「天才ハイスクール」と展覧会諸々。

気が付けば、6月…何て事だ!

そんな中、少しずつ作品をゲットしながら、夜は相変わらず食べ捲り、目黒の「M」や青山の「D」等の行きつけイタリアンや、〆にカレーライスを出す銀座の美味い京料理屋「M」へ、アーティストやギャラリスト、政治関係の同志や骨董屋と繰り出し、漸く時差ボケも解消。

そして週末は、展覧会を観捲る。

即ち、日本橋壺中居での「細川護熙展」や三井記念美術館の「河鍋暁斎の能・狂言画」、サントリー美術館「『もののあはれ』と日本の美」や森美術館の「LOVE展」、ポーラ・ミュージアム・アネックスでのミヤケマイの「白粉花」、TOTO GALLERY・MAの「中村好文展 小屋においでよ!」、そして白金アート・コンプレックスの山本現代「天才ハイスクール」や、アラタニウラノでの横山裕一「ルームと世界地図」等々で有る。

そして、その中で特に筆者のオススメはと云うと「もののあはれ」、「白粉花」と「小屋においでよ!」、そして「天才ハイスクール」だ!

先ず「もののあはれ」。この展覧は、我々日本人の心に在る(と思いたい…特に昨今の若い人にも...)「花鳥風月」を愛で、四季の移ろいを人生の喜怒哀楽に例える「情緒」を日本美術に観る、と云う素晴らしい企画。

出品作も国宝「寝覚物語絵巻」(大和文華館)や岩佐又兵衛の「金谷屏風」のハナレの重文軸「観菊官女図」を始め、重文佐竹本三十六歌仙や鎌倉期の国宝「時雨螺鈿鞍」、乾山、鍋島尺皿や広重迄古美術の大名品揃いだが、個人的には最後の最後に展示されて居た、北野恒富「星」が印象深い。

夏の夜、橋の欄干に背を凭れて星空を見上げる若い女性の全身像を描いた物だが、敢えて画中に「星」は描かず、女性の体の輪郭だけをボワっと光らせて「星」を表すと云う、何とも粋な極めて美しい作品で必見だ。

また、今月17日にペンネーム(内緒)での小説第2弾「色 Colors」を出版するミヤケマイの展覧会は、日本間を模したインスタレーション「必然」や、鑑賞者自らが千手観音に為れる「天は自らを助くるものを助ける」の参加型アートが面白いし、中村好文展では自身が長年手掛けて来た「住宅」の根源とも云える「小屋」の思想を、高村光太郎ル・コルビジェの小屋のストラクチャーを通して学びながら、都会に忽然と現れた「究極の小屋」をも体験出来る。

が、何と云ってもパワー全開、メーター振り切りの「天才ハイスクール」がモノ凄い!

この「天才ハイスクール」とは、現代美術集団「Chim↑Pom」のリーダー卯城竜太が講師を務める「美学校」のクラスの事で、「アートとは、何でも有りの『異種格闘技』で有る」と云う思想の基、20代中心の個人・団体等で構成されて居る、所謂グループ展。

そしてその作家達は、例えば高校中退(所謂中卒)だったりするのだが、それが何だと云うのだ…?ベーコンだって独学だし、美大を出たら素晴らしいアーティストに為れるとでも?( 一緒に居た某アーティスト等は、美大を出て世界で活躍しているのにも関わらず、この展覧会の余りのパワーに押され、「俺だって、大学なんか出て居ないんだぜ!」と「『逆』学歴詐称」をしたがった程だ:笑)。

そんな分かり切った思いを強くさせる、例えば一見「月の満ち欠け」を記録した様に見える映像作品は、近づいて良く観ると、月の表面の「兔の餅付き」が蠢いて居るのに気付かされる…が、その蠢きが、実は顕微鏡で見た作家自身の「精子」をその「死」迄記録撮影した物だと聞けば、自分が観て居たモノにショックを受けたとしても、作品の斬新なアイディアとその美しさは少しも損なわれはしない。

何しろギャラリー内に充満するパワーは当に恐るべき物で、エロ・オタク・アニメ等をクロスオーバーしたインスタレーションやヴィディオ・アート、彫刻、ドローイングや絵画迄、其れこそ何でも有りの「カオス・ラウンジ」化して居るのだが、驚くべきはその展示作品が何と1万5000円から買える事だ!…山本さん、大丈夫か?(笑)

結局「ラファエロ展」をミスしてしまったワタクシ(西洋美術館のKさん、ゴメンナサイ)…芸大の「漱石展」と弥生美術館の「魔性の女 挿絵」展、そして江戸博のファインバーグさんの展覧会に早く行かねば!