関西出張、キューブリックとホン・サンスの「モノクローム」。

月曜日には500円以上、そして昨日も100円以上…日経平均株価は再び1万3000円を割り込んで、下落が止まらない。

そもそもアベノミクス等と云う、全く実体の無いゴーストに惑わされ、外国の金の満ち引きだけで蹂躙される日本の株式市場。数週間前迄、急激な円安と株価上昇で「ドヤ顔」だった、安部総理のご説明を拝聴したい物だ。

こう云う形の「リバウンド」のダメージの方が大きいと云う事さえも分からない程だから、「福島」と「もんじゅ」の例が有っても平気で原発を稼働し続け、自国の故障原発を丸2年以上掛けてもフィックス出来ない癖に、平気で外国に売ったりするのだ…安部晋三は、今や世界の笑い者である。

愚痴は此れ位にしよう…さて筆者は、昨日迄関西出張中の身で有った。

大阪→京都と旅をして来たが、大阪ではかいちゃうのお陰で「人、モノ、食」と云う筆者の「三大悦楽」を完璧に満足させて頂き、もう至福の一言。その晩は、食後かいちゃうと共に京都に入り別れたが、数時間後の翌朝に某商店街に在る未だ昭和な喫茶店で再会し、名物のホットケーキ(「パンケーキ」では無い)を頂く。

前夜あれだけ鰹や鮎、烏賊や穴子(大きな穴子、その店では略して「ダイアナ」と云ふ:笑)迄頂き腹一杯だったにも関わらず、意外に軽いホットケーキに舌鼓を打ちながら、昨日観た幾つもの名品に就いて語る。あぁ…然し良い茶碗だった(溜息)。

そうして京都で始まった、9月の日本美術オークションの為の出品作「ハンティング」は、円安も手伝って、絵画・彫刻・明治美術等の分野で名品をゲット!特に今回出品の決まった鎌倉期の某彫刻作品は、本当〜に素晴らしく、重要な作品だ…何だか知りたいでしょ?未だ教えて上〜げない(笑)。

京都の夜は夜で、某社長とスティーブ・ジョブスも来たと言う寿司屋で食事後、繰り出したのは花見小路から一寸入った所に在る、芸妓バーの「T」(それにしても、T姐さんの「B」が閉店したのは残念。しかし、T姐さんの花嫁姿は綺麗だった!)…其処で合流した「画商」達とカラオケに興じた訳だが、何で画商と古美術商はあんなに雰囲気が違うのだろう?

何時も感じるその違和感は、其の晩も上手く埋まらず、我々の席に付いた、京大の院で脳神経を勉強していると云う女の子と、ニューロンアルツハイマー、キラーT細胞と専守防衛論の事等を話す…全く以て「色気」の無い祇園の夜では無いか!(笑)

さて、此処からが今日の本題。今回来日してから、2本の興味深い「モノクロ映画」を観た…則ちスタンリー・キューブリック監督の処女作「恐怖と欲望」と、ホン・サンス監督の「次の朝は他人」で有る。

先ずは「恐怖と欲望」。1953年、キューブリック25歳、実の叔父に資金を出して貰ったこのキューブリックの処女作は、後に「結婚しない女」等の名監督と為るポール・マザースキーも役者として出演している、所謂「反戦映画」だ。

本作は公開当時、ニューヨークの批評家達に概ね好評の内に迎えられた様だが、直ぐに「お蔵入り」に為った最大の理由は、完璧主義者の監督本人がこの作品を「アマチュアの仕事」と忌み嫌い、プリントの殆どを買い占め、封印したかららしい。

然し乍ら、余りにも強くストレートな思想伝達を求めるが故に、却って稚拙に為ってしまったカメラワークや、多用される独白の台詞、そして登場人物が心理的・精神的に徐々に追い込まれる度に見せる極端なクローズアップや脚本は、大監督の将来を垣間見るに余り有る…天才も人の子、な作品で有った。

そして特集「ホン・サンス / 恋愛についての4つの考察」から観た、「次の朝は他人」(因みに他の3本は、「よく知りもしないくせに」「ハハハ」「教授とわたし、そして映画」)…これは大傑作だ!

モノクロームの画面が非常に美しい本作、常にゴダールロメールブニュエルの強い影響を指摘される監督では有るが、それ等の影響は見受けられるにしても、それを十分に消化し、自分の芸術として見事に再構築している事だけは間違いない。

こんな場合、安易な孫引き的引用で無い限り、「影響」だの「オマージュ」だのと云い過ぎると却って全く興醒めで、「評論家」は自分の知識をひけらかすだけの為に、その様な事を余り云わない方が宜しい…何故ならこの「次の朝は他人」は、そんな戯言もブッ飛ばしてしまう程、深く、美しく、新しく、韓国的だからだ!

しかし、この「映画監督」役の主人公と本作のストーリーは、ホン・サンスの当に「自画像」としか思えない…或る意味、羨ましい男だ(笑)。そして、雪のシーンや路上でのキス・シーン、反復されるピアノの短い旋律と、既視感溢れるショットの繰り返し、ズームして行くカメラの全てが、この羨ましい監督の拘りと美学を見せつける。

渋谷ラブホテル街の「聖地」(笑)、「オーディトリアム渋谷」&「ユーロスペース」で観たスタンリー・キューブリックホン・サンス…この2人の監督の稀なる才能を垣間見せた「モノクローム」に乾杯!