やっぱり起きた「天変地異」。

選挙迄、後1週間。

昨日、民主、自民、維新「以外」の党に既に事前投票を済ませたが、結果は一体どうなるのだろうか…特に筆者は、この3年間何の変化もしない処か極右化して居る自民と、石原・橋下の「烏合連合」維新の会の両党首の改憲・国防政策には到底承服出来ないし、民主も初めての政権担当だったのだから、その辺を差し引いて考えてあげねばならないが、皆さんもその辺を注意深く考えて頂きたい。

云う迄も無いが、今回の選挙は我が国の「未来」を作る選挙に為るので、必ず投票に行きましょう!

さて、筆者が行けなかった余りの悔しさに、行けたクサマヨイに向かって「お前に取っては、『猫に小判ライヴ』じゃ!」と国際電話越しに叫んだ、バークレー・センターで行われたローリング・ストーンズの「結成50周年ライヴ」…そしてクサマヨイに至っては、公演後のダリル・ジョーンズと飯迄食っていたのに引き換え、クリスティーズ・ジャパンに於いて2日間に渡って開催された「杉本博司展」を終えた、生真面目な筆者の先週末は、某美術館の学芸員O氏と三井記念美術館で開催中の展覧会、「茶道具と円山派の絵画」へ(ホントに真面目だ、俺って…:笑)。

そしてこの展覧会の何が凄いって、それは「茶碗」だ!

筆者に取って「茶道具」と云えば、それは茶入でも茶杓でも、水指でも釜でも無く、誰が何と云っても「茶碗」なのだが(拙ダイアリー:「Pooさんを聴きながら、茶碗を想う」参照)、今回の展覧はその「ティー・ボウル・ラヴァー」を狂喜乱舞させるラインナップの展覧会と為って居る。

国宝「卯花墻」や長次郎の重文「俊寛」、光悦の重文「雨雲」も当然素晴らしいが、萩茶碗「トリノコシ」も好みで有る…しかし今回の展示の目玉は、特別展示の「高麗茶碗」の数々。そして「二徳三島」や「三好粉引」等の名品が並ぶ中でも、筆者が最も愛し、「あぁ、これで一服頂きたい…」と思ったのは三碗…即ち「上林」「十文字」の大井戸茶碗二碗と、粉引茶碗「残雪」だ。

特に「十文字」は遠州所持と云われるが、驚くべき事にこの茶碗、元々大きいサイズだった茶碗を4つに割って新たに今のサイズに繋ぎ合わせたのだそうで、銘と為って居る十文字の傷と直しが施されているのだが、「上林」と共に豪快且つ非常に味の有る茶碗で、「これに濃茶が入っていたら…」と思うと、自然に涎が出て来て困った(笑)。

そんな三井記念美術館を堪能した後は、O氏と共に「藪」でせいろうと天たねを食べ、今度は丸ビルへと急ぐ…辻惟雄山下裕二両先生に拠る特別対談「日本美術を体感するー若冲を中心に」を聴く為だ。

この対談は、小学館から順次刊行される(第一回配本の第2巻:飛鳥・奈良時代I「法隆寺と奈良の寺院」は、12月5日に刊行済)「日本美術全集 全20巻」の発刊記念対談で、映し出されるイメージを観ながら、両先生の息の合った楽しくタメに為るトークを聴けると云う企画で有る。

トーク中には、例えばプライス・コレクションの白眉、若冲の「鳥獣花木図屏風」のボーダーが「ペルシャ絨毯」で有る事が証明された話や、「伝源頼朝像」や「豊国祭礼図屏風」に関するアトリビューション、描かれた人物や年代に関する論争、明治の工芸美術の見直し等の興味深い話が満載で、山下先生の仕事量と会話力にも「脱帽」な対談で有った。

また今回発刊されるこの全集では、例えば法隆寺釈迦三尊像百済観音も新たに撮影し直し、背面や側面からの姿も見る事が出来る。そして土偶から会田誠迄、従来の日本美術史を見直して再構築し、論文も両先生や一緒に聞いたO氏を始め、千宗屋、杉本博司森村泰昌各氏の「日本美術史」を今作っているアーティスト達迄が寄稿すると云うのだから、目が離せない…お金を貯めて、買うしか無いだろう(会社で買えれば良いが…)!

さて、話は先週の金曜日に遡る。

やっぱり起こったのだ!…何が起こったのかと云うと、それは、現代美術家杉本博司氏に関わる「天変地異」の事で有る。

どう云う事かと云うと、話は今度は7年前の10月に遡る。その夜、「杉本博司 時間の終わり」展が開催中だった森美術館では、W.B.イエーツ原作、横道萬里雄脚本の能「鷹姫」の特別公演が、展覧会場内の特設ステージにて開催されて居た。

そして、その観世銕之丞師、浅見真州師、野村萬斎師が出演していた「鷹姫」公演の真っ最中に、かなり大きな地震が発生し、ご存知の通り六本木ヒルズ・タワー53階に在る森美術館は、まるで大海に浮かぶ一葉の木の葉の様に揺れ、観客達は能の公演中にも関わらず恐怖の声を上げたのだった!

エレベーターも止まり、ビルがしなる様に揺れる中、しかし大倉源次郎、亀井広忠、三島元太郎各師の囃子方は一糸乱れず、役者達も何事も起きて居ないかの様に演じていた事に、「流石、能役者!」と感心したのを覚えている。

また昨年3月、予定されていた「杉本文楽 曾根崎心中」は東日本大震災に拠って公演は延期され(8月に公演開催:拙ダイアリー:「古典芸能の未来:『曾根崎心中』@神奈川芸術劇場」参照)、9月に公演された「三番叟」の公演は台風横断中の暴風雨の日に開催、氏のニューヨークの茶室「今冥途」の席披きの日は、10月だと云うのに猛吹雪に見舞われた事でお分かりの様に(拙ダイアリー:「『雪の日に、茶事をせぬは…』:茶室披き@『今冥途』 」参照)、杉本氏のイヴェントには「天変地異」が付き纏って居て、一説に因れば、それは氏のコレクション中に在る鎌倉期の木造彫刻、「雷神像」の所為とも尤もらしく囁かれて居る。

そうして先週の金曜日、あの「揺れ」が来た時、明治生命館4階のクリスティーズの会場に展示されていた、白く美しい台の上の白洲正子旧蔵・杉本博司現蔵の「十一面観音立像」も揺れ始めた。

直ぐ収まると思った「揺れ」は次第に激しさを増し、時間も長い…そして、偶々「十一面観音像」の前に居らした日本美術史の大家K先生と京都のH館長、そして筆者は、お像が何時倒れて来ても大丈夫な様に、慌ててお像の周りに6本の手を翳してお守りしたので有った!

てな訳で、我々が「『命を掛けて』観音様をお守りした」事を所有者の方に強調して(笑)、今日はお仕舞いにしたい…しかし杉本さんのイヴェントには、何故必ず「天変地異」が起きるのだろう?やはり「雷神」の所為なのだろうか。

そして今朝、名古屋を過ぎた新幹線の車窓から見えるのは、吹雪…関西へは遅れて到着する。

追伸:そんな不吉な「雷神像」は、手放された方が良いのかも知れません…そして売却の際は、十一面観音をお救いした私めに、是非ご用命下さいませ(笑)。