「夢見」との愉快な生活。

気が付けば、もう5月。

今年も既に、1/3が終わってしまった…。年々1年の経つのが早くなり、肉体と頭脳の老化や、頑固さや説教臭さの進み具合も早まっている気がするのだが、これは誰かが意図的に「時の速度」を早めている所為としか思えない…クォラァ、責任者出て来いっ!(怒)

と、手立ての無い事を幾ら怒っても仕方の無い今日この頃だが、先ずは「『彷徨えるパンケーキ人の喩え』・番外編」から。

我々「パンケーキ人民会議(PPO)」の盟友A姫が、自身のブログで最新のニューヨーク・パンケーキ事情をレポートをして居る(→http://originalslope.blogspot.com/2013/04/ny-pancakes-make-people-crazy.html)。我々「PPO」の「たかがパンケーキ、されどパンケーキ」と云う信条が良く出て居て、読んで行く毎にドンドン腹が減って来るが(笑)、是非ご一読頂きたい。

ホテル・ニューオータニの「ホットケーキ・ミックス(バニラ風味)」は、永遠に不滅です!

そして此処からが、本題。今日はアートとは、係わり有る様な無い様な話で有るので、悪しからず…最近クサマヨイの「夢見」がスゴく為って来て、怖いやら笑えるやら、の巻。

我が妻クサマヨイは、そもそも「夢見」が凄くて、時折「ウーム、これぞ『スュール・レアリッスム』!」としか呼べない夢や、まるでSF映画な夢、或いは余りにも現実的な夢等、もう本にして出版したい位の勢いなのだが、問題は、彼女がどんな夢を見たかを知るには「夢現」の時に尋ねねばならず、起きて仕舞ってからでは、彼女は夢の内容をすっかり忘れてしまって居ると云う有様なので、「タイミング」が全てなので有る。

またクサマヨイは、時折「同じ夢」を見るらしい。それは大概が能楽師時代の物で、その内の一例を此処に挙げれば、気が付くと自分が揚幕の前に立っていて、いきなり幕が揚がり橋掛りに一歩踏み出すのだが、その瞬間自分が全く謡を覚えて居ない、或いは知らない曲の舞台に出てしまったと云う事に気付き、「あぁ、どうしよう!」と思うと云う、聞くからに最悪な夢なのだが、此れこそ真の「夢幻能」と呼ぶべきモノで有ろう(笑)。

さて、数日前の朝の事…時差ボケで苦しむ筆者が明け方4時半頃に起きてしまった時、隣から何故か含み笑いが聞こえ、見てみるとクサマヨイが何と寝ながら笑っていたので、「何で笑っているの?」と尋ねてみると、彼女は微睡みながら、

「うーん、美味しかったから…。」

と云う。「ふーん、何が美味しかったの?」と聞いたら、ニヤニヤしながら「丸焼き。」と答えたので、今度は「何の『丸焼き』を食べたの?」と聞くと、その答が驚くべき物で、何と「人間。」で有った!

「に、に、人間の丸焼きを食ったのか?」

「そう、家族で…。」

って、「君ら、『レクター』一族か!?」と早朝から叫ばざるを得なかった筆者の気持ちを、少しでも汲んで頂ければ幸いで有る。

もう1つ、彼女の夢にはその日や数日前に体験した事が、トランスフォームして出て来る事も多い。

例えばゲルギエフ指揮の「マーラー交響曲第5番」を聴いた翌朝、起きたばかりだと云うのにゲンナリした様子の彼女が云うには、夢の中で「『マーラーの5番』を1度に2回も、然もカーネギーで『振った』ので、もう疲れ果てて仕舞った」との事(笑)。

また或る夜の夢等は、一大スペクタクル映画の様相を呈し、筆者の兄弟達「数十人」(実際には、弟が1人居るだけだ)が、彼女の実家を攻めて来て戦闘状態に為るのだが、然し我が兄弟等が余りにも弱く、面白い様に次々と退治して行ったらしい(涙)。

が、その間中、何故か彼女の家の庭に在る物置から美しい音楽が流れて来て居て、少しだけ開いて居るドアから脚だけが見える演奏者は、どうもヨー・ヨー・マだったらしいとの事…ウーム、戦闘中に演奏されるチェロの調べとは、何ともシュールでは無いか!まぁこの場合、夢の原因と為ったで有ろう昼間に、何が有ったかを思い出せないのが、或る意味「救い」かも知れない(笑)。

音楽が絡むと思えば、彼女の夢には美術も絡む…筆者が夕方家で長澤芦雪の事を調べていた時、恐らくは彼女と芦雪の事を話したりしたのだろう、その夜クサマヨイが見た夢は、何と「大学の講義中に、レディ・ガガの曲を歌いながら、芦雪の絵を解説する」と云う、辻(惟雄)先生も真っ青な物だったりもした。

が、今迄彼女が見た夢の中で最も笑ったモノの1つは、新婚旅行でスペインに行って、帰ってきた直後に見た夢だろう。

その晩、夜中にクサマヨイの声が聞こえた気がしたので、ハッとして起きると、それは単に「寝言」だったのだが、しかし筆者がそれ迄の人生で聞いた、如何なる「寝言」の内でも最もハッキリとした「寝言」だったので吃驚仰天したのだが、より驚くべきはその内容で有った。

スペインでの新婚旅行は非常に楽しい旅で、当然思い出深い事柄も多かったのだが、その中でも食いしん坊な我々に取って最も美しい思い出の1つは、マドリッドに在る「世界で一番古いレストラン」の称号を持つ「B」と云う店で食べた、余りにも美味かった「コチニーリョ・アサード」と呼ばれる「豚の丸焼き」の味で有った。

そんな思い出の美味が鮮烈過ぎたのか、クサマヨイは夢の中で誰かに向かって、何とその「コチニーリョ・アサード」のレシピを滔々と、そして嬉々として説明していたのだ!

そして昨日は昨日で、筆者が未だ残る時差ボケを引き摺って起きてしまった明け方、クサマヨイが隣で寝ながら大きな溜息を吐いたので、どんな夢を見て居たかを尋ねた。すると、夢現の彼女が「伸び」をしながら云うには、

「私ね、『AKB』に入って、いきなり知らない振付のダンスを踊らされたんだけど、それがマーシャル・アーツみたいで、あー、疲れた…。」

のだそうだ(笑)。

「流石、元『芸大・少林寺拳法部』は違うなぁ…(笑)」等と思いながらも、持つべきモノは聖徳太子吉備真備か、明恵上人かフロイトか、はたまた「夢見の妻」か。

たった今、出掛ける時間も迫って来たので、栂尾の明恵上人並みに数知れぬ夢の逸話を持つそんな「夢見」のクサマヨイに、今迄見ていた夢を聞いたら、「全員銀髪にして、宇宙船に乗って踊るの…でね、私に『胃下垂の女』って云う、村上春樹の弟が原作を書いた映画の主役になれって云うの…」と、夢現の状態でボソボソと話すので有った。

胃下垂の女」…ニヤリとさせられる朝のひと時は、筆者の多忙で憂鬱な日常を、ほんの少しだけ愉快にしてくれるので有る。