキスト・メッセージを遣して来た。

「今さっき、歩いてたら急に雨が降って来て、路地に入って小さな店で傘を買ったのよ。で、それを持って外に出たら、向こうから見覚えの有る人が1人で歩いて来たんだけど、それ誰だったと思う!?」

ん?誰だろう…パリにも知り合いは居るが、裏通りで会うなんて?

「いや、驚いたの何のって、それが『千さん』だったのよ!」

ぬわにぃ、「千宗屋さん」だと!日本文化会館やギメならいざ知らず、クサマヨイと若宗匠が、何故パリの裏道でバッタリ遭わねばならんのだ?

聞くと、千さんはギメ美術館での茶会の為に、来巴里していたとの事。しかし一寸でも時間がずれていたら、お互い通り過ぎてしまって居た訳だから、ご縁と「引き」の強さは恐ろしい…若宗匠の号「隨縁斎」とは、流石「名は体を表す」で有る。

で、対する此方はと云うと「ゴッド・ファーザー」以外にも、今度はミーハーな「遭遇」が有った。

それは出張最終日に、ロサンジェルス・カウンティ・ミュージアムを訪れた時の事。学芸員と待ち合わせをした狭い職員専用入り口で待っていると、何とも見覚えの有る白人女性が入ってくるでは無いか…おぉ、ダイアン・キートンだ!

彼女は余り「修正」もしていない感じで、つまり年相応(66歳)に、顔にも皺が有ったりするのだが、それが却って自然で美しく、そして可愛く颯爽としていて、思わずニッコリと会釈をしてしまった程だった(勿論、彼女も仕返してくれました:笑)。

そしてニューヨークに戻った昨日の土曜日は、昼頃から活動し始め、先ず向かったのは現代美術家照屋勇賢氏の「オープン・ステュディオ」。

照屋氏のステュディオは、地獄パレスの直ぐ近所、39丁目の「The Elizabeth Foundstion for the Arts」の8階に在るのだが、この日は年に一度の全館挙げての「オープン・ステュディオ」の日で、3階から9階迄のアーティスト・ステュディオとその作品を自由に観、アーティストと話をする事が出来る。

照屋氏は現在ベルリンでの制作活動中なので居なかったが、アシスタントの早津さんや大場君から作品説明を受けながら、シグナチャー・ワークであるショッピング・バッグを切り抜いた「Notice-Forest」シリーズや、「紅型」を使ったシリーズ「Heroes」からのオバマ大統領のポートレイト作品等を拝見した。

その後他の階をサックリと見学し、今度はアッパー・イーストに向かうと、若手目利き古美術商の柳孝一氏のギャラリーを訪ね、開催中の「辻村史朗」展を観る。

エレベーターを降りると、此処でも「遭遇」が有って、作務衣の後ろ姿が目に入ったので「辻村さんだ」と思ったが、それは気の所為で、ソックリだった後姿は友人の「フェイク・マルコヴィッチ」こと、スティーヴ…そして、一緒に居たのはJSのディレクター手塚女史。が、肝心の辻村先生は諸般の事情でこの日は来られず、お会い出来ず残念でした。

今回の辻村氏の作品は、大丸壺等の大きな作品も多いが、個人的には「茶碗」が良い。黒赤楽、備前、黒織部、粉引、井戸等各種有ったが、その中でも特に「赤」の発色が良い、「志野」の出来が素晴らしい…是非ご覧頂きたい。

が、偶然の「遭遇」は此れで終わらず、帰りに腹が減って「ザイヤ」でパンとコーヒーを買い、最近ハマっているiPadを抱えてブライアント・パークに赴き、仕事でもでもしようかと席を探していると、おや?…見覚えの有るカップルが、仲睦まじく座っているでは無いか?彼等は建築家Joe君とアーティストのAkiちゃん…結局2人にジョインし、暖かな陽射しの下、ノンビリとアート話三昧を決め込んだ。

上に記した事件の数々は、所謂ご縁の為せる「遭遇」…が、今日の本題は実は此処からで有る。今週の「ハレ的『ご縁』チャンピオン」は、我等が昨日土曜日に仕掛けた、或る「大作戦」だったからだ!

さて此処最近、色々な「ご縁」が有って会った多くの人々の中でも、最もパワフルな「人間力」を持ち、久し振りにその力に感服し、惹き付けられた人が2人居る…その内の1人は漫画「テルマエ・ロマエ」の作者ヤマザキマリさんで、もう1人は現在ニューヨークで活動中のアーティスト、西野達さんだ。

この「大作戦」、そもそも達さんのニューヨーク滞在中の思い出として、来ニューヨーク中の達さんの大事な某女性、コウスケ&アネタ夫婦とその愛娘の花、そしてクサマヨイと筆者と共に、「或る『特別なパーティー』をしたいので、手伝ってくれ!」との達さんの希望に拠るモノだったのだが、其処はアーティスト、色々な条件が付き捲って居た(笑)。

先ず第一に、この「大作戦」は「サプライズ」で無ければならない。第二に、この「大作戦」は衆目の多い、特に外人の多いロマンティックなレストランで行われ、他の客の祝福を受けねばならない。第三にこの「大作戦」には、或る時に為ったら特殊な音楽が店内に流れ、ハレ的モノも用意されていなければならない、との事…この忙しいのに、出来るかそんな事(汗)!

が、友情に厚い我々は、そんな事でめげはしない…色々当たった末、場所は老舗ステーキ・ハウスの「Keens」に決まり、前もって店のマネジャーや店員達と数多打ち合わせをして、いざ準備万端(「音楽」だけは、実現しなかったが…)。

ディナー中は「中之島ホテル」後の達さんの企画会議をしながら(ガンジー像をインストールした「ラブ・ホテル」案も出た:笑)、皆旨いポーター・ハウスやフィレ・ミニヨン等のステーキを食べ、ワインをガブガブ飲んだが、「サプライズ」の事がどうしても頭を過ぎり、中々食事に集中出来ない…しかしデザートタイムに為り、愈々「サプライズ大作戦」を決行する時がやって来た!

そして、ハラハラする達さんの言動も何とか乗り越えて(笑)、その「サプライズ大作戦」が大成功すると、周りの全てのテーブルの客達(「Film Forum」のディレクターを含めた、米仏の映画人達もだ!)も祝福を我々に浴びせ、達さんも大満足…そして達さんが「あの」コロンバス・サークルのアーティストだと判ると、中には「明後日行く事に為ってるんだよ!」と云う人も居て、更なる祝福が呈された。

「サプライズ・スペシャリスト」(何じゃ、そりゃ?)としては、宮沢賢治並みの「注文の多い料理店」をクリアした事に満足感を得たが(笑)、何よりもサプライズ成功後の乾杯時に出された、海老蔵似の天才パティシエKさん作の「コロンブスの王冠」を象った激ウマケーキと、「キーンズ」の店員を含めた「大作戦メンバー」や周りの客を含めた、笑い有り、涙有りの、暖かい「ハレ」の「ご縁」に大満足の孫一でした!


追記:来る10月24日(水)午後6時半より、ニューヨーク日本クラブにおいて、西野達さんの講演会が催されます。筆者も司会兼ゲスト・スピーカーで登場しますので、是非ご来場下さい。詳しくは日本クラブ(→http://www.nipponclub.org/upcomingevents.php#386)迄。