Weekend with "1R3P."

シカゴでまた、13人が負傷する銃乱射事件が有った。

アメリカの銃社会の闇の深さは重々承知だが、先日のタイムズ・スクエアでの警官に拠る誤射等を考えると、銃と云う物が余りにも身近過ぎて、日々そこはかとない緊張を強いられる。

それに引き換え、本当〜にどうでも良い話だが、IOC総会での元女子アナの「お・も・て・な・し…合掌」、あれは一体何だったのだ?

つい最近やっと映像を見てゲンナリしたのだが、全く以て子供っぽい、大の大人に拠るあの「似非アジア」(「ナマステ」じゃ無いんだから…)なハンド・アクションは、日本の「ユルさ」を世界に喧伝した様で赤面する。

この今時の日本の大人の「ユルさ」には、我が国で人気と聞く「ゆるキャラ」と呼ばれるキャラクターにも共通する「気持ち悪さ」が有ると思うが、あれを見て、先日のオバマの「シリア攻撃猶予」に関するテレビ演説を思い出した。

オバマ(或いは、合衆国大統領)は、国民に緊張を強いるのが上手い。ああ云った演説や偶に起こす軍事行動は、自国民を平和ボケにさせない為では無いか?と思わせる程で、その遣り方には議論が有るだろうが、時には国民に緊張感を持たせ、大人が大人に為らざるを得ない社会を日本は再構築すべきで有る。

と怒りつつも、昨日は最高気温18度…今のニューヨークの気候は本当に素晴らしい!

セールも終わった週末は、未だ顧客との食事等も続いて居たが、金曜の夜は、今回のオークションでもお世話に為ったアーティスト氏とそのご家族、国際機関のO氏とクサマヨイとの総勢5人で、ソーホーの「O」で食事。

氏とは食事中、相変わらず「憂国」や「遷都」、「福島第一」や「オリンピック」、そして「内向き日本人」等の話題を熱く語ったが、筆者の「『徴兵制』復活:但し1年間の『兵役』か『強制海外生活』の選択が可能」法案が全員の賛成を得、溜飲を下げる…国会通過も間近だろう(笑)。

その翌日土曜日の午後は、久し振りのチェルシーへ。

チェルシーに行ったのは、前の晩ご一緒したアーティスト氏のスタジオで、夕方から某科学者とそのアーティスト氏との或る計画の「作戦会議」に参画する為だったのだが、その前にギャラリーを幾つか巡ろうとウロウロしていたら、背後から「マゴイチさん!」との大きな声が掛かり、吃驚して振り向くと、其処には敬愛する画商Y氏と現在世界最強の画商として名高いL.G.の姿が!聞くと、彼らもそのアーティスト氏の所へこれから向かうと云う…何たる偶然。

世界的大画商2人に「暫しの別れ」を告げたその後は、素晴らしい陽気の下ギャラリー巡りをしたのだが、その中で幾つか気に入った展覧会が有った。

その1つはPACE Galleryでの展覧…「Robert Ryman: Recent Paintings」と「Irving Penn: On Assignment」。

先ずはライマン…今年83歳のライマンだが、今回展示された近作も未だ若々しく、昔からのライマン・ファンで有る筆者にも新鮮な、素晴らしい展覧会で有った。

10枚の異なったサイズで構成される、エナメルとアクリルの作品も良いが、それよりも2010-11年に制作された、キャンバスに張られたコットン地に緑やオレンジ、茶の下色を塗り、その上に「例の」白の厚塗りをした連作は、ミニマルな中にもヴィヴィッドな色彩が映える作品で、本当に美しい…1枚欲しい!と思わせる逸品だ。

そして同時開催のペンの展覧も、これまた素晴らしいの一語。本展は、ペンが雑誌「New Yorker」や「Vogue」からの依頼、或いは「Clinique」のキャンペーンの為に制作した作品が中心だが、中でも最も気に入った作品は、実は「非売品」とのカードの付いた「Miles」と題された連作。

良く「手は人を語る」と云うが、この5枚の「掌」だけを写した作品から、マイルス・デイヴィスその人を想像するのは決して難しく無い。以前某オークションハウスに出品された時、マジに買おうかと思った程今でも死ぬ程欲しいが、マイルス好きの友人に「『Tutu』のアルバム・ジャケットを見て我慢しましょう!」と云われたので、来月3日に開催されるクリスティーズの「写真セール」に出品予定のコレで我慢して置こうと思う(http://www.christies.com/lotfinder/photographs/irving-penn-the-hand-of-miles-davis-5717273-details.aspx?from=salesummary&intObjectID=5717273&sid=c59e4acd-9a06-4fcf-8d21-9d85eaabc5fd)。今の所は…(笑)。

そしてもう1つは、Mary Booneで開催中の「Robert Polidori: Versailles」。ポリドーリは筆者行き付けのチェルシーの「B」の常連客の1人で、普段は大概若くて綺麗な女性を連れてパスタを楽しんで居る気さくな男だが、今回の展覧を観ると、そんな時にも垣間見える一寸した神経質さこそが、彼が良く作品に取り上げる廃墟ですら美しく見せる、秘訣なのでは無いかと感じる。

ヴェルサイユ宮殿の「装飾の極致」的内装、掛けられた絵画、鏡に映るシャンデリア、薄汚れた壁や雑然とした侭の部屋迄、彼の研ぎ済まされた眼に拠って切り取られた「ヴェルサイユ」は、頽廃的で美しい…一見の価値有りのショウだ。

また日曜日に訪れたMETでは、日本ギャラリーの「Brush Writing in the Arts of Japan」も然る事ながら、最終日に漸く駆け込んだKen Priceの回顧展、「Ken Price Sculpture: A Retrospective」を堪能。

昨年2月に77歳で亡くなったプライスに取って、既に巡回したLACMAと共にメジャー美術館初の個展と為った本展には、1959年から昨年迄の作品が並ぶ。そして、それ等はアブストラクトな中に有機的なフォルムを持ち、時にはデザイン性豊かな色彩やパターンを兼ね備える、当然「用途」等はとうの昔に捨て去った「彫刻」なので有る。

西欧に於ける「陶芸」の歴史は浅く、今でも「芸術」として、例えばチェルシーで「現代美術」として展示される作家は少ないが、プライスはMatthew Marksに拠ってここ10年以上に渡って紹介されて来た、現代美術フィールドで認められたセラミック・アーティストの1人で、その「現代美術性」は日本の陶芸のこれからをも指針する物だと思う。

因みにプライスの作品は、クリスティーズの「Fist Open」セールにも2点出品されているので(→http://www.christies.com/lotfinder/sculptures-statues-figures/ken-price-untitled-5718292-details.aspx?from=salesummary&intObjectID=5718292&sid=6cdf7df3-8167-4b2f-a2e8-a735ae9ca6ed)、METを見逃した方はお早めにロックフェラー・センターへ!

Ryman、Penn、Polidori、そしてPrice…「1R3P」の4人のアートと過ごした、良い週末でした!


◎筆者に拠るレクチャーのお知らせ
●「特別展 京都洛中洛外図と障壁画の美ー里帰りした龍安寺襖絵をめぐって」
日時:2013年11月16日(土)、15:30-17:00
場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
サイト:http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=220110&userflg=0
問い合わせ:朝日カルチャーセンター新宿教室(03-3344-1941)迄。


奮ってご参加下さい!