面倒臭ぇ!

昨日、日本にやって来た。

今回の来日最初の仕事は、愈々明日土曜の午後(午後3時半から5時迄)に迫った、朝日カルチャー・スクール新宿で開催するレクチャー、「渋谷の『白隠』と海を渡った『白隠』」(→講座サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=188251&userflg=0)。

この講座は、現在渋谷のBunkamura「ザ・ミュージアム」で開催中の展覧会、「禅画に込めたメッセージ 白隠展」(→展覧会サイト:http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_hakuin.html)の関連講座で、勿論山下裕二先生や芳澤勝弘先生の様にアカデミックとは行かないが、筆者がこれ迄扱った作品や海外コレクションの中の白隠作品を紹介しながら、海外での白隠人気の理由に迫りたいと思っているので、お時間の有る方は是非!

さて今日のダイアリー・タイトルは、決して明日のレクチャーの事でも、25-26日に予定されている日本美術の東京下見会の事でも無い…念の為(笑)。それは、今回乗って来たANA009便の機内で観た、或るPVの事…シンガー・ソングライター高橋優の「ボウリング」と云う曲で有る。

恥ずかしながら筆者は、高橋優と云うアーティストの事もこの曲の事も、今回このPVを観る迄全く知らなかったのだが、その歌詞とシンプルな映像には一寸した衝撃を受け、妙に「同調」してしまったのだ!

何しろ先ずは、そのPVをご覧あれ(→http://m.youtube.com/#/watch?v=ZN7jmP5-K-s&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3DZN7jmP5-K-s&gl=JP)。

日本海らしき荒波に揉まれながら「面倒臭ぇ!」を連呼する、(敢えて?)イケて無いルックスの高橋…このやさぐれ具合とスエットをずぶ濡れにする荒波、吐き捨てる様な熱唱、そして独特のセルフィッシュな歌詞が妙にマッチしたこのPVは、大学を卒業する頃、或いは苦難の新入社員時代、確かにこの歌詞の様に世を呪い、やさぐれ経験が有った事を筆者に思い出させたからだった。

その頃、仕事も恋も思い通りに行かないそんな時は、朝起きるのも、仕事に行くのも、話を合わせるのも、つまんないのに面白い振りをするのも、心配事や難しい事も、そして生きて行かなきゃ為らない事も…全部面倒臭かった。

「今日だけあの職場が消滅しちまえば良いのに。働かなくても美味しいご飯が食べたい。努力しなくてもプロフェッショナルに為りたい。僕にだけ都合良く世界が回ってくれりゃ良いのに」。

そして、「僕ら(僕と彼女)にだけ都合の良い様に、全宇宙が団結してくれれば良いのに」。

こんな気持ちは、全てが上手く行かない時の絶望的な男の子の本心なのだが、しかし、面倒臭くても結局会社には行くし、努力もする。が、報われない時に憂さを晴らしたく為るのは必然。

今となっては笑っちゃう程古臭いが、筆者世代の若者は、良くこうやって海に向かって叫んだり、波に挑んだりしながら、理不尽な青春の欲求をぶつけた物なのだ…「海に向かってバカヤロー」とは、史実なので有る(笑)。

しかし、この曲のタイトルを「面倒臭ぇ」では無く、「ボウリング」にした高橋優と云うアーティスト、一体何者なのだろう?

自分の力不足=理不尽な世界を糾弾し、それが例え自分の都合だけの物で有っても、若者には自分の夢の世界を叫ぶ権利が有る…実現不可能な「逃避夢」の捌け口として(このPVでも、叫び唄い終わった後の「遣る瀬無さ感」「脱力感」が良く出ている)。

何故なら人間50にも為ると、諦めの方が先立って、「…くれれば良いのに」等中々思わなく為るのだから。